日本共産党

2002年11月20日(水)「しんぶん赤旗」

「限度を超えた退職勧奨は違法」の判例とは?


 〈問い〉 リストラで行われる転籍・退職強要は違法とした判例があるそうですが、どんな判決ですか。(愛知・一読者)

 〈答え〉 いま大企業の職場では、ほんらい本人の希望にもとづくべき「希望退職」や同意が必要な「転籍」を、たび重なる呼び出しなど人権無視の圧迫を加え、強要するやり方が横行しています。別会社化で、雇用契約の承継も無視した労働条件切り下げを行い、転籍・退職を迫る手口も現れています。

 しかし、こうした“同意の強要”は違法であることが、一九八〇年の最高裁判決で確定しています。昨年も住友金属が、分社化した製鉄所に社員九千人の転籍を強要しましたが、十一月に日本共産党の小沢和秋衆院議員がこの問題を追及すると政府も違法性を認め、会社は謝罪して撤回しました。

 退職強要の違法性を確立した裁判は、下関商業高校事件と呼ばれ、一九七〇年、同校教師に各十数回にわたる出頭命令などで退職を迫った山口県下関市教育委員会にたいし、教師二人が精神的苦痛などの賠償を求め、提訴したものです。裁判所は、被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況では、その退職勧奨行為は限度を超え違法な権利侵害となるとし、市に損害賠償を命じました。勧奨の回数や期間、言動、勧奨者の数、優遇措置の有無などを総合的にみて、違法性を認定しています。

 二〇〇〇年二月、神奈川労働基準局は、この裁判で示された判断基準を五項目にまとめ、日本鋼管の転籍・退職強要を指導しました。

 五項目には、(1)出頭を命ずる職務命令の繰り返し(2)はっきり退職しないと表明したのに、新たな条件提示などもなく、勧奨を続ける(3)勧奨の回数や期間が、事情説明や優遇措置など退職条件交渉に通常必要な限度を超える(4)精神的苦痛を与えるなど自由な意思決定を妨げる言動(5)立会人の認否、勧奨者の数、優遇措置の有無などに問題がある場合―があげられています。

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 〔2002・11・20(水)〕

 


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