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2019年1月23日(水)

きょうの潮流

 まだ5歳の幼稚園児が縁側でお絵かきに夢中になっているときでした。傍らにいた母親が紙に三角形を描きます。「三角形の内角の和は二直角」と、歌うように口ずさみながら▼それが数学の楽しさを知った最初の瞬間だったと、米沢富美子さんは自伝で振り返っています。幼くして幾何の世界にのめり込む娘の姿に、数学の天才といわれながら「女に学問は不要」と進学できなかった母もまた衝撃を受けたといいます▼日本を代表する物理学者の歩みには女性であることがつきまといました。男性教師から「女はいまは成績が良くても、いずれは伸び悩む」といわれた中学のとき。張り出された求人票がすべて「男子のみ」だった京大4年のとき…▼しかしひるむことなく、学問への情熱と持ち前のバイタリティーで道を切り開いてきました。米ハーバード大の学長が「女性は科学に向かない」と発言したときにも「直感と忍耐が必要な科学には、女性のほうが生物学的に適している」と世界に発信しました▼「社会のあらゆる場所で、『女だから』『男だから』という理由で差別を受けることなく、一人ひとりの人間が誇り高く生きられること、それが最も重要」。そう話し、平和や社会の問題にも積極的に声をあげてきました▼真理の探究に尽くした80年の人生でした。モットーは、自分の可能性に限界を引かない、行動に移す、めげない―。与えられるのを待つのではなく、欲しいものは自分の手で獲得する。その生き方から学ぶことは多い。


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