日本共産党

2002年11月24日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

少人数学級

どの子も主役 全学年に広げて

 長年の住民運動と日本共産党のとりくみが実を結んで、「少人数学級」に踏み出す自治体が広がりました。「わが町の学校でも少人数学級を」と運動する人たちを励ましています。


教室の雰囲気変わった

岡山

 岡山県は五クラス以上ある中学校の一年生で、三十五人以下学級に踏み切りました。

 岡山市立京山中学校の一年B組の社会科の授業では、三十四人の生徒が六グループに分かれて、県の歴史や文化、伝統工芸など調べていました。「先生! この水車のある神郷町って、どの辺」。次々と出される質問に答えながら、教師が生徒の机を回ります。

 「三十五人学級になって、教壇に立ったときの感じが全然ちがいます。一人ひとりの生徒の顔が、よく見える」と話すのは学年主任の川ア肇教諭(48)。国の標準である四十人学級では、教室に生徒が詰め込まれ、狭い机の間を歩くのもままならないといいます。

 同市立操山中学校は、一年生一クラスが平均三十二人に。社会科と理科では、一クラスを二組に分けた少人数授業も取り入れています。

 理科の教師のアンケートに、生徒たちは「いつもは手をあげられない自分でもあげられた(人が多いとあげにくい)」「アットホームな感じ」「先生が近いって感じ」「一人ひとりに教えてくれる」と好評です。

 國塩通雄校長(59)はいいます。「少人数学級では、どの子も主役になれると先生たちは話しています。親子懇談や家庭訪問でも、先生が、ゆとりをもって、一人ひとりに対応できる。すべての学年、すべての学校で少人数学級を実現してほしい」

 岡山県では、父母や教師たちでつくる「高校・障害児教育を良くする県民の会」や「私学助成をすすめる会」が三十人以下学級の実現を求めて、毎年四十万人をこえる署名をそえ、県議会に請願してきました。

 自民党が多数をしめる県議会が、この請願を毎年継続審議にして、県民の願いに背を向けるなか、日本共産党の三人の県議団は、三十人学級の実現を求めてきました。

 九月県議会で、武田英夫県議は、踏み出した三十五人学級の成果をふまえ、「三十五人学級の拡大と三十人学級の実現に踏み切るよう、知事の英断を」と迫りました。

 石井県知事は、今後も教員の配置改善を支援したいと答えています。 (岡山県・宮木義治記者)


3000万署名、請願が力に

福島

 福島県では、本年度から小学一年と中学一年で三十人以下学級が実現しました。小学二年についても来年度から実現することが決まっています。

 県は三十人以下学級に対応するため、本年度、県単独予算(約十八億円)で四百九人を常勤講師として採用しました。

 ことし小学一年生になった子どもを持つ佐藤晃子さん(31)は入学前、「個性豊かなうちの子には少人数学級がいい」と思っていました。三十人以下学級が実現して、佐藤さんはほっとしました。

 「実現して本当によかった。子どもも広い教室で、のびのびと元気にやっているようです。ただこのままだと三年になるとき四十人学級に戻ってしまいます。全学年での実現に向けて運動しないと」といいます。

 長い間三十人学級実現を求め、実現の引き金となった議会請願を出した全国三千万署名福島県実行委員会(伊藤洋実行委員長)は今年一月十五日、高城俊春県教育長に申し入れをおこない、全学年での実現や、増員分の正規教員での採用などを求めました。

 日本共産党県議団は、前回のいっせい地方選挙で三人から五人に躍進、商労文教委員会に委員を出せるようになり、論戦を強め、県の決断を促す引き金となった三十人学級実現を求める請願を全会派一致で採択させることができました。

 党県議団は今月十三日、十二月議会に向けて知事への申し入れをおこない、三十人以下学級の全学年実施、とくに今年中学一年だった学年が四十人学級に後戻りしないために、中学二年での早期実施を求めました。

 阿部裕美子県議は「県教委の計算で、現中学二年生を三十人以下学級にする場合、約十二億円で可能です。八百五十億円の小名浜東港第一期工事など不要不急の大型公共事業に比べれば、わずかな予算で実現が可能です」と話しています。 (福島県・町田和史記者)


解説

世論に押され政府が容認

自治体の負担 国は財政措置を

少人数学級は本年度、前年度の八県・政令市から、二十二道県・政令市へ大きく広がりました。来年度以降、栃木県や徳島県、京都市、愛知県犬山市などが検討を進めており、自治体での少人数学級の流れはいっそう加速しそうです。

 その背景には、少人数学級を求める国民の世論と運動におされて、政府・文部科学省が、自治体独自の少人数学級を容認する方向へ大きく変化したことがあります。

 昨年六月、日本共産党など野党が「三十人学級法案」を共同提案して、国の責任による少人数学級の実現を迫りました。

 法案は自民党、公明党など与党の反対で成立しませんでしたが、政府・文科省のその後の容認方針につながりました。

 日本教育学会が実施した教育委員会アンケート(一九九九年)では、学級規模の縮小が必要と認めた教委は都道府県で半数以上、市町村で九割以上でした。

 問題は財源。先のアンケートで国に財政負担を求めた教委は、都道府県・市町村とも九割を超えました。多くの自治体は必要性を感じながらも、財源問題で二の足を踏んでいます。

 実施に踏み切った多くの自治体も、対象を小学校低学年や学級数の多い大規模校などに限定したり、教員の増員分を「非常勤講師」でまかなったり、増員せずに対応するなど課題も多く残されています。

 すべての自治体が少人数学級に踏み切れるように、国は必要な財政措置を講ずるべきです。

 ところが、小泉内閣は、国の財政支出を減らすために、教職員給与の半額負担など義務教育費の国庫負担制度の削減・廃止を狙っています。

 自治体の決断で実施できる条件が広がっているもとで、「わが町の学校でも少人数学級を」の運動がとても重要になっています。あわせて、国に「義務教育費国庫負担制度を守り、充実せよ」「国の責任で少人数学級を」と迫ることも大切になっています。(地方部・村崎直人記者)

本年度、少人数学級を実施した県・政令市
北海道小1のモデル校で35人以下、一部の高校で30人以下
青森県小1、2で33人以下、一部の中1と高校で35人以下
秋田県小1、2、中1で30人程度
山形県小1〜3で33人以下(04年度までに小学校全学年で実施計画)
福島県小1、中1で30人以下、一部の高校で35人以下(03年度小2も)
茨城県一部の小1で35人以下
埼玉県一部の小1、2、中1で38人以下一部の高1、2で30人程度
千葉県一部の小1、2で38人以下
新潟県小1、2で32人以下
長野県実質的に小1で30人程度(03年度小2も)
名古屋市小1で30人以下
福井県一部の高校で35人以下(05年度までに全校実施を計画)
岡山県一部の中1で35人以下
広島県一部の小1、2で35人以下
鳥取県小1、2で30人以下
山口県中1で35人以下
愛媛県一部の小1、中1で35人程度
香川県高校専門学科で35人以下
高知県一部の高校専門学科で35人以下
宮崎県小1で30人以下
鹿児島県一部の小1で少人数
沖縄県一部の小1で少人数

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp