日本共産党

2003年1月16日(木)「しんぶん赤旗」

大江山中国人強制連行訴訟

時効理由に請求棄却

国と会社の不法認定

「国家無答責」の適用を排除

京都地裁


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不当判決に怒りをこめて語る劉さん(中央)=15日、京都市中京区・京都弁護士会館

 第二次大戦中に中国から日本に強制連行され、京都府加悦町の大江山ニッケル鉱山で強制労働させられたとして、劉宗根さん(72)ら中国人元労働者五人と死亡した一人の遺族六人が、国と日本冶金工業(本社・東京都中央区)を相手取り、約一億三千二百万円の損害賠償と謝罪を求めた訴訟の判決が十五日、京都地裁でありました。

 楠本新裁判長は、強制連行と強制労働について「国・会社の共同不法行為」と認定し、同社については「安全配慮義務に違反。不当利得返還義務を負う」などと断じました。

 しかし、被告らの責任については、損害賠償請求権の時効にあたる二十年の除斥期間を過ぎたことで消失したとして、原告の請求を棄却しました。原告弁護団は控訴する方針を明らかにしました。

 原告の劉さんは、報告集会で約百人の支援者を前に、「人間性を欠いた判決です。人びとは平和のために生きているのに、なぜこんな判決が出たのか不思議。強制連行された二百人の思いのためにも、最後までたたかっていきたい」とのべ大きな拍手に包まれました。

国と会社の責任追及した原告

 十八回にわたる口頭弁論で、原告側は、大江山鉱山で早朝から夜まで過酷な奴隷労働を強いられ衣服や食事も満足に与えられず、賃金も支払われなかったことを示し、国と会社の共同不法行為による賠償責任を追及していました。

 これに対して、被告側は、強制連行・労働の事実について争わず、不法行為の時から二十年を経過すると損害賠償請求権が一律に失われると定めた民法の「除斥期間」や、明治憲法下で国の権力行使による損害について国は一切責任を負わないとする「国家無答責」を主張していました。

 「国家無答責」は、戦後補償裁判で国への賠償が退けられる大きな根拠とされてきました。

 今回の判決は、「強制連行は何らの法的根拠もない旧日本軍による不法な実力行使であるから、権力作用の行使とはいえず『国家無答責』を適用する前提を欠く」と、「国家無答責」の適用を退ける初めての判断を示しました。

 一方で、「除斥期間」などを理由に、原告が求めていた損害賠償請求を棄却しました。

 原告弁護団(畑中和夫団長)は、判決後の声明で、「劉連仁訴訟や昨年の福岡訴訟での勝利判決に逆行し、歴史の流れに反する不当なもの」と判決を批判。一方で、共同不法行為を認め、「国家無答責」の適用を排除する画期的な内容を含んでいることを強調し、「大阪高裁での勝利をめざし、戦後補償事件の全面解決を勝ち取る決意」を表明しています。


 大江山鉱山強制連行訴訟 戦時中、「近くの村にざんごうを掘りに行くと金がもらえる」とだまされるなどして、中国人約二百人が、京都府加悦町にある日本冶金工業経営の大江山ニッケル鉱山に連行され、過酷な労働条件の下で約一年間働かされました。生存者の劉宗根さん(72)ら六人が一九九八年八月、国と同社を相手取り、慰謝料と未払い賃金など計約一億三千二百万円の支払いを求めて京都地裁に提訴。原告の一人は死亡し、遺族が訴訟を引き継いでいます。


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