2002年11月20日(水)「しんぶん赤旗」
「まさか」「信じられない」――自民・公明・保守・社民がおす現職の三角保之氏(62)が、無所属新人の幸山政史氏(37)に一万六千票の差で敗れた熊本市長選(十日投票)。市民が下した「オール与党」市政へのきびしい審判は、自民党市議団の四人が県連役員を辞職したのをはじめ、「オール与党」陣営に深刻な衝撃を与えています。(熊本県・西田純夫記者)
初当選した幸山陣営では、ある関係者が選挙の勝因について「候補者と支援する人たちの思いが一致した。それぞれが主役となってねずみ算式に増えた」と語ります。さらに、「情報公開でも、資料を見せたら終わりでなく、市民が納得できないと本当じゃない。市長を中心に市民に向いた行政が必要なんです。それが(三角氏には)欠落していた。(幸山氏には)聞く耳があったし、若さと行動力もあった。それが支持された。市政は市民のものです。市議会もこの認識を持ってもらいたいですね」と指摘します。
自民党県議だった幸山氏が出馬を表明したのは九月。自民党を離党して記者会見にのぞみ、県政の最重要課題となっている川辺川ダム問題で「住民討論集会に参加し、建設推進の党方針と私の考えが異なってきた」(「西日本」九月十四日付)と表明。熊本市政上で大きな問題となってきた市長交際費、多発する職員の不祥事、三角市長と一部議員、企業との癒着・なれあいに関しても、市長交際費や食糧費の100%公開、住民投票条例の制定、口きき政治の徹底排除などをうたい、「徹底した情報の公開と住民参加の促進」「三十人学級」などを公約として掲げました。
この公約に、多くの市民グループが期待を寄せ、勝手連的に支援しました。
川辺川を守ろうと活動している市民グループの主婦(49)は、こんどの選挙戦をこう振り返ります。
「三角さんの三選は市民の恥と思っているときに、幸山さんが勇気ある決断をしてくれたんです。普通の生活をしている市民が、それぞれの立場で動きました。なによりも、自然破壊など大変な問題になっている川辺川ダム建設について、キチンと見る姿勢を持つ市長が誕生したことはうれしいことです。それから、共産党が、党にこだわることなく、熊本市を良くしようという立場で現実的な判断をしてくれたのはありがたいですね」
日本共産党は、今回、熊本市政の基本政策を発表するとともに党市議団が実施したアンケートに千五百通を超える回答が寄せられ、市民の大多数が「三角市政をなんとしても変えたい」と願っていることから、幅広い団体・市民が力を合わせてたたかうことのできる候補者擁立をめざしていました。
このもとで、幸山氏の公約や政策、政治姿勢を総合的に検討した結果、「一致しない点もあるが重要な点では一致している点も多く、全体として前向きの変化が期待できる」と表明(十月二日)。独自候補を擁立せず、三角市政の問題点を徹底的に明らかにする立場で選挙戦にのぞみ、幸山氏に対して自主的に支援するとの態度をとりました。
党市議団と熊本地区委員会は、これまで三角市政の八年間、一部企業・議員との癒着・なれ合い、「公私混同」の市長交際費など、市民団体とも力を合わせて追及してきた成果を生かし、「市民本位の市政への転換を」訴えるビラ二種類二十万枚を配布しました。
これにたいし、三角陣営は選挙の出陣式から、「相手候補は共産党に支援されている。市政をまかせていいのか」と反共攻撃。三角氏自身も、公約や政策はそっちのけで「共産党のチラシが二十万枚も配られているが、その内容を見て怒りを感じた」「ウソばかり書いてひぼう中傷している」と演説しました。
公明党も、約千人を集めてひらいた市党員大会で、鈴木弘幹事長が「共産党は党勢拡大のためには何でもする党。そんな党の実質支持を受ける新人を勝たせるわけにはいかない」(「熊本日日新聞」六日付)と攻撃。さらに拉致問題を使った日本共産党攻撃のビラ(公明新聞十一月号外)を配布するなど、「公明党、創価学会が最終盤にフル回転」(「熊本日日新聞」十一日付)しました。
日本共産党は、対話で反共攻撃に反論するとともに、拉致問題での公明党攻撃に反論する「赤旗」号外を配布するなど反撃。三角陣営の攻撃は「聞くに耐えない内容で、あれはむしろ逆効果だったんじゃないか」(「西日本」十三日付)という状況が生まれ、「市政を変えたい」と願う市民には通用しませんでした。
三十人学級の運動をすすめてきた正岡やよいさん(50)は、「幸山さんの公約に期待して支持しました。市民のたたかいの勝利です。すぐには三十人学級が実現しないかもしれませんが、私たちもいっそう運動をつよめていきたい」と話しています。