2002年11月30日(土)「しんぶん赤旗」
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【ローマ29日島田峰隆】ナイロビからの報道によると、ケニア警察当局者は二十九日、同国南東の港湾都市モンバサのイスラエル人経営ホテルで二十八日に起きた自爆テロによる爆発による死者は犯人三人を含め十六人になったと語りました。負傷者は少なくとも八十人に達しています。死者のうち、イスラエル人は子ども二人を含む三人です。
警察当局はまた、これまでに事件との関連で十二人を拘束し、事情聴取していることを明らかにしました。警察は事件発生直後にアラブ系の二人を拘束し、事情聴取を行っていました。当局は「事件に関して有益な情報を持っている可能性のある十人」を新たに取り調べているといいます。新たな容疑者らの国籍は明らかにされていません。
他方、在イスラエルのケニア大使は「この攻撃の背後にはテロ組織アルカイダがいることは疑いない」と発言。イスラエル軍放送は二十九日、自爆テロに加わった三人のうちの一人は、一九九八年にアフリカで起きた米大使館同時爆破テロに関与し、米連邦捜査局(FBI)の最重要指名手配者であるアルカイダ要員アブドラ・アハメド・アブドラ容疑者だったと報じました。
また、ケニアの警察当局によると、同じころイスラエル機を狙ったミサイルは、空港近くのジープから発射されたといいます。
ケニア 東アフリカにあり、国土面積は日本の一・五倍以上、人口は約三千万人。一九六三年に英国から独立。宗教の分布は、キリスト教が70%、イスラム教6%、残りは伝統宗教。公用語はスワヒリ語、実用語として英語が使用され、欧米諸国との関係は緊密。 モンバサ ケニア南東のインド洋に面した海岸に位置するリゾート地。首都ナイロビに次ぐ同国第二の都市で人口は六十万人。中心街は面積約十三平方キロの島で、本土と橋で結ばれ、ナイロビからバス、鉄道の便があります。空港は郊外に。イスラム教徒が多く、街にはモスク(イスラム礼拝所)やアラブ風の建造物が並びます。欧州からの観光客でにぎわい、最近は日本人客も多くなりました。 98年のテロ事件 一九九八年八月七日、ケニアのナイロビとタンザニアのダルエスサラームの両米国大使館で連続爆破事件が発生、ナイロビの事件では二百二十四人(うち米国人十二人)が死亡、五千人以上が負傷。当時のクリントン米政権はこれをアルカイダによるテロ事件と決めつけ、八月二十日、同グループと関連があるとするアフガニスタンとスーダンの施設を巡航ミサイルで攻撃しました。 |
ケニア・モンバサで二十八日発生した自爆テロは、民間人が集まるリゾートホテルを狙った無差別テロです。ミサイル発射を受けたイスラエル機には二百七十人もの民間人が乗っており、もし命中すればその犠牲ははかりしれないものとなっていたでしょう。
世界貿易センタービルを標的にした昨年九月の米同時多発テロも無差別で数千人規模の民間人を狙ったものでした。それ以降、世界各地でテロが頻発し、大使館や軍事施設などに加え、まったくの民間施設が標的となっているのが特徴です。
主なものだけでも、四月十一日、チュニジアのユダヤ教礼拝所近くで起きた爆発テロ(ドイツ人観光客ら十九人死亡)、九月五日、アフガニスタンの首都カブールの繁華街で起きた自動車爆弾テロ(三十人死亡)、十月六日、イエメン沖でフランスのタンカーが爆発炎上した自爆テロ、インドネシアのバリ島のディスコで十月十二日に発生した爆弾テロ(百八十五人死亡)などがあげられます。
今回のテロについていえば、標的となったホテルはイスラエル人の経営であり、イスラエル機へのミサイル発射とあわせ、その狙いがイスラエルに向けられていることは明白です。テロ実行は、イスラエルの右翼政党リクードの党首選の投票開始とほぼ同時刻でした。また翌二十九日は、一九四七年に国連でパレスチナの地をアラブ人とユダヤ人の国に分割する決議が採択されてから五十五年を迎えた日。イスラエルの占領政策に反発する勢力がからんでいる可能性が指摘されています。
この点で米CNNテレビは、今回の自爆テロで爆死した三人の犯人のうち一人が、昨年の米同時多発テロを引き起こした国際テロ組織アルカイダのメンバーだと報じました。九八年にはケニアと隣国のタンザニアにある米大使館爆破事件が発生し、アルカイダの犯行とされています。アルカイダを率いるビンラディンは米同時多発テロの際にも、イスラエルの占領政策と米国のイスラエル支援を理由にしていました。その後、ブッシュ米政権は、アルカイダにつながる勢力がイエメンからソマリア、ケニア一帯に残っているとしていました。
ビンラディンは、十二日にカタールのテレビ局で「肉声」が伝えられ、そこでは今年の一連のテロを称賛し、米の同盟国へのテロ継続を予告していました。(小泉大介記者)