2008年8月16日(土)「しんぶん赤旗」

主張

ODA事業贈賄

腐敗構造を徹底的に洗い出せ


 ベトナムでの政府開発援助(ODA)事業受注をめぐり、大手建設コンサルタント「パシフィック・コンサルタンツ・インターナショナル」(PCI)の前社長らが不正競争防止法違反(外国高官への贈賄)容疑で逮捕されました。

 日本企業が贈賄攻勢でODA事業を受注していることは、いまや業界の常識です。腐敗の横行を放置してきた日本政府の責任は重大です。事件は氷山の一角です。同罪での立件は二例目ですが、これを機会に、ODA事業全体にまん延している腐敗構造を徹底的に洗い出すことが不可欠です。

大企業が食い物に

 PCIは、ベトナム・ホーチミン市が日本のODA事業(円借款)として発注する高速道路建設のコンサルタント業務を二〇〇一年に競争入札で受注し、〇三年に随意契約で監理業務を受注しました。その見返りにPCIがベトナム高官に合計約九千万円を手渡したというのが今回の贈賄事件です。

 ODA事業は貧困・飢餓をなくすために国民の血税を使って行われるものです。それを日本企業が食い物にするなど許されていいはずがありません。世界の困っている人々のためでなく、日本企業の利益のためのODAではないのかといった批判を増幅し、国際社会からの不信を広げるだけです。

 ODA事業を受注するために、ODAを受ける発展途上国の役人に賄賂を贈るのは国際条約でも禁止されています。外国公務員贈賄防止条約(一九七七年)は、不当な利益を得るために「外国公務員に対して金銭等」を供与することを禁止しています。日本は九八年に批准し、不正競争防止法も改正しました。しかし具体的な対策をとらず腐敗を放置してきました。国際的な取り決めよりも日本企業の利益を優先させたといわれても仕方がありません。

 OECD(経済協力開発機構)が昨年十月にだした報告書で、日本は、法律を制定したのはいいが「それを執行するための措置をほとんど講じていない」と批判したのは当然です。PCI役員の逮捕でお茶をにごし、内外の批判をかわすことを外務省がもくろんでいるとしたら、国民と世界の人々を裏切ることになります。

 見過ごせないのは、外務省には贈賄行為を全面禁止する意思も姿勢もみえないことです。ODAの運用は、有償資金協力(円借款など)を担当する国際協力銀行(JBIC)や無償資金協力を担当する国際協力機構(JICA)が扱うことになっていると説明するだけです。これでは贈賄行使の禁止などできるはずはありません。外務省の姿勢が問われています。

再発防止策が急務

 ODA事業に関与している日本企業側からは、贈賄事件についての反省の声が聞こえてきません。日本経団連にいたっては、贈賄問題にふたをしたまま、「ODAと民間活動との連携」や「民間主導プロジェクトに対する円借款等による補完」などといい、ODAをいっそう企業の食い物にしようとさえしています。大企業いいなりではODA政策のゆがみはひどくなるばかりです。

 政府は大企業の利益を優先させて贈賄行為に目をつぶるのではなく、再発を防止し、ODA事業から腐敗を一掃するため具体的に行動を始めることが求められます。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp