日本共産党

2003年1月23日(木)「しんぶん赤旗」

タイヤ脱落 死亡事故から1年

神奈川県警 原因特定まだ


 大型車のタイヤが凶器になった――横浜市瀬谷区で三菱自工製大型トラクタ(トレーラーけん引車)のタイヤが脱落し幼い子どもと歩道を歩いていた主婦を直撃、一瞬のうちに尊い母親の命を奪いました。痛ましい事故が起きたのは昨年一月十日。それから一年たちましたが、原因は依然、神奈川県警の調査中で特定されておらず遺族への補償もされていません。


遺族に、保険金も下りない

国もメーカーも「調査待ち」

 一月十日、中原街道沿いの事故現場には、遺族が手向けたと思われる花束と線香、缶ビールが供えられていました。

 事故は、走行中の大型トラクタ(九トン)の左前のタイヤ(直径一メートル、重さ百四十キロ)が外れ歩道を歩いていた岡本紫穂さん(当時二十九歳)を直撃。一緒にいた長男(当時四歳)とベビーカーに乗っていた二男(当時一歳)も軽傷を負いました。

言葉少なに

 紫穂さんの夫、岡本明雄さんは「子どもたちを姉に預けて、働いています。県警が調査中なのでお話しすることはありません。いろんな条件が重なって起きた事故でしょう」と言葉少なです。

 一方、事故車の運転手の妻は、「主人は日雇いのアルバイトに出ています。本人も車に乗る気になれないらしく、運転は控えています。私も食べつなぐために仕事に出るようになりました。事故原因が分からないのが不安です。警察の調査を待つ以外、動きがとれません」といいます。

 事故当時、岡本さんたちと同じ神奈川県大和市上和田に住んでいた吉谷照子さんは、事故当日の様子を語ってくれました。

 「『お買い物ですか』と声をかけたのが午後三時三十分ごろ。玄関先で岡本さん親子とばったり会いました。親子で子ども用のレンタルビデオを返しに行くところでした。(長男が)『おばちゃんこれ』って、怪獣のおもちゃを見せてくれました。事故は、その二十分後でした…」

 事故の目撃者の自動車販売店店員は「事故原因が分からないので保険が支払われないと聞きました。こんな悲惨な痛ましい事故に遭う人はまれでしょうが、遺族に対する補償はどうなっているのでしょう」と疑問を投げかけていました。

 三菱自動車工業(東京・港区)は、「県警の調査にメーカーとして協力してきました。調査結果を待っている段階です」といいます。

真剣な対応を

 事故車以外にも、同型の三菱製大型トラクタ、トラック、ダンプ、バスでタイヤの脱落が次々と起きていることが本紙指摘で発覚しました。車輪と車軸を固定する部品「ハブ」の破損は五十件、うちタイヤの脱落に至ったものは四十四件(二〇〇二年十一月十五日現在)にのぼりました。

 同社は、「ハブ」破損の原因は、ユーザー側の整備不良にあると主張。メーカー側の設計・製造に起因する欠陥とは認めず、リコール(無償回収・修理)には至っていません。

 しかし、十二万台を対象にした「ハブ」の自主点検を実施している最中にも、昨年十月以降、四件のタイヤ脱落が発生。すべての「ハブ」を無償交換する、実質的にリコールと同じ追加措置を講ぜざるを得なくなっています。

 これに対して国土交通省は、三菱自工の主張を追認するだけで、独自調査に乗り出す構えも見せていません。横浜市の事故についても「神奈川県警の調査待ち」としています。

 「調査待ち」の間にも次の痛ましい事故が起きはしないか。メーカーも行政も真剣な対応が求められています。(遠藤寿人記者)


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