日本共産党

2003年1月7日(火)「しんぶん赤旗」

シリーズ 地方発 新しい政治の流れ

ため息が勇気に変わった

「6,000工場訪問」運動に社長感動

小泉不況の嵐 東京・大田区の工業地帯


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「小泉首相・竹中大臣のやり方にみんな怒っている」と話す村上さん

 東京・大田区。零細・中小企業が集積する全国有数の機械金属工業地帯です。ここで“小泉不況に負けてたまるか”と寒風のもとで、工場主と労働者らの連帯が新しい息吹を生んでいます。(大井民生記者)

地図から消えた…

 「地図では、ここに工場があるはずなのに、機械も見えない。廃業したようだ」――昨年暮れ、不況打開大田区実行委員会(民主商工会、労組、日本共産党が参加)が「六千工場訪問」の一環として大田区の本羽田地区を訪問したさい、参加者がため息まじりにつぶやきました。

 狭い地域に肩を並べるように立つ工場群。この日訪問した三十軒ほどの工場のうち、歯が抜けるように数軒がすでに廃業していました。

 訪問を受けた板金加工工場の社長は「仕事は、いいときの半分に減った。夢も希望もない時代になった。息子がうちで仕事をしていなければ、やめちゃう」。苦渋の表情で話しました。

 大田区の機械金属工場地帯は、国産のH2ロケットの先端部を製作し、人工心臓などの開発力を持った職人までいる、わが国最高水準の技術力で知られます。ここにも小泉内閣による不良債権処理の嵐が吹き荒れて倒産・廃業が続出。昨年九月発表の工業統計調査速報でも一年間に、従業員四人以上の事業所数が10・5%減少しています。

労働者と業者とで

 同実行委員会の「六千工場訪問」は昨年九月に始まり、これまでに千七百を超える工場を訪問。同区大森東五丁目で五十年以上プラスチック成型の工場を営んできた村上一人さん(77)は「不況だからとしょげるより、みんなで集まろうと業者と労働者が一緒になってやっている実行委員会に、みんなが励まされている」といいます。

 大森東四丁目で機械部品加工工場を営む小林六郎さん(63)=大田区民主商工会会長=は「政治が悪いと、みんな怒りを持っているが、ぶつけ方を知らない。だからこそ、仲間を増やしていきたい」と話します。

 同実行委員会事務局担当幹事の後藤耕三さんは「すべての工場訪問運動をやっている、と話すと、『ほう!』と工場主さんに感動の表情が浮かび、訪問する側も勇気づけられている。この連帯感の広がりが、変化をつくりだしつつある」と語ります。

信組職員良心の力

 二〇〇一年十一月、大田区内の大栄、東京富士の二つの信用組合が、金融庁によって無理やり破たんさせられました。

 同実行委員会は「二信組破たんから大田のものづくりを守れ」と大奮闘し、融資先の九割を受け皿金融機関に引き継がせる成果をあげました。二信組の職員は、引き継ぎに必要な文書を徹夜に近い作業を続けて作成しました。

 日本共産党区議団の中村みのる幹事長は「職員たちが自分たちが職を失おうとしているのに、大事な技術・工場を守ろうと良心の力で作業をしたのだと思います。私たちも国会議員団とも連携し、あらゆる機会をとらえて国・都・区を動かそうとしてきた。これからも精いっぱいやります」といいます。

党の政策共感広く

 同実行委員会の一員として共同して不況打開に取り組んでいるのが日本共産党です。工場訪問活動にも参加し、「不良債権処理」の名による中小企業つぶし政策の転換などを求めた「四つの緊急要求」を訴えています。

 昨年暮れ、本羽田地区の工場訪問では、党大田地区不況打開対策本部の佐藤伸事務局長が、「四つの緊急要求」を掲載した「しんぶん赤旗」号外を手渡すと、工場主は「頑張ってください。お願いしますよ」と期待をのべました。

 京浜島での工場訪問には、党区議候補の清水菊美さんが参加。従業員数十人規模の工場の社長に、「赤旗」号外を渡しました。

 工場主は「ラジオで政治討論を聞いていたら、中小企業の問題で私の考えていることと同じことを話している人がいた。おたくの市田さん(書記局長)だった」と、党の政策への共感を語っていました。

優れた技術見ない銀行

 「新しい製品を開発し、また優れた技術を持っている企業に限って、決算状況が良くないところが多い」と講演で指摘したのが、区内の製造業に詳しい、大田区産業振興協会専務理事・事務局長の山田伸顯さん。小泉内閣の不良債権処理のやり方について憤りを込めて語ります。

 「大田区の中小企業は、日本の国際競争力を生み出す先頭に立たされ、血のにじむような技術革新を続けてきました。銀行は、その技術力についてほとんど見ず、決算書しか見ない。それでいて、大企業にたいしては借金を棒引きしてやる。中小の製造業主にとって、これほどアタマにくることはないんです」


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