
2008年12月1日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPRESS
要注意 マルチ商法
もうかるなんて「ありえない」
「大切な友だち失った」
友人や知人を会員に誘って、商品を購入させると報酬が得られる「マルチ商法」が、若い人たちの間に広がっています。経済的な損失に加えて、大切な友だちを失ってしまうなど高いリスクも―。
東京・大田区のAさん(22)は、大学2年生のとき、電車内で中学時代の友達と再会しました。その友達に「経営学の勉強に役立つ講義がある」と誘われました。マルチ商法のセミナーでした。
会社のスタッフから「おもしろいビジネスだからやってみないか」と勧誘され、会員になりました。
10万円を投資し、サプリメントや栄養ドリンクを買いました。
しかし、半年たっても全然売れず、投資分はほとんど回収できませんでした。
在庫ばかり
神奈川県横須賀市のBさん(34)は、20代のときに2回、マルチ商法にはまりました。
はじめは、洗剤や健康食品の販売でした。友達に会員を増やしましたが、一つひとつの利益が少なく、在庫ばかりが増えました。
二度目は、友達にマルチ商法のセミナーに誘われたことがきっかけでした。
「マルチ商法のスタッフは、本当に口がうまいんですよ」とBさん。「たった1人だけ、会員を増やせばいいんです。将来的には、年収2000万円も夢ではありません」の言葉に乗せられました。
契約を解除
40万円の高級ふとんのクレジットローンを組まされました。投資分を回収しようと、友達に懸命に売り込み、仲間の中で連鎖的に広がりました。
そのうち、友達の1人から、リスクの高いマルチ商法から足を洗うように忠告されました。
Bさんは当初、「他人に言われる筋合いはない」と拒否しました。
しかし、その後、疑問がわき、消費者センターに相談して、契約を解除しました。
「冷静に考えるためには、マルチ企業との連絡を断つことが大切でした」とBさん。
「マルチ商法は、人を自分の下につけなければいけません。いろんな友達を誘い、結局、多くの友達を失いました」
相次ぐ行政処分
会員は利益なし
11月、マルチ商法の業者に対する行政処分が相次ぎました。
東京都は18日、マルチ商法で、お茶などを販売していた「フィールズ」(東京都品川区、篠原丈夫社長)と、同社の販売組織を利用して競馬投資ソフトを販売していた「マイクロシステムテクノロジー」(同中央区)に、業務停止命令を出しました。
フィールズは、おもに20歳前後の若者をターゲットに、「がんに効果があると立証された」「1カ月で150万円から200万円くらい稼いだ」などとウソの宣伝をするなどして、お茶と浄水器を販売していました。
2007年9月までの1年間に約7億7800万円を売り上げていましたが、会員約3600人のほとんどは利益を得ていなかったといいます。
マイクロ社は、競馬投資ソフト「錬金王」を「98・2%の確率で勝てる」「ローンを組んでも、もうかるから大丈夫」などとウソをいって販売していました。
また、経済産業省は14日、マルチ商法で携帯電話用の充電器を販売していた「MMS」(大阪市)と「ワールドビジョン」(同、今西博章社長)に業務停止命令を出しました。
同省によると、MMSは、「勧誘できていない人でも、1カ月2万―3万円の収入が必ず入ってくる」などと勧誘。ワールド社は、解約を申し出た消費者に対し、「宣伝費や広告費に20万円ほどかかっているので、返金できるとしても残りの30万円しか返金できない」と事実でないことを告げていました。
「勝ち組になろう」と勧誘
東京都消費生活総合センター相談課の古川絵里子さんの話 最近も、大学生が一緒に勝ち組になろうと誘われたり、ひとつの場所に集められて成功例を聞かされて、自分ももうかる気になったりした例があります。「連鎖販売」は、人づてに勧誘していくので、友人関係が壊れてしまうこともあります。利益が上がるといわれても、どんな根拠があるのかをよく確かめて、慎重に対応してください。途中で解約できることもあります。トラブルがあったら消費生活センターなどに相談してください。
トラブル起きたら…
東京都消費生活総合センター
電話03(3235)1155(午前9時〜午後4時、土日・祝日は休み)
国民生活センターホームページ
http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html
マルチ商法(連鎖販売取引) 商品を販売しながら会員を増やすと報酬が得られるとして、会員が販売員となり、友人や知人を会員に勧誘しながら販売していく商法です。セミナーなどと称して洗脳の手法を取り入れている場合が多いのが特徴。冷静な判断ができずに会員を誘い、被害を広げることもあります。「特定商取引に関する法律」で厳しく規制されており、一定期間内ならば契約を解除できる「クーリングオフ制度」が設けられています。
お悩みHunter
不登校…高校には行きたくて
Q 中学3年の女子です。中学1年の途中から教室に入れなくなって、2年生から不登校になりました。でも、高校には行きたいです。9月から週2日だけ、母と学習塾に通っていますが、勉強が難しくて…。こんな私でも行ける高校が見つかるか心配です。(15歳、女性)
必ず行けるよ 希望を持って
A 思わず「ごめんねー」と謝りたい気持ちになりました。こんなにも大きなハンディのあなたに、とても大きな負担を与えてしまっているからです。学校や教育委員会からの具体的なアドバイスは何もなかったのでしょうか。
適応指導教室などの先生に見てもらうと、事情もよくわかっていますから、あなたに合った勉強法でリードしてくれるように思えるのですが…。
いずれにしても、今必要なことは、公的な相談機関にお母さんと足を運び率直に訴えることです。それが無理なら、民間の不登校相談所などに電話で相談するだけでも、進学へのいろんな方法が見えてくるはずです。
今や、多くの地域であなたのように進学の意欲はあるものの、不登校などで困っている人のために、入学試験では特別の配慮、工夫をするようになってきているからです。
学校に行っていなかったのですから、学習面で遅れが出るのは当たり前です。ですが、やる気さえあれば、高校3年間で追いつけます。勉強面だけでなく、友達を見つけたり、自分の趣味を楽しんだり、特技を伸ばしたり、現実社会についてしっかり見つめたり、将来の自分の生き方、仕事を考えたりする上でも高校3年間は貴重です。
あなたのように意志がしっかりしていれば、必ず行ける高校やコースはあります。希望を持って相談して下さい。
教育評論家 尾木 直樹さん
法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。