日本共産党

2003年1月8日(水)「しんぶん赤旗」

歌舞伎町ビル火災

遺族が会社提訴へ

被害者の会結成

息子の悲劇 二度と…


 「息子の命は戻らない。二度と繰り返さないで」と東京・歌舞伎町ビル火災事件(一昨年九月、四十四人死亡)の遺族は一月末、ビル所有者などを相手取り損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こします。

配属3カ月で

 福岡県篠栗町の谷繁孝信さん(53)ら三十人の遺族がビルを所有する久留米興産(東京・千代田区)、同社の山田一夫社長、同社の実質的オーナーの瀬川重雄氏に被害者一人あたり三千万円の損害金の支払いを求める方針です。

 谷繁さんは長男の聖司(きよし)さん=当時(24)=をビル火災で失いました。「親思いの優しい子だった」と無念の思いを語ります。

 聖司さんは少年時代から野球チームで活躍。大学に入ってからはアメリカンフットボールをしたスポーツマンです。火災のあった三カ月前に介護機器メーカー(本社・愛媛県)の東京事業所に配属になったばかりでした。

 会社で仕事中だったのに上司から同業他社の社員の送別会に出席するように、再三電話で呼び出されたことから火災に巻き込まれました。

 「聖司があのビルにいったのは送別会が二次会、三次会になってからだったと後日会社の先輩から聞きました。上司から何度も呼ばれて仕方がなかったのでしょう。きっぱり断ればこんなことにはならなかった」と谷繁さんは無念の思いを話します。

 「労災の申請をしていませんでしたから、今年はその問題も解決してあげたい」といいます。

防災不備問う

 「声を荒らげたことがなかった」と息子の思い出を話す谷繁さん。お盆に帰省したとき会ったのが最後となりました。「初めてボーナスをもらいプレゼントしてくれた」といいます。

 提訴を決意した動機は「二度と起こさないためにも責任を認めた謝罪と防災の不備を問いたい」と語ります。

 「昨年十月に久留米興産側は見舞金二百万円を支給すると連絡してきました。謝罪の言葉もなく責任を認めていません。お金の問題ではない」

 昨年十二月末に北海道から九州までの遺族三十人が集まり「歌舞伎町ビル火災被害者の会」(仮称)を結成、訴訟を通じて雑居ビルの防災管理の徹底を訴えていくことを申し合わせました。

 一方、警視庁新宿署捜査本部は、ビル関係者を業務上過失致死容疑で立件する方針です。同捜査本部は、火災があった明星56ビルの三階と四階店舗入り口の防火戸が閉まらず短期間に大量の煙が店内に流れ込んだことが四十四人の命を奪った原因とみています。


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