2002年12月27日(金)「しんぶん赤旗」
【ウィーン26日岡崎衆史】国際原子力機関(IAEA)は二十六日、北朝鮮が同日までに、同国寧辺の黒鉛減速炉(五千キロワット)の施設に、約千本の燃料棒を搬入したことを明らかにしました。装てんはまだしていません。北朝鮮は燃料棒を、二十五日に四百本、二十六日に六百本搬入しました。
原子炉稼働に向けた北朝鮮側の強硬な態度に直面したIAEAは、来年一月六日に緊急理事会を開催し、対応を協議します。
IAEA側は、黒鉛炉の稼働は一カ月以内で可能だとして、再稼働に向け本格化する動きに懸念を強めています。
一方、核兵器製造に直結するとしてIAEAが最も警戒している燃料再処理施設、放射化学研究所では、再稼働に向けた新たな動きは今のところ確認されていないといいます。
北朝鮮側は十二日、電力供給などを理由に核施設の稼働を宣言。二十四日までに寧辺にある核施設のうち、黒鉛炉、核燃料棒貯蔵プールなどで封印を解除した上、IAEAが設置した監視カメラに覆いをかけ、使用不能にしました。プールには全体で八千本の燃料棒が貯蔵されています。
北朝鮮はまた、二十三日には、燃料棒を装てんすることを公式に表明していました。二十四日には技術者を原子炉施設内に入れ、機器の点検など再稼働に向けた準備作業に着手、この作業は二十五日も続けられたといいます。
北朝鮮常駐のIAEA査察官がこれまでの二人から三人に増員されたと韓国で報道されたことについて、IAEA報道官は人員交代で後任が着任し一時的に三人になったと説明しています。
北朝鮮が五千キロワットの実験用原子炉施設に核燃料棒を搬入し、仮に原子炉を実際に再稼働させれば、核兵器の原料に転用できるプルトニウムの生産が可能になるという重大な意味を持ちます。
一九九四年の米朝合意で北朝鮮は、プルトニウム抽出が容易な黒鉛減速炉型の原子炉と関連施設の活動を凍結し、最終的に解体することに合意し、その代わりにプルトニウム抽出が困難な軽水炉原発の提供を受けることを約束しました。原子炉の再稼働は、この国際合意の核心部分を破ることを意味します。
黒鉛減速炉型原子炉の再稼働は、一―二カ月の点検を経て可能になります。手順としては、核燃料棒を原子炉に装てんし燃料を燃焼させ、使用済みの核燃料棒を取り出せば、約一年間の冷却期間の後、使用済み核燃料の再処理施設(放射化学研究所)でプルトニウムを抽出できます。年間で約六キロ(核兵器一個分弱)のプルトニウム抽出が可能だといいます。
北朝鮮は、九四年に施設が凍結されるまでに生じた八千本の使用済み核燃料棒の封印を二十二日に除去しています。仮に、この燃料棒を直ちに再処理施設に送れば、原子炉の再稼働をせずに核兵器用のプルトニウム抽出が可能になります。
北朝鮮側の行為は、みずからの国際的な約束である米朝枠組み合意や日朝平壌宣言(九月十七日)を一方的に踏みにじる、まったく道理がないものです。(面川誠記者)