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2019年1月3日(木)

きょうの潮流

 世界の子どもたちに愛された小説の作者、ドイツのエーリヒ・ケストナーが生まれてから2月で120年になります▼忘れてならないのは彼を含めて世界の人々を塗炭の苦しみに陥れた第2次世界大戦開戦から今年は80年ということです。1939年9月1日、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻し世界は大戦に突入しました▼代表作『飛ぶ教室』が書かれたのはナチスが政権をとった1933年。舞台はドイツの9年制学校であるギムナジウムと寄宿舎。生徒たちのクリスマス物語です。政治の話など出てきません。しかし、作品には、迫りくる戦争の危機にどう立ち向かうべきか、意味深い言葉がちりばめられています▼登場人物のクロイツカム先生は生徒たちの乱暴をこうたしなめます。「平和を乱すことがなされたら、それをした者だけでなく、止めなかった者にも責任はある」(池田香代子訳)。ケストナーは前書きで「かしこさをともなわない勇気は乱暴でしかないし、勇気をともなわないかしこさは屁(へ)のようなものなんだよ!」と呼びかけました▼ケストナーの作品はナチスの手で焚書(ふんしょ)にされました。「へこたれるな!くじけない心をもて!」。『飛ぶ教室』の一節は自分を含めてへこたれそうな人々を奮い立たせる言葉だったでしょう▼自分が利益と考えることのために、他者を犠牲にしてかえりみない人物が指導者に就く国が今もあります。くじけず、へこたれず、勇気と賢さを。ケストナーの呼びかけを年の初めにかみしめたい。


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