2009年1月27日(火)「しんぶん赤旗」

国民投票

ボリビア新憲法 承認

米従属・新自由主義と決別選択


写真

(写真)新憲法案の承認を祝う市民=25日、ラパス(島田峰隆撮影)

 【ラパス=島田峰隆】南米ボリビアで二十五日、米国への従属と新自由主義からの決別を内容とする新憲法案の是非を問う国民投票が行われました。地元メディアの出口調査によると、賛成約60%で新憲法案は承認されました。

 同時に行われた大土地所有の上限を問う国民投票では、上限を五千ヘクタールとする案が賛成78%、一万ヘクタールが同21%でした。

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 新憲法は「新自由主義国家を過去のものとする」と述べ、連帯、調和、機会均等、社会的平等などを「国の価値」と規定。外交では侵略戦争を拒否し、国内に外国軍基地を設置することを禁止します。憲法で外国軍基地設置を禁止したのは、南米ではエクアドルについで二カ国目です。

 モラレス大統領は二十五日夜、ラパスで演説し、「植民地主義と新自由主義はきょう終わりを告げた。きょうは全国民に平等と尊厳を保障する新しい国の始まりだ」と宣言しました。

 大統領は「合法的に選ばれた政府として、民主的に承認された新憲法を全国に適用する」と強調。「全国民の力で変革を深めよう」と語り、新憲法に反対した国民にも協力を呼びかけました。

 一方、富裕層を主な支持基盤とする野党の地盤である東部四県を含む五県では、反対が賛成を上回りました。野党は新憲法案承認後も反政府運動を続ける姿勢を示しています。


解説

社会変革へ国民の確信

 【ラパス=島田峰隆】南米ボリビアで連帯的な経済モデルを目指す新憲法案が賛成多数で承認されたことは、新自由主義と対米従属から決別するモラレス政権の社会変革の方向に国民が確信を強め、変革のいっそうの前進を願っていることを示しました。

 二〇〇六年一月に発足したモラレス政権は、二十年余り続いた新自由主義路線を断ち切り、「国の資源は国民のために使う」ことを最大の公約にしてきました。

 政府は、それまで外国企業まかせだった天然ガス採掘事業への国家管理を強化。企業からの税収を大幅に増やし、それを財源に就学援助制度や無年金者向けの新年金の創設、病院や学校の増設、医師や教師の育成などに取り組んできました。

 この三年間で全国の病院数は二倍以上に増え、小学校の就学放棄率は2・5ポイント低下。昨年は非識字者を克服しました。

 与党側は「この変革を深化させるのが新憲法だ」と強調。政府を支持する農民、労働者、先住民などの団体は、新憲法で国民の権利が発展すると宣伝し、変革の継続と強化を呼びかけました。

 一方、企業関係者や大土地所有者が支援する野党勢力は、政府による国民向け施策と成果を否定できず、「新憲法はベネズエラの干渉」「経済活動の自由がなくなり失業と貧困が増える」など、国民の不安をあおる宣伝に終始しました。

 十八年間の軍事独裁とその後の政情不安を経験したボリビアで、憲法の是非を国民自身が投票で決めたのは史上初めてといいます。

 反対勢力や一部メディアには、四百条以上ある新憲法案を「国民は読んでもいない」とやゆする主張がありました。しかし選挙中に新憲法案の冊子が街頭で無料配布され、閣僚や国会議員を招いた討論会が無数に開かれるなど、国民的規模で民主的な討論が行われました。

 国民投票が「ボリビアの民主主義と国民参加の発展にとって重要な歴史的出来事になった」(選挙裁判所議長)と言えます。


 ボリビア 面積は約百十万平方キロで日本の約三倍。人口九百五十万人で、先住民55%、先住民と白人との混血30%、白人15%。首都はスクレ、政府所在地はラパス。主な資源はスズ、タングステン、天然ガスなど。昨年八月の国民投票で、モラレス大統領は約67%の支持で信任されました。


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