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2009年7月20日(月)「しんぶん赤旗」

総選挙 日本共産党は何を訴えるか

テレビ討論 市田書記局長が発言


 日本共産党の市田忠義書記局長は19日放映のNHK「日曜討論」、フジテレビ系「新報道2001」、テレビ朝日系「サンデープロジェクト」の各党討論に連続して出席し、自民党の党内騒動と衆院解散をどうとらえるのか、総選挙で何を訴えるかなどについて、各党幹事長と討論しました。討論から浮かび上がったものは――。


“自公政治終わらせたい”国民は強く求めている

 麻生太郎首相が21日の衆院解散を決断したにもかかわらず、“麻生総裁の下では選挙はたたかえない”という声がくすぶっている自民党。「日曜討論」で、同党の細田博之幹事長が「(分裂選挙には)ならない」と断言するものの、同じ与党の公明党からも「自民党がどう変わっていくのか示していただきたい」と注文を付けられました。

 そこで発言した市田氏は――。

 市田 いま、暮らしも大変、雇用も医療も福祉も大変だというときに、“表紙”(総裁)をだれにすれば選挙に有利かという、国民不在の醜い党内抗争に明け暮れているというのに対し、国民はうんざりしているのではないでしょうか。

 麻生内閣の支持率があれほど下がった原因は、首相の個人的な資質や政権運営だけではなく、自民党政治がこれまで続けてきた路線の行き詰まりが根底にあると思います。たとえば、「使い捨て自由」の不安定雇用の拡大、社会保障費を毎年2200億円カットして医療、介護、福祉がズタズタにされる一方で、庶民には負担増、大資産家、大企業には税金を負けてやる。また、(自衛隊の)海外派兵と海外での武力行使を可能にするという動きなどに対する不満の表れがあります。その行き詰まりへの反省や打開の方策も示せないというのが、いまの自民党内で起こっている現象ではないでしょうか。

 しかし、細田氏は「解散・総選挙にあたっていろんな意見が出ることは常にある」と無反省でした。

前向きの審判

 自民党が大敗北を喫した都議選結果について細田氏は、「自民党内のいろんな意見対立が都議選にも大きな影響を与えた」と表明するとともに、「共産党がキャスチングボートを握る」と警戒感を示しました。公明党の北側一雄幹事長も“自民党のゴタゴタだけでなく、与党のあり方が厳しく問われたのではないか”との問いに、「両方の批判があると受け止めないといけない」などと述べました。

 市田氏は、次のように述べました。

 市田 都議選でわが党は8議席に後退したという点では、大変残念な結果でしたが、得票は伸ばしましたし、都民がどういう思いで投票したのかをみると、“自公政権をもう終わらせたい”“政治を変えたい”という思いの強烈な表れでした。それが、ほとんど民主に集中したわけですけれども、全体としては自公政権を終わらせたいという点で、都民は前向きの審判をくだしたと思うんです。

 都政をめぐっては、(この4年間の)石原慎太郎都知事の提案に民主党も99・3%賛成していましたが、今度の選挙では新銀行東京への税金投入に反対、病院つぶしにも反対などといっているわけで、その公約には縛られるわけです。

 さきほど(細田氏が)キャスチングボートといわれましたけども、そういう点で一致するならば、大いにいまの石原都政を変えていくうえで力を合わせていきたいし、やはり自民党政治を変えたいという審判は前向きにとらえたいと思います。

 (総選挙では)自公政治に変わる新しい政治をどうするか、どういう日本の進路を選択するのかという点では、やはり自公政治に真っ正面から立ち向かってきた共産党の躍進で、文字通り自公政治の終えんを迎えようという立場でがんばりたい。

 細田氏は、「日教組の代表議員が8人いる民主党が、教育基本法や日の丸・君が代をどうするのか」などと右寄りの立場から民主党を攻撃。民主党の岡田克也幹事長は、「(細田氏が)野党の幹事長をやるのはまだ早い。4年前の公約が正しかったのか総括すべきだ」と主張しました。

