2007年7月27日(金)「しんぶん赤旗」
イスラエル教科書
右派は反発強める
アラブ側主張も容認
【カイロ=松本眞志】イスラエルでは二十三日、タミール教育相がパレスチナ人の惨状の記述を掲載した教科書の採用を認めた問題で、リクードや国家宗教党など右派勢力は同相の辞任を要求しました。イスラエル紙ハーレツ同日付(電子版)が報じたものです。
問題となったのは「イスラエルでともに生きる」と題する地理の教科書。アラブ系イスラエル人の学校で使われるものです。
一九四八年の第一次中東戦争で、イスラエル国内のアラブ系住民が住んでいた村を破壊されて、家を追放されて難民になったとし、イスラエルの建国が、アラブ人にとっては“ナクバ”(「破局」「災難」を意味するアラビア語)だったと述べています。
教科書採用の決定に対し、国家宗教党のオルレブ党首は「タミール氏はアラブ人に対して、イスラエルがユダヤ人国家であることを認めない権利を与えている」と非難。リクードのネタニヤフ党首は「教育相による不合理な(教科書採用の)決定は受け入れがたい」と主張しました。「わが家イスラエル」のリーバーマン議長、カディマの国会議員ロニト・ティロシュ氏もそれぞれ、「“政治的自虐”の反映」「不愉快な決定」と批判しました。
一方、アラブ系政党バラド(国民民主同盟)のザハルカ議長は「積極的だが小さな一歩だ」と評価。アラブ系住民の歴史と文化を尊重する教育カリキュラムの設置を求めました。
タミール氏は「(イスラエルの歴史的事実にかんする)議論を活性化させ、子どもたちが他者とともに生きるために必要なことを学ぶのに貢献する」と決定の意義について説明しました。
タミール氏は、一九七八年に平和運動「ピース・ナウ」創立にもかかわったことのある労働党員。〇六年四月にオルメルト政権に入閣し、十二月には一九六七年の第三次中東戦争でイスラエルが占領地を拡大した以前の国境を教科書に明記することを要求しました。