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2018年7月20日(金)

きょうの潮流

 食通で知られた池波正太郎の小説「剣客商売」にこんな一節があります。「背びらきにしたのを蒸しあげて強い脂をぬき、やわらかく焼きあげ、たれにも工夫が凝らされるようになり…」▼江戸期にはやったウナギ料理の様子を描いたものです。古くは万葉集にも歌われ、すでに縄文時代から食べられていたというウナギ。地域によって伝わる調理法があり、日本人のソウルフードともいえるでしょう▼きょうは土用の丑(うし)の日。ウナギを食べようという気もうせるほどの暑さですが、せめてその生命力にあやかりたい。夏の風物詩ですが、現状は深刻です。稚魚シラスウナギの不漁がつづき、近年は最盛期の1割程度に落ち込み、いまでは絶滅危惧種にも指定されています▼乱獲や河川・沿岸環境の悪化、海洋環境の変化を減少した原因にあげる専門家は多い。世界でとれるウナギのおよそ7割が日本人の胃袋におさまるといわれるだけに、保護や生育のために力を注ぐのは日本の責務です▼ウナギだけではないでしょう。本紙で連載したクロマグロの資源回復も急がれます。資源管理を怠ってきた日本政府の対応や規制の甘い大規模漁業による産卵期の根こそぎ操業。漁業枠を減らされた漁師たちは怒りの声をあげています▼大海原を回遊するウナギやマグロ。地球の大自然のなかで育まれ、私たちと長く親しみ、日本の食文化を支えてきました。風土に根ざし、食してきた命を大切にする。それは人間自身の営みを守っていくことにつながります。


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