日本共産党

2002年11月16日(土)「しんぶん赤旗」

「税制改革」女性には

配偶者特別控除の廃止 自立進めるってホント?

石井郁子日本共産党女性委員会責任者に聞く


 政府の税制調査会は、「男女共同参画社会の形成の観点から」として配偶者特別控除の廃止、配偶者控除の見直しを打ちだし、検討をすすめています。政府の「税制改革」をどう考えたらいいのか、それは女性の生活や生き方にどうかかわってくるのか、日本共産党の石井郁子女性委員会責任者に聞きました。


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 ――政府の「税制改革」では、女性にかかわるどんな問題がだされているのですか。

 石井 今回の税制調査会で検討の対象になっているのは、配偶者特別控除と配偶者控除です。所得税や住民税を納めるときに、いろいろな控除がありますよね。生計をともにする妻(あるいは夫)の合計所得金額が一定額以下の場合、夫(あるいは妻)の所得から年間三十八万円の控除があるのが「配偶者控除」です。それに加えて「配偶者特別控除」があります。これは専業主婦や妻の年収が百四十一万円未満の世帯が対象となっています。

 配偶者特別控除は一九八六年にマル優制度が廃止されたときに、「中堅サラリーマン重視」「内助の功に報いる」として導入されました。そういう経過もあり、確かに、「サラリーマンの専業主婦だけの優遇は不公平」という意見もありますし、将来的には検討や改善が求められる問題も含んでいます。配偶者特別控除を見直すのであれば、基礎控除や家族控除を増やすなどの方法が必要となるでしょう。

控除廃止は生活を直撃

 ――配偶者特別控除、配偶者控除の廃止、見直しでどういう影響があるのですか。

 石井 配偶者特別控除は千二百万世帯が影響をうけます。配偶者控除でみると千五百万世帯です。四人家族で年収五百万円のサラリーマン世帯でみると、二つの控除の廃止で所得税、住民税あわせて約八万九千円の増税になります。ここにはサラリーマン世帯だけでなく、二百万をこえる自営業、農業の世帯も含まれています。長期不況で国民生活が深刻な影響をうけているなかで、所得税・住民税の増税をすすめることは、家庭の生計基盤を壊すものです。

 ――今回の政府の見直しに対して、「女性の自立」促進策だという意見もありますが。

 石井 小泉内閣の「構造改革」で、リストラ「合理化」、倒産、失業が促進され、低賃金で無権利な不安定就労が広がっています。女性の「自立」自体が困難な状況に置かれています。

 専業主婦が働くことを希望してもなかなか仕事がありません。厚生労働省の調査では最初の出産をきっかけに三人に二人が仕事をやめています。保育施設がなく保育園の入所を待っている子どもが四万人もいます。高齢者の介護ももっぱら女性の肩にかかっています。世界でも異常な男性の長時間労働のもとで、女性が育児や介護を担わなければ家庭がなりたたない、自立したい女性の後押しをする制度的保障が貧困というのが日本社会の現実です。

 「女性の自立」を妨げている主要な原因は、税制というより、こうしたところにあるのではないでしょうか。これらの解決こそ、まず求められますね。

グラフ

 配偶者控除…妻の年収が103万円以下の場合、夫の所得から年間38万円が控除されます。
 配偶者特別控除…妻の年収が141万円未満の場合、夫の所得(年1000万円以下に限る)から年間38万円を上限とする控除が段階的に適用されます。
 妻の年収が70万円未満なら合わせて76万円を控除できます。

女性の要求逆手にとり

 ――なぜ配偶者特別控除廃止などの問題がだされたのでしょうか。

 石井 国民、女性に広く負担をさせ、とりやすいところからとって、大企業を優遇するというのが政府の本音です。政府は「借金漬け財政の上、少子化で働き手がさらに減る十年、十五年先の社会を考えた時に、皆で負担し、支え合う社会にしなければ、日本はもたない。もちろん、税制だけでなく、年金制度も変え、子育ての社会化も進めなければならない。この改正は、政府の『女性も働いて税を納め、社会を支えてほしい』というメッセージだ」(石弘光政府税調会長、「毎日」9月14日付)といっています。

 女性たちは社会のいろんな分野で力を発揮し、自立を望む願いも強いものがあります。ところが、この要求を逆手にとって、少子化社会、高齢化社会に対応する労働力づくりのために、低賃金の女性を活用しようという戦略を見逃すわけにはいきません。

負担増反対力あわせて

 ――女性たちの運動で大切なことは。

 石井 私は、一人ひとりの女性がどう社会とかかわるかというのは、個人の生き方の自由な選択の問題と思います。「働いて自立せよ」と国策でいうのは、かつて「女性は家庭へ」のやり方を思い起こさせます。「男女共同参画」という名のもとで配偶者特別控除の廃止などの負担増をすすめることは、働いている女性と専業主婦、パートで働いている女性の共同のたたかいの分断にもつながります。

 政府がすすめようとしている方向は、課税最低限の引き下げ、消費税の税率引き上げ、外形標準課税導入など、庶民いじめの増税路線です。国民負担増をはね返してこそ、憲法が保障する生存権の原点にたった税制度――最低生活費に課税しない、生活費非課税原則の実現に道をひらいていくことができます。

 女性の税制などで将来のあり方にはさまざまな意見があり、国民的な議論はこれからも必要ですが、いま大事なことは国民負担増反対の一点で女性が力をあわせることではないでしょうか。同時に、賃金底上げや男女賃金格差をなくすこと、パートの均等待遇の実現、労働時間を短縮し社会保障を拡充するなど、女性も男性も仕事と家庭が両立でき、自立できる社会にするための共同を広げることも大切ですね。

 


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