2009年3月18日(水)「しんぶん赤旗」

“暴走する資本主義”――打開の展望を語る

BSイレブン 志位委員長出演の“熱論”


 十六日深夜に生放映されたBSイレブンの政治番組「インサイド・アウト」で日本共産党の志位和夫委員長と二木啓孝氏、松田喬和氏がおこなった“熱論”を紹介します。


西松建設違法献金事件――“フリー”の立場で追及する唯一の党

 「西松建設事件は民主党だけでなく自民党にも飛び火していますが、お互いにスネに傷があるので国会であまり議論にならないなか、ひとり、この党だけはこの問題を追及しています」

 二木氏のこんな紹介で始まった番組。冒頭、日本共産党が、毎月千人規模で新規党員を迎えていることが話題になりました。二木氏が「勢いが出てきた共産党は国会の中でどういう位置にあるのか」とのべると、松田氏は、西松建設の献金問題をあげ、「(他の野党と違い、民主党との選挙協力のない)共産党だけは、忌憚(きたん)のない質問もできるし、意見もしゃべることができるということで、最もフリーな立場でこの問題を扱っている」と解説しました。

 ここから、話は西松建設の献金疑惑問題に移りました。

 志位氏が、国民の税金の一部が、自民党と民主党の政治家のポケットに入っていたこと、十数年前から大問題になっていたゼネコンと政治家との癒着が、いまも連綿と続いているのではないかという疑惑の核心を語った後、こんなやりとりが――。

 二木 東京地検特捜部が、任意の事情聴取なしに、小沢(一郎民主党代表)さんの公設第一秘書をいきなり身柄拘束したことについて、「ちょっとやりすぎじゃないの」という見方があるんですが。

 志位 そういう声が民主党のなかから起こっているのだけれども、私はそういうことをいう前に、民主党にしても自民党にしても、自分の党に疑惑がかかっているわけだから、自分で調べるべきじゃないかといいたい。ところが民主党は、「小沢代表のことを信じるのみだ」「一致結束だ」というだけで、誰からも調べようという声が起こってこない。自民党も、麻生首相は二階(俊博経済産業相)さんについて、「個別の事案にはコメントしません」と。

 二木 いつものパターンなんですね。

 志位 自分が任命した大臣に疑惑がかけられているのに、「個別だから知らない」というのは通らない。自民も民主も、間違ったことをしていないというなら説明すればいいし、それをやろうとしないのであれば、やはり党ぐるみで疑惑を隠しているといわざるを得ないですね。

 二木 捜査の手法の問題をいう前に、自分たちで内部の調査をして、潔白なら潔白を証明しろということになりますね。

民主党の「企業献金見直し」――公約破った反省こそ

 そしてテーマは企業・団体献金そのものの問題に。二木氏は、民主党の鳩山由紀夫幹事長が最近、企業・団体献金の見直しをいいはじめたことについて尋ねました。志位氏は、企業は、営利団体であり、企業献金はどんな形であれ見返りを求めることになり、ワイロ性をもつものであり、日本共産党はその全面禁止を主張していると力を込めたうえで、こんな事実を明らかにしました。

 志位 民主党との関係では、わが党は、二〇〇二年、〇三年に、公共事業受注企業からの献金は禁止するという法案を共同で提出したことがあるんですよ。

 二木 ほうほう。

 志位 民主党はその後も単独でも提出しています。とくに公共事業受注企業からの献金というのは政官業の癒着の温床になるからということで。ところが、自分の党の党首がそういうお金をもらっていたということは、これは国民にたいする公約を党首が破っていたということになります。ですから、このこともきちんとしないといけない。制度の問題についていろいろいうのは結構ですが、まずは自分の党の疑惑をきちんと解明する、これが先決です。自民党にも同じことをいいたいですね。

「政治とカネ」――企業献金と税金の“二重取り”は許されない

 どうすれば、「政治とカネ」の問題を根絶できるのか――。松田氏は、政治資金規正法「改正」では、一つ穴をふさいでもまた別のルートが出てくるというのがこれまでのプロセスだったと振り返るとともに、政党助成金という税金が日本共産党以外の政党にストレートに入っている今、各党の責任はいままで以上に重いと指摘しました。

