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2019年11月28日(木)

きょうの潮流

 〈沈黙が卑屈の一種だといふことを/私は、よつく知つてゐるし、/沈黙が、何の意見を/表明したことにも/ならない事も知つてゐるから――。/私はしやべる、/若い詩人よ、君もしやべり捲(ま)くれ〉▼「しやべり捲くれ」という詩の一節です。作者は小熊(おぐま)秀雄(1901~40年)。1930年代、軍国主義日本の苛烈な言論弾圧下で多くの文学者が沈黙する中、「働く詩人」を自称し民衆と共にあって、自由と平等、平和への熱望を歌い続けました▼北海道小樽市生まれ。高等小学校を出てニシンやイカ漁、養鶏場、パルプ工場など職を転々とした後、旭川新聞の記者に。27歳で上京しプロレタリア詩人会に参加。風刺とユーモアに満ちた作品を数多く残し、貧窮のうちに肺結核で死去しました▼その詩業をしのぶ第38回長長忌(ぢゃんぢゃんき)が16日、東京都内で開かれました(小熊秀雄協会主催)。長長忌は小熊の長編詩「長長秋夜(ぢゃんぢゃんちゅうや)」から。日本の植民地支配下の朝鮮を舞台に、女たちが川辺で洗濯をし、秋の夜長に砧(きぬた)を打った白い民族服が、墨をかけられ汚される情景を描出しています▼〈朝鮮よ、泣くな、/老婆(ロッパ)よ泣くな、/処女(チョニョ)よ泣くな、/洗濯台(パンチヂリ)に笑はれるぞ、/トクタラ、トクタラ、トクタラ〉と始まる詩は、朝鮮への理解と愛情なしには書かれ得なかったとして、韓国でも敬意と連帯をもって紹介されているといいます▼日韓関係が悪化する中で民衆同士こそ交流を深めたい。国家を超えて人間の普遍性を追究する文学は確かな力になります。


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