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2019年6月9日(日)

きょうの潮流

 かつて、それを突破することは世界の夢であり、未来の目標でした。陸上の男子100メートルで長く立ちはだかってきた10秒の壁です▼挑戦の出発点は1912年のストックホルム五輪までさかのぼります。短距離走の中心が100ヤードから100メートルに変わっていった時期。そこで米国選手が出した10秒6が国際陸連から初めて世界記録として公認されます(小川勝著『10秒の壁』)▼それから半世紀余の68年、ついに人類は9秒台に突入。いまや壁を破った選手は120人をこえるといいます。日本でも桐生祥秀(よしひで)選手に続いて先月、サニブラウン選手が9秒99をマーク。20歳の伸び盛りはさらに9秒97の日本新記録までタイムを縮めました▼もっとも、10秒の壁も日本記録も本人はあまり気にしてない様子。早くからボルトのもつ世界記録9秒58の更新を目標にしてきただけに、単なる通過点なのでしょう。有望な選手が集まる米フロリダ大に進学し、世界トップの環境下でもまれる道を選んだのも高みをめざすためです▼ガーナ人の父と、日本人の母をもつサニブラウン選手。国籍や人種の狭い枠にとどまらず、世界を舞台にアスリートとしての“個”を輝かせる。そんなことを感じさせる選手がスポーツ界でも増えてきました▼「まだ速く走れる」。人類最速への飽くなき意欲をみなぎらせる若きスプリンター。歴史を重ね、社会や科学の進歩とともに人間の限界に挑み、可能性をひろげる選手たち。そこに肌の色や国境の壁はありません。


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