外交

非核の日本 自主・自立外交を

 「新報道2001」では、外交・安全保障政策について討論となりました。

 自民党の細田氏は、「(民主党は)憲法解釈、自衛隊の派兵について、(立場を)はっきりさせるべきだ」と主張。民主党の岡田氏は「武力行使を抑制する憲法9条の考え方は守る」と述べる一方、「(外交の)継続性は重要だ。いまインド洋に(自衛隊の)船を出している。政権交代した途端に帰って来いとまではいわない」と語りました。

 市田氏は「憲法9条を『守るべきだ』という世論は圧倒的多数だ。高々と9条を掲げて自主・自立の平和外交をめざす」と強調し、次のように述べました。

 市田 国際紛争を軍事力でなく、平和的、外交的手段で解決する、平和の共同体の流れが、アジアでも中南米でも広がっている。そういう流れに日本も沿っていくべきだ。核兵器廃絶の問題ではアメリカも変化している。

 しかし、そういう変化を自公政権はみることができない。核兵器廃絶へ、日本政府はもっとイニシアチブを発揮すべきだ。非核三原則も、二原則などにしてはだめだ。

 同時に、日米関係では、アメリカも変わっていない。日本は、在日米軍基地の強化の問題などでは、アメリカいいなりになるべきでない。

「ルールある経済社会」、平和・外交的努力貫く

 インド洋での給油活動を継続するのか、非核三原則を堅持するのかなど、「民主党政権」となった場合の対応について議論となりました。そのなかで、市田氏は、日本共産党の基本的立場を述べました。

 市田 いいものはいい、悪いものは悪いという、“行動する是々非々の建設的野党”という立場をとりたいと思います。

 いいことでいえば、(労働者)派遣法の抜本改正や後期高齢者医療制度廃止などの一致点はあります。こういう問題を前進させるための推進役の役割を果たしたいと思います。

 同時に、もし民主党中心の政権が憲法改悪、消費税増税、衆院比例定数の削減など非常に危険な方向に踏み出した場合には、それを阻止する防波堤の役割を果たす――たとえば、いま問題になっている非核三原則の「持ち込ませず」は絶対に守るべきです。受け身でなく、前向きの要求をどんどん積極的に提起しながら、行動する是々非々の建設的野党の立場で奮闘します。

 「今度の総選挙で何が問われるか」。この問題で岡田氏は、「小泉改革の総括をすべきだ。改革そのものは必要だが、やり方が間違っていた」と述べました。細田氏は、小泉「構造改革」について、「医療にひずみが出た。これは率直に反省しなければならないが、改革の方向は非常に正しい」と発言。北側幹事長も「官から民へという基本的な方向は間違っていない。修正は必要だ」と述べました。

 これに対し、市田氏は次のように述べました。

 市田 日本共産党を伸ばしていただいて、自公政権に決定的な審判をくだす選挙にしたいと思います。いろいろな形の自民党政治の延命を許さないためにも、日本共産党の躍進が大事です。

 問題は、自公政権が終えんしたあと、どういう日本をつくるのかという、日本の進路が問われる総選挙です。そういう点では、やはりくらしと権利を守るルールがあまりにも日本はなさすぎます。「ルールある経済社会」をつくって、人間をモノ扱いすることをやめ、派遣法の改正や全国一律最低賃金制の確立とか、いま社会保障を必要とする人が社会保障から排除されているわけで、そこを、「負担は能力に応じて、給付は平等に」、税金も取るところから取るという「ルールある経済社会」をつくります。

 外交では、憲法9条を高く掲げて、非核の日本、唯一の被爆国として、核兵器廃絶のイニシアチブを日本が発揮していく、そういう政治をやるべきです。日米軍事同盟絶対の政治から抜け出して、ものごとを平和的・外交的な努力で解決していくという世界の流れに合流していくべきだと思っています。

