日本共産党

2002年11月26日(火)「しんぶん赤旗」

オーストリア総選挙 第一党は中道右派国民党

政権参加の極右・自由党大敗


 【ウィーン24日岡崎衆史】極右の自由党の内紛による政権崩壊に伴うオーストリアの国民議会(下院)選挙(定数一八三、比例代表制)が二十四日、投開票され、他の政党が得票、議席ともに増やすなか、唯一自由党のみが双方を減らし、大敗しました。オーストリアでは二〇〇〇年二月、移民排斥を掲げる自由党が他の欧州に先駆けて政権入り。選挙は、政権に参加した極右政党への欧州で初めての厳しい審判となりました。


 オーストリア内務省発表の暫定結果によると、自由党は、前回一九九九年の総選挙で得た得票率26・91%、五十二議席から10・16%、十九議席に大きく後退しました。しかし、連立相手の中道右派の国民党は、前回の26・91%、五十二議席から42・27%、七十九議席に躍進しました。双方合わせた得票率は前回をわずかに下回る52・43%、議席は九十八でした。

 一方、野党の社会民主党は前回得票率33・15%、六十五議席から36・90%、六十九議席に、緑の党は7・40%、十四議席から、8・96%、十六議席に伸ばしました。しかし両党合わせて45・86%、八十五議席に留まり、国民党を上回ったものの過半数にたっしませんでした。投票率は80%でした。

 躍進した国民党のシュッセル首相は、「選挙は大成功だった」と結果を歓迎するとともに、「すべての政党と連立協議をする用意がある」と述べました。ただ、社民党や緑の党は連立参加を否定しており、敗北した自由党との交渉次第で、再び国民党、自由党の右派連立が誕生する可能性が強まっています。


解説

「弱者への負担増」に国民反発

 オーストリア総選挙で移民排斥などを掲げる極右「自由党」が大敗した背景には、前回総選挙でこの政策を前面に押し出して政権入りした同党への支持者の失望があります。

 ハンガリーやチェコ、スロバキア、スロベニアと国境を接するオーストリアは、ソ連・東欧の旧体制崩壊後、移民流入など、その影響をもろに受けてきました。自由党は、生活の悪化や失業問題を外国人増加や欧州統合の進展、社民党と国民党の二大政党の癒着のせいにし、「弱者の味方」を訴えて一九九九年の総選挙で躍進しました。

 しかし、同党が加わった政府が実施したのは、無料だった学費や外来診療費の有料化など、「弱者への大幅な負担増」(オーストリア労組連盟)でした。規制緩和・自由化を中心とする経済政策も、不況下の緊縮政策とあいまって、失業を増やし、十月の失業者は昨年同月よりも一万七千人以上増加しました。

 支持者層を裏切った自由党は、政権入り後実施された三度の州議選で敗北。同党実力者のハイダー・ケルンテン州知事らは危機感を強め、減税を主張し始め、これに反対するリースパッサー副首相ら自党の閣僚を辞任に追い込み、政権を崩壊させました。しかし、これは同党への不信を増す結果となりました。

 与党、国民党躍進の要因には、(1)移民規制などで自由党と共同歩調を取り自由党支持者を取り込んだ(2)選挙前の連立崩壊で政権への不評を自由党に転嫁できた(3)福祉改悪に反対する社民党など野党が財政的な根拠を説明しきれなかった―などが挙げられます。(ウィーンで岡崎衆史)

 


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