2009年11月24日(火)「しんぶん赤旗」
アフガン世論調査
紛争要因「貧困と失業」70%
「雇用あれば殺人行為起こらぬ」
アフガニスタン戦争は9年目に入り、さらに激しさを増しています。オバマ米政権は部隊の増派をめぐる検討を近く終え、方針を明らかにするとみられます。アフガンの人々は現状をどう考えているのでしょうか。人権団体や報道機関が現地で実施した世論調査からみてみます。
直面する課題 「治安」が最多
アフガンが直面する最大の問題は―。この問いに対し、最も多かった回答は「治安」(武装勢力などの暴力を含む)で36%。次いで、ほぼ同率の35%が「失業」を挙げました。
米国の非政府組織「アジア財団」がアフガン全州で実施し、10月に発表した調査の結果です(回答者6406人)。
身近な経済問題を、戦闘や爆弾攻撃などと並んで深刻な問題ととらえているとみられます。
アフガンが「いい方向に向かっている」とみる回答は42%で、「悪い方向に」が29%でした。2006年の調査結果(「いい」44%、「悪い」21%)と比べ、両者の差は縮まっています。
貧困克服に取り組む国際団体「オックスファム・インターナショナル」が今月発表した調査(対象704人)は、1979年の旧ソ連侵攻以来30年にわたる紛争の影響について、幅広く聞き取りをしています。
「現在の紛争を激化させている要因は何か」との問いには、70%が「貧困と失業」と答えました。「アフガン政府の汚職と無能力」が48%、「(反政府武装勢力)タリバン」が36%と続きます(複数回答)。
報告書は、回答者の「雇用の機会があれば、殺人行為は起こらない」などの声を複数紹介。「貧困という構造的暴力と、紛争という物理的な暴力の因果関係を示している」と指摘します。
タリバンには大多数が反感
英BBC、米ABC、独ARDの3放送局が今年、全土の1534人を対象に行った調査によると、タリバンを好意的にみている人は7%。好意的でない人は91%で、初回調査の05年から高水準を保っています。
米国については「好意的」が47%で、05年の83%から連続して減少。「好意的でない」は52%で、05年の14%から増え続けています。
タリバンへの強い反感がある一方、米国への期待感は急速に薄れていることが読みとれます。(安川崇)
タリバン イスラム神学校の学生や出身者が参加し、アフガン内戦中の1994年に台頭。98年にほぼ全土を掌握しますが、2001年12月、米軍の攻撃で打倒されました。その後、アフガン南部やパキスタンのアフガン国境地域で勢力を回復。アフガン駐留外国軍追放を掲げ、06年からゲリラ戦を強化してきました。