政治とカネ

疑惑は放置できない 企業献金を禁止せよ

 東京地裁で西松建設元社長に小沢一郎前民主党代表や二階俊博経産相への迂回(うかい)献金をめぐる政治資金規正法違反事件で有罪判決が下った問題。

 公明党の北側氏は、民主党の鳩山由紀夫代表が偽装個人献金の虚偽記載の問題にも言及し、「選挙前に説明責任を果たしてもらいたい」と主張しました。

 岡田氏は、「説明はきちんとしている。記者会見も開いて、自ら非を認めた」と述べる一方で、「自民党には、非を認めずに、記者会見すら開かない人が圧倒的(に多い)」などと“非難合戦”の様相に。市田氏は、「この問題は党略的に扱うべきではない」として、次のように指摘しました。

 市田 どの党の、どの議員の疑惑であっても、やはりこれを放置すると、国民の政治に対する不信をいっそう招きます。

 二階氏と小沢氏のことについていうと、(寄付を)出した西松建設は、偽装献金だったと認めて有罪になったわけです。では、受け取った方はどうか。受け取った側が真実を国民の前に明らかにするという点では、私はまだ不十分だと思います。

 鳩山代表の献金の問題でいうと、国民の7〜8割が、あの説明では納得していません。民主党は、“記者会見の全ぼうが全部テレビで放映されていない”といいますが、それだけではなくて、やはり納得できない原因があると思います。どうして死んだ人が献金できるのか、どうしてそういうことをしたのかという動機がわからないからです。それから、出資したのはだれのお金だったのか。しかも最初は“個人献金が少なすぎるから”という理由でしたが、その後“いや、企業献金が少なすぎるからだ”と変わっています。そういう点では、国民が納得していないのには理由があるんです。

 しかし、自民党は、(内閣不信任決議案の討論の際)「鳩山献金疑惑隠し解散」だとおっしゃったが、自らの疑惑の問題についてはぜんぜん国民の目に明らかにしていないわけです。国会は事実上閉じたけれども、党として国民の前に明らかにしたうえで、(総選挙で)信を問うべきです。

 また、北側氏が、民主党の「自浄能力」を問題にしたのに対し、市田氏は「自民党の説明責任問題はいわないのか」と発言。北側氏は「自民党もちゃんと説明責任を果たすべきだ」と述べました。

 市田 やっぱり根本には、私は企業団体献金を野放しにしてきたところに大きな問題があると思います。企業が見返りを期待しないでお金を出すわけがないわけで、これはきっぱりこの際禁止すべきです。

 それから政党助成金です。国会議員自らが“身を削ろう”といいながら、(共産党以外の党が)税金を320億円も山分けして、政党の運営を税金でまかなうというやり方は、政党の堕落への道です。この際、きっぱり廃止したらどうですか。

財源

ムダ遣いをなくし、税金は能力に応じて

 テレビ朝日系番組「サンデープロジェクト」では、「民主党が政権をとったらどうなるか」(司会・田原総一朗氏)と公約の実現性を問われた岡田氏が「9兆円くらいの予算の組み替えができる」と発言。なかでも、国家公務員の人件費2割カットの公約について、「はっきりいって人間減らすか給与減らすかだ」(田原氏)と問われました。

 この問題で市田氏は「そういうやり方は反対だ」と表明し、次のように述べました。

 市田 ムダを削るというなら1メートル1億円以上もかかる東京の外郭環状道路(総事業費1兆8千億円)などの巨大な道路や、八ツ場ダム(群馬県)、川辺川ダム(熊本県)などムダな大型公共事業もある。あるいは軍事費でも共産党はすべてを一度に減らせとは言わないけれど、条約上義務づけられていない(米軍への)「思いやり」予算(毎年約2500億円)などというのはこの際削る。政党助成金というムダを削る。

 同時に入りの方(歳入)でいえば、いま、アメリカは富裕層に増税して、中低所得者には減税をやろうとしているわけでしょう。あのアメリカでも10年間で140兆円の軍事費を減らすといっているんですよ。(日本でも)税金は大企業や大金持ちから、とるべきところからとるべきです。



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