日本共産党

2002年11月26日(火)「しんぶん赤旗」

不良債権処理加速策に米の戦略

4つの証拠生々しく

大門議員が解明


 倒産と失業を激増させる小泉内閣の不良債権処理加速策。その背景に投資銀行や投資ファンド(基金)の意向を受けた米国の対日経済戦略がある――。日本共産党の大門実紀史議員は、二十五日の参院予算委員会でこの問題を日米経済交渉の経過と証拠を突きつけ明らかにしました。

米シンクタンクの「対日経済指針」は

 大門氏がまず取り上げたのは米国のシンクタンクである「外交問題評議会」の「(ブッシュ)新政権のための対日経済指針」です(別項1)。このシンクタンクは、米国の外交方針に多大な影響力をもち、竹中平蔵金融・経済財政担当相も「有力なシンクタンク」と認める機関です。

 「対日経済指針」は、ブッシュ新政権の求めに応じて二〇〇〇年十二月に出された対日経済政策マニュアルですが、その内容は「(米国系の)投資銀行やファンドのビジネス戦略」(大門氏)です。「(日本の不良債権処理は)外国企業にとってまたとない参入のチャンスが到来」するとして、ブッシュ政権が日本に不良債権処理の促進と直接投資の改善の「圧力」をかけるよう求めています。その後、ブッシュ政権はこの「対日指針」通りに動きだしました。

米大統領が送った小泉首相への親書は

 二つ目の証拠は、ブッシュ大統領から、今年一月十七日に小泉首相に送られた「親書」です(別項2)。不良債権を処分し、「最も効果的に資産を活用できる人たち」にゆだねるように求めています。ここで「最も効果的に資産を活用できる人たち」というのが、主に米国系の投資銀行やファンドを指していることは明らかです。

 大門 本当にこの親書を受け取ったのか

 首相 親書は親書。どういう親書かをいうべきでない。しかし、不良債権処理については米国も関心をもっているのは事実だ

 首相は、不良債権処理を求めるブッシュ大統領からの親書の内容を否定しませんでした。

元と現の大統領が親子で売り込み

 証拠の三番目は、日本の不良債権処理を「ビジネスチャンスだ」と見ている外資の動きです。

 ブッシュ大統領の父親で、投資ファンドの一つであるカーライル社の顧問であるジョージ・ブッシュ元大統領が、同社のメンバー数人とともに六月に訪日。同社の資金集めのために日本政策投資銀行など出資候補先とも面談しました。その三カ月後の十月一日、「カーライル・ジャパン」に、同行は四十億円の出資を決定しました。

 大門氏は「元大統領と現大統領が投資ファンドの売り込みをやっている」と指摘。その外資が日本で何をやろうとしているのか。「(長銀のようにまた大手銀行を買う意思があるかと問われて)もちろんある。われわれのノウハウは金融庁も必要とするだろう」(コリンズ・リップルウッド最高経営責任者)などと報道された発言を紹介しました。大門氏が直接聞いた、ある外資のアナリストは次のように話しています。

 「米国系の投資銀行というのは、韓国の不良債権処理で仕事が一段落した。あとは日本で本格的に仕事がしたい。そのためには、もっと銀行を追い込んで、不良債権を吐き出させる。追いこみすぎて銀行まで破たんしたら、その銀行も外資の投資銀行が買い取る。こんな話は外資の間では当たり前の話で、知らないのは日本の国民だけだ」

処理加速策の手法は米注文と「うり二つ」

 証拠の四番目は、アメリカからの異常なまでの要求を背景にして出てきた不良債権処理の加速策そのものです。その手法はハバードCEA(米大統領経済諮問委員会)委員長や、テーラー財務次官など米国政府高官からの注文と「うり二つ」です。

 これらの証拠を突きつけられた小泉首相は、「不良債権処理は、構造改革の一つの柱。アメリカにいわれたからやっているんじゃない」とのべる一方、「日本の経済力がしっかりすることによって、日本の役割が発揮される。アメリカ自身の考え方としてのべるのは、日本としても歓迎すべきことだ」と答弁しました。


大門議員が紹介した資料

 〈別項1〉

 ▽米国の有力シンクタンク「外交問題評議会」の「ブッシュ新政権のための対日経済指針」(二〇〇〇年十二月)

 「多くの日本企業や金融機関が、倒産の瀬戸際に追い詰められ、外国の資本や専門的な知識を求めるようになった」「外国企業にとってまたとない参入のチャンスが到来している」「日本政府に不良債権処理の促進と、海外からの直接投資の受け入れ環境の改善を求めるべき」「日本のマクロ政策について相当な要求を公然と突きつけても、日米安全保障関係を守るため、日本が拒否するとは考えにくい」

 〈別項2〉

 ▽ブッシュ大統領からの親書(「朝日」二月二十八日付夕刊)から抜粋

 首相は私に語ってくれた。友人からの助言は「外圧」とは思わない、と。これは友人としての助言として受け取ってほしいが、首相には、銀行の不良債権や企業の不稼働資産の問題の解決に向けて、まい進を続けてもらいたい。

 日本政府が銀行検査を強化するなどの措置をとってきたことは喜ばしい。しかしながら、銀行の不良債権や企業の不稼働資産が、早期に市場に売却されていないことに、強い懸念を感じる。

 私は、日本が不良債権を処分し、(塩漬けになっている)資金や企業の不稼働資産を解き放ち、最も効果的に資産を活用できる人たちの手に委ねて、機能を回復させることが必要だと信じている。もし、迅速に行動すれば、市場や米国の友人、世界中の人々に対して、日本が本当に構造改革や景気回復への道筋をたどろうとしているシグナル(合図)になるだろう。


日米政府のおもな動きと不良債権処理策の推移 

 2000年
12月  米国「外交問題評議会」が「新政権のための対日経済指針」を提言
 2001年
3月19日 森・ブッシュ会談。森首相(当時)が「不良債権処理を急ぐ」と約束
4月6日 森内閣が「緊急経済対策」を発表
6月21日 小泉内閣が「骨太方針」発表。最重要課題が「不良債権の早期最終処理」
6月30日 日米首脳会談。共同声明に不良債権処理をすすめる上で、「外国からの直接投資の促進が重要」と明記
 2002年
1月17日 ブッシュ大統領から小泉首相あてに極秘扱いの「親書」
6月17日 ジョージ・ブッシュ元大統領来日
9月12日 日米首脳会談。小泉首相は「不良債権の処理を加速する」と決意表明
  30日 内閣改造。竹中大臣が金融担当大臣を兼務
  同日 ハバードCEA委員長は、竹中大臣の兼務に歓迎の意向を示す
  22日 テーラー米財務次官(日本記者クラブの講演)。日本における投資ファンドなどの成功例をあげ「それに見習って企業再生をすすめるべき」だと主張
  同日 不良債権処理の「加速策」の中間報告が見送りに
  23日 ハバードCEA委員長、中間報告公表が先送りされたことに、「改革の失敗は日本経済に極めて重い負担を課すことになる」と警告
  30日 小泉内閣が不良債権処理加速のための「金融再生プログラム」を発表

 


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