2008年5月5日(月)「しんぶん赤旗」
主張
こどもの日
子どもを信じて支える社会を
「どの子もすばらしい個性と才能をもっている。それをつぶさないように育てるのが教育」
ユニセフ親善大使として、子どもたちが緊急に助けを必要とする国々を訪ねている黒柳徹子さんが、折にふれいわれることです。
一方、政府の施策は、子どもへの不信から出発しているかのようです。日本の子どもは学力が低い、体力がない、規範意識がくずれている、だから国が教えてやろう。今日の「教育改革」の発想です。
問題は子どもでなく社会
そんな「改革」が子どもにかみ合うはずがありません。半日かかる全国学力テストでは「疲れる」「なんでやるの」の声。学校で文科省の「生きる力」を強調するパンフを渡された母親は「勝手に頭のうえを通り過ぎていく感じ」といいます。
世界から見れば日本の子どもの学力は上位です。重大な事件をおこす少年の比率は一九六〇年から大幅に減少し、欧米とくらべ格段に少ないことも注目されています。
問題は子どもでなく子どもが育ちにくい社会や教育のあり方にあるのではないのか。たとえば「子育てしやすい」といわれる北欧とくらべてみましょう。
何より親の働き方がちがいます。残業がなく、夕方四時か五時には家族が全員そろうのが当たり前です。学力世界一のフィンランドの夏休みは二カ月、宿題はありません。親とゆっくりすごす時間は子どもに何よりのごちそうです。
学費は大学まで無料です。国際人権規約がさだめた「高校・大学教育の段階的無償化」のとおりです。授業料がないだけでなく、学生には月数万円の返済不要の奨学金が支給されます。貧富の差なく教育を受けられることは、子どもの目にどんなに頼もしく映るでしょう。
子どもを競争にさらすことには抑制的です。デンマークでは中学二年まで点数をつけることを禁じています。点で優劣をつければ子どもは自信をなくして発言しなくなる、それでは民主主義社会が育たないというのが理由です。まわりと比べられずに育った子どもは、まわりがびっくりするような力を発揮します。
子どもの権利も尊重されています。学校や家庭での体罰はきびしく禁じられ、学校では運営機関に生徒代表が参加します。国際的には国連・子どもの権利委員会が子どもの「意見表明権」を乳幼児まで拡張し、赤ちゃんだからと主体性を認めない傾向を戒め、「乳幼児の意見と感情」の尊重をもとめています。
これらの傾向は、ヨーロッパですくなからず共通したものです。同じ資本主義国なのに、なぜ日本はそうなっていないのでしょうか。
親たちの長時間労働、「世界一高い学費」、国連・子どもの権利委員会から改善の勧告をうけている「極度に競争的な教育制度」や「子どもの意見尊重が制限されている学校や社会」。いずれも自民党政治がつくりだしたもので、その転換こそが事態をかえるカギです。
成長支援する政治と社会を
子どもたちの屈託ない笑顔をみるにつけ、この日本で、ヨーロッパで常識になっているような子育ての環境や教育のまともなルールを確立したいと願わずにおれません。また、子どもの幸せの土台である平和を大切にしたいと思います。
日本共産党は、憲法と子どもの権利条約を生かし、子どもをあたたかく見守り、その成長を支援する政治と社会の確立に力をつくします。