 志位氏は、「一番確実なのは、元栓をしめる、つまり(金の)出の部分でしめちゃうこと。企業献金を全面禁止し、出の部分でしめたら、どんな抜け穴もつくれなくなります」と強調し、そして――。

 志位 それからもう一ついわれた政党助成金の制度は、もともとこの制度自体が、自分の支持していない政党にも自分の税金がいくという憲法違反の制度であり、私たちは受け取っていません。加えて、(制度を)入れたときには、企業献金を禁止する方向にします、だから国民の税金を使わせてくださいということだったわけですね。ところが企業献金は野放しで花盛り、もう一方で税金は使い放題と、これはひどい二重取りであって、やはりこういうことが起こった以上は、政党助成金制度も撤廃するという議論を真剣に起こすべきです。

 二木 確か、政党助成金を入れたときに企業・団体献金については五年後に見直すという条件がついていたわけですが、五年たっても知らんぷりだと(笑い)。共産党の場合、企業・団体献金も政党助成金ももらわないということで、公明正大といいますか、このことが追及できるとなると、やっぱり自民・民主にとって共産党というのはなにか悩ましい(笑い)といいますか、困ったなあ(笑い)ということはあるんでしょうかね。

 志位 これはやっぱり、日本の政治をよくしていく上で、自民も民主も自浄能力をきちんと発揮して、まず疑惑を自ら解明する努力をして、政治不信を払しょくする努力をしないと。これだけ大変な世界経済危機があるもとで、日本の政治が機能まひになっているというのは嘆かわしい限りですから。

志位委員長の予算委質問――「非常に印象に残る」(二木氏)

 これをうけ、話題は深刻な雇用破壊の実態と打開策にすすみました。

 二木氏はまず、「私も非常に印象に残っている」とのべながら、志位氏が「派遣切り」をただす政治の責任を政府に正面から迫った二月四日の衆院予算委員会の様子をVTRで紹介しました。そこでは、「派遣労働が急増したことはもとより自然現象ではない。(『派遣切り』の現実は)『想定外』といういい逃れは通用しない」と迫る志位氏に対し、麻生首相が「雇用の確保のために(派遣労働は)一定の役割を果たした」と強弁する場面が映し出されました。

 二木 政府は一貫して、派遣は労働者の多様な働き方を保障するといっていますが、私は、望んで派遣になって自由を謳歌(おうか)したいという人はそれほどいないと思うのですが。

 志位 そのとおりです。政府は労働者の「ニーズ」というけれど、(派遣労働は)企業側の勝手なニーズに応えたものですね。いつでも労働者を「使い捨て」られるようにしたい財界の要求でつくられたものです。

 志位氏は、予算委で使った三つのパネルを示しながら、質問で明らかにしたポイントを詳しく説明しました。まずは、大企業が非正規労働者を増やし、搾れるだけ搾りながら、莫大(ばくだい)な内部留保をため込んできた実態です。少なくない大企業が、労働者の「首切り」を進めながらいまも巨額の株主配当を続けていることには、二木氏が「私もびっくりだった」と。さらに、志位氏が、派遣労働には、最大でも三年の期間制限があり、そこには「偽装請負」の期間も通算されること、それを超えた派遣労働者には、受け入れ先企業が直接雇用・正社員化の申し込みをする義務があること、にもかかわらずその義務を果たすどころか、逆に首を切るケースが非常に多いことを告発すると、二木氏は、「暴走する資本主義といいますが、なぜ、こんなに資本主義社会はルールがなくなっちゃったのでしょうか」と強い声を上げました。

 志位氏は、一九九五年以降、労働法制の規制緩和、自由化ということがドンドンやられ、派遣労働についても一九九九年に原則自由化し、二〇〇四年には製造業にまで解禁し、「使い捨て」労働をまん延させてきたことを指摘するとともに、もう一方で、「それを強制した力もある」と力説しました。

 二木 ほう。それは何でしょう。

 志位 それは、日本の証券市場があまりにも投機化している(ことです)。いまの東京証券市場の売買の六割から七割は外国人投資家で、その大半はヘッジファンドだといわれています。こういう人たちは日本企業を中長期の目で育てよう、日本経済をよくしようとは考えていません。短期の株の売買でもうけていく連中が市場を支配しているわけです。企業は四半期ごとに業績の開示が迫られ、短期で見て業績の悪いものは株が売られ、業績の良いところは株価が上がる。リストラをやると株価が上がるという状況を市場がつくってしまって、その市場の圧力で大企業が横並びで「派遣切り」をやっているという面があるんですね。こういう状況をつくったのも、「金融ビッグバン」という掛け声で、金融自由化政策を橋本内閣以来、続けてきた結果です。労働市場も、金融市場も、まともなルールを壊してしまった。この両方があわさって、いま日本の資本主義はひどいところにきていると思います。

ルールある経済社会へ――社会保障めぐる三つの異常

  志位氏の指摘に、二木氏は「その一番のしわ寄せが派遣労働者にきているんですね」「では、どうしたら、これを直せるのでしょうか」と話を進めました。

 志位氏は、「まず資本主義の枠内で『ルールある経済社会』を築こうというのが私たちの目標です」と述べた上で、「特に強調したい点」として、派遣法の抜本改正、正社員と非正規社員の均等待遇や、長時間過密労働の是正など「人間らしく働けるルールづくり」を提起。さらに「もう一つの大きな柱」として社会保障分野でのルールづくりをあげました。

 志位 日本の社会保障を、欧州と比較して調べて、あらためて驚いたんですけれど、世界の主要国の中で、日本だけだろうと思う異常が三つあります。一つは、医療費の窓口負担が三割だということです。(他の主要国は)だいたい無料ですよ。医療保険料は病気になったときのために払っているのに、いざ病気になったら三割では保険とはいえない。二つ目は、後期高齢者医療制度で七十五歳以上のお年寄りを特別に囲い込んで差別医療を押し付けるやり方。こんなことをやっているのも日本だけです。三つ目が、障害者自立支援法で「応益負担」をもちこみ、障害の重い方ほど重い負担をかけているのも日本だけです。

 二木 なるほど。

 志位 社会保障が本当に立場の弱い人を支えるものとして機能していない。逆に、社会保障が人を殺すような、人を窮地に追い込むような(ものになり)、たとえば、生活保護でも「水際作戦」で、申請さえ受け付けない。高すぎる国保料を払えないと保険証を取り上げられて、お医者さんにかかれず、たくさんの人が亡くなる。社会の安全網がズタズタになってしまっている。人間が生きていくうえでの基本のところでのルールが必要だと私たちは訴えています。

財源論――大資産家・大企業優遇税制のあまりの異常

 「私はね。志位委員長の話を聞くと正論だなと思うんです」と二木氏。「これを現実の国会や政治に反映できないネックは何なんですか」と松田氏に話を振ると、こんなやりとりになりました。

 松田 医療費の窓口負担三割の問題や後期高齢者という年齢で(医療を)制限するのもおかしい。障害者への重い負担もその通りだと思う。ただ、高齢化が急速にすすむもとで、(社会保障財源を)誰がどのように負担するのかの説明がつけば、私は志位さんのおっしゃる通りリアルに賛成したいと思う。

 志位 私たちは、どこで財源をつくるかという問題も具体的に提案しています。まずは日本の大資産家に対する税制というのは本当に軽い。所得税については最高税率がずっと下がって金持ち減税をやってきた。それからもう一つ、外国の方々が驚かれるのが、証券優遇税制です。株の売買や配当にかかる税金が日本はたった10%です。フランスは29%、アメリカは25%ですよ。この金持ち減税と証券減税を是正するだけで二兆円近い財源がでてきます。(米国の)オバマ政権だって金持ち増税やって財源をつくっています。日本もまずここに手を付けるべきです。

