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2009年11月27日(金)「しんぶん赤旗」

お金の心配なく受診

増える無料低額診療

扉開いた小池質問主意書


 お金に困っている人たちが不安なく病院にいけるようにと、国で定めている無料低額診療を実施する医療機関(病院・診療所)が増えています。全日本民医連の医療機関では、ことし1月以降、41事業所が実施(11月現在)し、24事業所が実施を予定していることがわかりました。前年2008年の実施は1カ所のみ。扉を開いたのは日本共産党の小池晃参院議員が政府に出した質問主意書でした。


 無料低額診療を実施している医療機関では、経済的困難で収入が低い場合、通常の3割負担が、無料ないし低額で診療を受けることができます。社会福祉法に基づく制度で、都道府県に届け出た病院・診療所が実施します。

受診者次々

 岐阜市では民医連傘下の4病院・診療所が6月からスタートさせました。岐阜県は08年度まで無料低額診療の実施はゼロでした。4病院にはこの間、約30件の受診がありました。このうち、みどり病院の受診者にはトヨタの「非正規切り」による失業者が2人もいました。一人は糖尿病の治療に困っていた40代男性。もう一人は20代男性で、ぜんそくと精神疾患の治療を求めていました。

 みどり病院の医療ソーシャルワーカー、林信悟さんは「解雇され無収入になった人とか、収入があっても借金で苦しく病院にまでお金が回らないとか、治療をがまんしている人が多いことを実感します」と語ります。

 兵庫県では尼崎医療生協の11事業所が3月から無料低額診療を実施。9月末まで54世帯90人が利用しました。建設労働者の夫がケガで長時間の仕事ができなくなり、パートの妻もぎっくり腰で収入減となり、医療費負担を工面できなくなったなど、利用者の実態は、深刻です。利用世帯の78%が生活保護基準以下の所得で、貧困で受診をがまんしている実態が浮かび上がっています。

流れ変えた

 「もっと早くやっていればよかった」と話す粕川實則・尼崎医療生協理事会事務局長。無料低額診療の届け出を兵庫県が半年間も受理しなかったからです。県は「国が抑制している」の一点張りでした。その流れを変えたのが小池参院議員の質問主意書でした。

 政府に文書回答を求める質問主意書を小池議員が参院議長に提出したのは08年9月29日。「必要性が薄らいだ」との理由で国は無料低額診療の新規事業を抑制する通知をだしているが、ホームレスの自立を支援する政府の「基本方針」(08年改定)では無料低額診療の積極的活用をうたい、厚労省でまとめた「医療機関の未収金問題に関する検討会報告書」(08年7月)では未収金防止策として生活困窮者に対する「無料低額診療事業の紹介」が盛り込まれている――小池議員はこうした事実を示し、不況の長期化、格差拡大のなか同診療の意義は「いっそう大きくなっている」と抑制方針の転換を求めました。

 同年10月7日の政府回答(答弁書)は「低所得者に対する必要な医療を確保する上で重要である」と評価し、医療機関から届け出があったら地域の状況を考慮し「受理されるべきもの」としました。

 尼崎医療生協の粕川さんは「小池議員の力添えがなければ、無料低額診療の実施がまだできなかったかもしれません。無料低額診療の利用は期限付きなので、(解雇された人など)国保の加入者の医療費負担を減らすことができる減免規定(国保法44条)が積極的に活用できるよう政府や自治体に求めていく重要性も見えてきました」と話します。


写真

(写真)小池晃参院議員

 小池議員の話 医療機関が無料低額診療を始めることで、生活に苦しむ方が安心して受診できます。そして受診をきっかけに生活保護受給につながるようなケースも増えています。民医連では、医療機関が費用を持ち出しでやっていますが、行政が財政的な支援を拡充すべきです。


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