2018年10月22日(月)
きょうの潮流
焼け野原の青空教室から原型は生まれました。終戦の直前に空襲にあい、焦土と化した水戸の街。土手の下で授業をうけていた旧制中学の少年たちがあるゲームを思いつきました▼碁石で遊ぶうちに相手の石を挟んだら取るというルールを発案。その後、表裏を白と黒にしたボール紙を使うようになりました。それが、いまや誰もが知っている「オセロ」の始まりだったと発案者の長谷川五郎さんが著書に記しています▼名付け親は英文学者だった五郎さんの父。なんでも、白人の妻をもつ黒人将軍オセロを主人公とするシェークスピアの悲劇からとったとか。1973年にアイデアを持ち込んだ玩具メーカーが商品化すると爆発的に普及しました▼世界にもひろがり、77年に初めて開かれた世界選手権も今年で42回を数えます。そこで36年ぶりに最年少の優勝記録を大幅にぬりかえたのが、11歳の福地啓介くんでした。幼少の頃に何か頭を使う遊びをと母からすすめられ、めきめきと頭角を現しました▼“オセロ界の藤井聡太”と呼ばれ、小1のときに早くも小学生の全国大会で優勝。コンピューターを相手に独学で培った先を読む力に秀で、前例にとらわれないたたかい方が特徴だといわれます▼覚えるのは簡単でも極めるには一生かかるという白と黒の深遠な世界。人工知能ばかりが注目されるなか、分野を問わず若い頭脳の知性のきらめきは内に秘めている人間の可能性と人類の明るい未来を感じさせます。それも平和であってこそでしょう。