 二木 ほう、なるほど。

 志位 それからもう一つは、大企業です。大企業の負担を考える場合、税と社会保障の負担の両方で見る必要があります。自動車産業の場合、税と社会保障の負担は、日本はだいたいドイツの八割、フランスの七割という水準なんですね。だから、これを世間並みに払ってもらえば、何兆円という税収が確保できるんです。大金持ち・大企業に応分の負担を求めようと私たちは主張しています。もちろん(歳出も)削るところは削らなければいけません。軍事費を削る必要があるし、「思いやり」予算は全廃する必要があります。

日本共産党の未来社会論――熟した柿がポトッと落ちるように

 志位氏の説明を受けて、「『暴走する資本主義』から『節度ある資本主義』を目指すのが共産党の主張ですね」とまとめた二木氏。そこで「素朴な疑問がある」として、「節度のある資本主義」になると、みな豊かになりますよね。ところが、共産党の場合は、さらにそこからみんなで社会主義国家つくっていこうと。安定した生活ができるのに、これを壊そうという気になるのでしょうか」と尋ねました。松田氏も「私たちのイメージでは、国民が困窮化していく中で、次のステップが社会主義であり、かい離がある感じがするのですが」と。これに答える形で志位氏は、日本共産党が目指す社会発展の展望について語りました。

 志位 私たちは、資本主義が衰退していって、その先に私たちの目指す未来社会、社会主義の社会があるとは考えていないんですよ。資本主義が健全に発展していくことが次の社会を準備することになると思っています。ですから、節度ある形で大企業には応分の負担を求める、国民の生活は豊かになる、そうすれば、日本経済は草の根から力を得て発展していきます。それは私たちの理想が遠のくのではなくて、むしろ、熟した柿がポトッと落ちるように、次の社会への発展の条件をつくることになると考えています。ですから、私たちが政権に参画したとしても、大企業との関係では共存していくと。大企業には健全に発展していってもらわないと、困ります。

 二木 すると、働くものが「資本主義ってつらいよね」と思って進むものではないと?

 志位 まず資本主義の枠内でも「国民が主人公」の日本にすすむ。「ルールある経済社会」をつくる。それでもなお解決できない問題があらわれてくると思います。そして世界的規模でもさまざまな問題が問われてくると思います。いま世界的な規模で飢餓の問題がある、貧困の問題がある。あるいは投機の問題がなかなか解決できず今回のような恐慌という事態がおこってくる。地球環境の問題もある。こういう世界的規模で問われるいろいろな問題がありますね。こういう問題が、資本主義という「利潤第一」「もうけ第一」という体制で根本から解決できるのか、ということが世界的規模でも問われるなかで、次のステップにいくのではないかと考えています。

総選挙後にどうする――積極的な政策提起で政治をリード

 最後に話題は、総選挙後の野党の関係に。二木氏が「自民党を倒すということで民主党とすんなり手を結べないのか」とのべたのに対し、志位氏はこう答えました。

 志位 民主党と私たちには根本的な政治的立場の違いがあります。たとえば、民主党は財界・大企業との関係で、日本経団連に通信簿をつけてもらって、献金をあっせんしてもらっている。ですから、大企業にモノが言えません。私は、日本の政党は、「大企業にモノが言える党か、大企業からモノを言われている党か」というところで違いが出てくるとよく言うのですが、この点で大きな違いがある。安保条約に対する考え方も違う。ですから、政権協力の条件はないということをはっきり申し上げています。

 二木 なるほどね。

 志位 ただ、私たちが今度の総選挙で前進・躍進できたら、個別の問題提起をどんどんやっていくつもりです。たとえば、労働者派遣法を抜本改正しよう、後期高齢者医療制度は撤廃しよう、農産物の価格保障・所得補償をやろうと。こういうことを個別に提案して賛成できる政党とは協力し、個別の課題で政治をリードする仕事をぜひやりたいと思っています。

 ここで番組の放送時間がいっぱいに。エンディングテーマが流れるなか、二木氏は「自民党にとっても民主党にとっても非常に悩ましいところにいる共産党は、ある意味、非常に存在感ありますよね」と感想を語りました。


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