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2019年2月23日(土)

きょうの潮流

 いつの間にか、ほぼ外観はでき上がっていました。新宿、渋谷の両区にまたがる新国立競技場。周りと結ぶ歩行者用デッキの工事も進み、街の景色は移り変わっています▼かつて1964年の五輪のときにも東京は大きく変ぼうしました。都市開発や高速道路が整備される一方で古くからの風景は激変。人びとの暮らしも急速な変化を余儀なくされました▼いま「東京わが残像」と題した田沼武能さんの写真展が世田谷美術館で開かれています。終戦直後から最初の五輪に至るまで、切り取られた情景や庶民の日常が郷愁を誘います▼下町で生まれ育ち、東京大空襲も体験した田沼さん。そのときの鮮烈な記憶が原点になっているという写真家は、戦争や急激な開発がもたらしたひずみを冷徹に写しながらも、そこに生きる人に温かな視点を注いでいます▼2度目の五輪を前に各地で再開発が進む現在の東京。そのなかで「築地を守る」と再三公約しながら、それを裏切ってきた小池都知事の態度が都議会で問題になっています。跡地を「食のテーマパークに」という方針も投げ捨て、国際会議場などの集客拠点にする計画を示しました▼何のため、誰のための開発なのか。つねに問われてきた課題です。田沼さんは本紙日曜版に「東京を歩いて撮ってきたのは、人びとの夢、いきざまだった」と。街の顔が変わっても、そこに暮らし働く人間がいることを忘れてはならない―。写真に込めた思いを、都民との約束を平気で破る都知事に知らしめたい。


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