2002年11月22日(金)「しんぶん赤旗」
失業、倒産、多重債務と経済的苦境に陥って住まいを失う人が増えています。住まいは生活の基本。ひとびとの住まいを見つめる街の不動産屋さんの目は――。
ある日曜日の朝。西條八郎さん(60)は横浜市の店で客を待ちます。やって来たのは初老の男性。家賃の安いアパート探しでした。会社が倒産し失業。預金通帳と印鑑を預けていた社長は失そう。社宅に一人で暮らしていましたが、出るはめになったといいます。「本人も気の毒だけど、社長もつらかったんですよ。資金繰りに困って…」と、ため息をつく西條さん。
午後はマンションのローンが払えなくなった人からの相談。「ローンの滞納は四十代の人が多い。大企業に勤めているからと、安易に融資を受けたものの、減給やリストラで払えなくなる」
「生活相談八割、仕事が二割」と西條さん。近ごろの悩みはアパートの家賃滞納。「滞納は十件に一件の割合。失業した五十代の独身者が多い。学生もめだつ。聞くと『親が商売をたたみ仕送りが途絶えた』といいます」
失業や銀行の貸しはがしにあい、サラ金に手をだし多重債務に陥り相談にくる人が後を絶ちません。西條さんは、店舗、工場を整理して生活再建の手助けをします。
「コツコツ自分の仕事だけに打ちこんできた人たちですから、まさか銀行や商工ローンが悪いとは知らない。借金を返すため別のサラ金から借りて身動きできなくなる。そんな人を目の前にして救わないわけにいかないじゃないですか」
西條さんは新潟から集団就職で上京。おもちゃ工場を振りだしに十三の職場で働き、夜学の高校、大学をでました。自分のことを「街の十手持ち」といいます。「神田明神下の銭形平次。刀はもたない。しかし、経験と知識、人脈を駆使して庶民を守ります」
「街の十手持ち」は各地にいます。やはり、多重債務者の生活再建の手助けをする、埼玉県川口市の岸波勇規範さん(52)。「川口生活と健康を守る会」事務局長の柳田雅久さん(62)とコンビです。「債務が多ければ最後は不動産を整理せざるをえません。自宅を失っても、生活の場は確保してあげないと」
岸波さんは「金を貸す方が悪い。銀行は表から貸さずに裏に回れと、系列の金利が高い消費者ローンに借りさせる。解雇を野放しし、貸しはがしを進める小泉内閣が悪い」。その目は社会の苦しみの根源をしっかり見すえています。
声の大きさで負けないのが横浜市の仲宗根保さん(52)。「不動産会社をたたまず、がんばれるのは民商のおかげです」。最盛期には二十六人いた社員がバブル崩壊で一人に。九五年、資金繰りに困り果て、神奈川民商の「無担保無保証人の自治体融資」というビラに救われました。
いまも以前の負債をひきずり生活は苦しい。しかし、休日の水曜日には必ず民商の事務局に。相談会や宣伝カーで「困ったことがあれば何でも相談してほしい」と呼びかけます。「苦労をした分、業者の苦しみが一番わかるから」。いまでは同民商の会長です。(海老名広信記者)
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家賃滞納による明け渡しをめぐる訴訟は年々増えています。しかし、「明け渡しで裁判までいくのは少ない」のです。「裁判までして解決するのに約六カ月かかる。高齢の家主は裁判所に通うのが物理的精神的に苦痛。それより、引っ越し料などの面倒をみて出てもらい、すぐ次を入居させたほうが得」と、東京都内の不動産業者(67)は打ち明けます。