日本共産党

2003年2月3日(月)「しんぶん赤旗」

米シャトル爆発事故

110回の打ち上げ、2回の重大事故

問われる有人宇宙開発

世界の知恵集め安全に推進を


 スペースシャトル「コロンビア」の事故は、十七年前の「チャレンジャー」事故につづき、有人宇宙飛行にともなう危険を示しました。有人宇宙開発の進め方が改めて問われています。(前田利夫記者)

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 有人宇宙飛行を実施する以上、安全性の確保は最優先の課題です。

 チャレンジャーが打ち上げ直後に爆発して乗員七人が死亡したのが一九八六年一月。それまで米航空宇宙局(NASA)は、スペースシャトルの重大事故確率は百万分の一と「安全性」を強調していました。しかし、チャレンジャーの事故は、最初のスペースシャトル打ち上げから二十五回目でした。

 今回のコロンビア打ち上げは、チャレンジャーの事故から八十五回目の打ち上げに当たります。スペースシャトルは、これまで百十回の打ち上げで二回の重大事故を起こしたことになります。仮に、この確率を航空機にあてはめれば、日本の国内便だけで、毎日何件か重大事故が発生する割合になります。

 チャレンジャーの事故の背景として、予算削減と打ち上げ計画の過密スケジュールが指摘されていました。今回も、ブッシュ政権のもとでNASAの予算削減の方向が強められていました。

 今回、コロンビア打ち上げ時のトラブルが事故につながった可能性が浮かび上がっています。「ちょっとのことは目をつぶって」、計画通り進めたいということが優先されなかったのか、気になります。直接の事故原因とともに、究明が求められます。

 これまでの有人宇宙飛行は、人類が宇宙空間に行って帰ってこられるということだけでも、夢と希望をもたらしてきました。ある程度、冒険的な要素もありました。しかし、そういう段階は、そろそろ卒業する時期にきているのではないでしょうか。

 これからの宇宙開発は全人類的課題として、平和利用を大前提に、安全技術を確立しながら、着実に進めることが求められます。世界の智恵を結集して宇宙開発の展望と目標を明確にすることも必要です。

 何よりもまず、宇宙空間の軍事利用を禁止する必要があります。

危険高い大気圏再突入

機体温度1650度にも

 スペースシャトルは打ち上げ時とともに、周回軌道から大気圏に再突入する時に危険性が増します。

 機体は着陸の約一時間前に、軌道制御用エンジンを噴射させて地球周回軌道から離脱。機首を進行方向に向け直しながら、着陸二十分前には高度七十キロ、時速約二万四千二百キロになりますが、この際に大気と機体との摩擦熱は最高一六五〇度にも達します。

 着陸十二分前は高度五十五キロ、時速一万三千三百キロになりますが、この間の約十数分間、摩擦による高温で機体周辺の大気が電離し、形成されたプラズマで電波が遮られ、通信が途絶える「ブラックアウト」が起きます。現在は人工衛星を介した通信によって影響を受けないように改善されています。

 摩擦熱による機体への影響を少なくするため、シャトル腹部にはブロック状の耐熱タイルを張りめぐらせています。一回の飛行ごとに傷んだ耐熱タイルは修理、交換されることになっています。

スペースシャトルの主なできごと


1981年 4月12日 1号機コロンビア打ち上げ

  83年 4月 4日 2号機チャレンジャー打ち上げ

      6月18日 初の女性飛行士搭乗

  84年 8月30日 3号機ディスカバリー打ち上げ

  85年10月 3日 4号機アトランティス打ち上げ

  86年 1月28日 チャレンジャー爆発、乗員7人死亡

  88年 9月29日 スペースシャトル再開

  90年 4月24日 ディスカバリー、ハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ

  92年 5月 7日 チャレンジャー代替機の5号機エンデバー初打ち上げ

      9月12日 エンデバーに毛利衛さん搭乗

  94年 7月 8日 コロンビアに向井千秋さん搭乗

  95年 6月27日 アトランティスが米国100回目の有人宇宙飛行

        29日 アトランティスとロシア宇宙ステーション「ミール」がドッキング

  98年12月 4日 エンデバー搭乗員、初めて国際宇宙ステーションへ

2003年 2月 1日 コロンビアが空中分解

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