日本共産党

2002年11月21日(木)「しんぶん赤旗」

イラク問題での松井芳郎名大教授の陳述(要旨)

一方的な武力行使は国際社会の努力に逆行


 十五日の衆院外務委員会でのイラク問題に関する参考人質疑で、松井芳郎名古屋大学教授が行った陳述(要旨)は、次の通りです。

 国際社会では、二十世紀に入って戦争や武力行使を違法化する努力がおこなわれ、国連体制はそのクライマックスをなすものでした。国連憲章のもとで武力行使や武力による威嚇は全面的に禁止されていますが、例外が二点あります。

 一つは自衛権の行使であり、もう一つは国連による集団的安全保障の強制措置です。

 自衛権の概念も伝統的にはさまざまに解釈されてきましたが、国連憲章五一条で厳しく制約されています。武力攻撃が発生した場合にのみ自衛権の行使が認められ、「武力行使のおそれ」だけでは先制的攻撃の自由は認められないというのが、圧倒的多数の学者の解釈であり、国連の慣行でも確認されてきました。

 主観的な「おそれ」だけではだめです。主観的要素を入れると必ず乱用の危険性が生じます。

 イラクの大量破壊兵器の保有疑惑が問題になっていますが、仮に軍縮義務に反して禁止された武器を保有していても、それだけで、武力行使ができるわけではありません。

 軍縮義務に反する武器を保有していることが平和に対する脅威を構成することはありえます。そして、それに対する強制措置を取ることはありえますが、脅威を認定するのも、強制措置を統括するのも国連安保理です。

 米国の当事者は、イラクが安保理決議一四四一に違反した場合は新しい決議なしに武力攻撃は可能といっていますが、どの角度から見てもそのような内容は含まれていません。

 第一に、集団的安保体制のもとで平和の脅威を認定するのは安保理であって個々の加盟国がこれに取って代わることはできません。

 第二に、決議の内容も集団的安全保障の基本線に沿ったもので、イラクの重大な義務違反は国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)と国際原子力機関(IAEA)が安保理に報告し、安保理はただちに会合を開くことになっています。違反の最終的な認定は安保理がおこなうのです。

 第三に、圧倒的多数の加盟国もそのような見解を取っています。フランス、ロシア、中国の三常任理事国をはじめ、安保理が中心的な役割を果たすべきだといっている。

 もちろん、決議一四四一には複数の解釈の余地が残されていますが、もし一方的な武力行使が可能だという解釈をとると、武力行使を違法化してきた国際的な努力に逆行し、十九世紀的な、ジャングルの法則が支配する世界になってしまうでしょう。

 


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