日本共産党

2003年1月3日(金)「しんぶん赤旗」

シリーズ 地方発 新しい政治の流れ

合併に頼らないまちづくり

強制に町・村から“反乱”

来月 輝く自治体フォーラム


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 地方の変化が急です。日本共産党と保守層、無党派の人々との共同で首長が誕生、市町村合併の強制に、大多数が保守系の町村長も猛反発―。崩れる自民党の基盤、地方に集中的に現れる小泉政治の矛盾。新しい政治の流れを、シリーズでリポートします。

 合併に頼らない町づくりを――二月に長野県栄村で開かれる「小さくても輝く自治体フォーラム」(注)には、これまでに全国から町村長だけでも約三十人が申し込むなど、大きな反響を呼んでいます。小泉・自公内閣の合併押しつけ、小規模自治体つぶしに立ち向かう地方からの新しい流れです。(深山直人記者)

 フォーラムには、全国の首長のほか、議員、研究者、マスコミなどから申し込みが相次ぎました。定員が百六十人の会場では収容できないと、村役場が第二会場の用意を心配するほど。村民も歓迎しています。高橋智さん(42)は、「すぐれた行政は村民の誇り。合併に頼らない町村づくりの輪が全国に広がってほしい」と語っていました。

 反響の大きさの背景には、政府が、市町村合併の押し付け、小規模自治体切り捨てをいっそう強めていることがあります。

 政府は、合併特例法期限の二〇〇五年三月までに、現在約三千二百ある市町村を千まで減らす計画。地方制度調査会(首相の諮問機関)では、西尾勝副会長が小規模自治体を強制的に合併させ、町村をなくしてしまう案まで出しています。

 フォーラム呼びかけ人でもある群馬県上野村の黒澤丈夫村長は「住民が自らの意思にもとづいて自ら執行する。これが憲法がうたう地方自治の本旨です。しかし、大規模合併で逆に山村や離島地域の住民は軽視される。憲法と自治を忘れた暴論だ」と批判します。

 呼びかけ人の北海道ニセコ町の逢坂誠二町長もこう強調します。

 「どうやって健全な地方自治をつくっていくのかという議論がなく、ただ規模を大きくすればよくなるというだけ。市町村合併でどんな国をつくるのかが見えない」

 強制合併に対する地方からの“反撃”がうねりになってきました。昨年十二月、岡山県新庄村議会が「小さくても自主自立をめざす」と決議。鳥取県境港市議会が市の存続決議を採択しました。

 全国組織もかつてない取り組みです。このフォーラム直後の二月二十五日には、全国町村会と全国町村議会議長会が、強制合併と小規模町村つぶしに反対する総決起大会を東京で開きます。二つの団体が共同集会を開くのは初めてのことです。


会場 長野・栄村では

 栄村は、フォーラム呼びかけ人の一人、高橋彦芳さんが村長です。人口二千七百、平均積雪量が三メートルをこす豪雪地域。過疎化・高齢化に負けず自立をめざした独自の村づくりで知られます。記者が訪ねた十二月下旬。雪の中、雑穀やキノコ類の出荷に精を出す農家の姿が各所にありました。

 「農業が楽しいさ」。村議もつとめる山本一郎さん(64)は「大規模農家だけを残そうという国の農政のなかで、栄村はどんな小さな農家でも大事にする。だから元気が出る」と胸を張りました。

 山間部の小さな水田を守ろうと始めた、「田直し」と呼ぶ独自の水田整備は全国的に有名です。

 国・県だと十アールあたり二百万円近くかかる事業が、現場に合わせて計画し余計な設計もないので、四十万円以内(半額は村が負担)ですみます。高齢者の増加に対応して、作業負担が軽く安定収入になるキビなど雑穀づくりも奨励。一戸あたり農業粗生産額は二百七十五万円(一九九九年度)で県平均を四十万円上回るまでに成長しました。

 「下駄(げた)ばきヘルパー」も好評です。げた履きで歩ける範囲に介護ヘルパーを組織し、冬でも高齢者を近くの住民が支援できるようになりました。百一歳になる母親が訪問入浴サービスを受けている南雲巳吉さん(72)は「長生きして安心して暮らせる。みんなが大事にされている」と力をこめます。

 「地域循環型の村政」をめざして設立したのが栄村振興公社。経営する温泉施設やキャンプ場など各施設で使う資材はできる限り村内で調達。約三億円の売り上げの七割は村内に還元され、地域経済を支えています。

 高橋村長は「一人ひとりが輝いて暮らす村づくりが目標です。それには住民と村が力をあわせることが大事。『田直し』も住民と行政の『協働』なんです」と語ります。

 「農山村には、生活や国土、文化を支えるなど効率化だけで計れない価値があります。小規模ゆえに自主的・創造的な行政もできる。自分たちの将来を各自治体で決めるのが地方分権。国や県の干渉はなじみません」

 高橋村政が誕生した八八年から支えてきた日本共産党の広瀬進村議は「村長を中心に小さい村だからできた施策も多い。合併に頼らずとも、展望は開けることを示している」と強調します。


 小さくても輝く自治体フォーラム 逢坂誠二(北海道ニセコ町長)、根本良一(福島県矢祭町)、黒澤丈夫(群馬県上野村)、高橋彦芳(長野県栄村)、石川隆文(福岡県大木町)の五町村長が呼びかけました。二月二十二日から二日間、栄村で開催。田中康夫知事の記念講演やシンポなどを予定しています。


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