日本共産党

2002年11月12日(火)「しんぶん赤旗」

特殊法人改革 こうして

春名議員が迫った“3つの方向”


 「特殊法人の衣替えがほとんどで、肝心の中身の改革がない。逆に改悪している」―。ムダと利権の部門を廃止することをはじめ特殊法人改革をすすめる日本共産党の提案を対置して、小泉純一郎首相に迫った春名直章議員の十一日の質疑(衆院特殊法人改革特別委員会)。天下り禁止や国民生活部門の充実を求める場面では、他の野党席からも拍手がおきました。

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質問する春名直章議員=11日、衆院特殊法人改革特別委員会

ムダな部門の廃止

石油公団は“衣替え”だけ

 春名氏がまず主張したのは、本来、企業や業界の責任と負担でおこなうべき事業を肩代わりしたり、大企業への補助金ばらまきになっている部門など「ムダと浪費の事業をきっぱり廃止・縮小する」ことです。

 その象徴ともいえるのが石油公団です。石油公団の「廃止」は、小泉首相が「着実にすすんでいる」改革の例としてあげてきたもの。七月に成立した石油公団「廃止」関連法によって、公団は独立行政法人・石油天然ガス・金属鉱物資源機構(金属鉱業事業団と統合)に移行します。

 小泉首相が「廃止という線でやっている」と答えたのにたいし、春名氏はムダ遣いが温存され“衣替え”しただけであることを明らかにしました。

 石油公団は、石油発掘に成功しなければ民間会社に融資した資金を返さなくていいという「成功払い制度」によって一兆二千億円もの資金をムダにしました。

 ところが、新しくできた独立行政法人が、石油会社による銀行からの借入金に「債務保証」をおこなう制度を受け継ぎ、開発に失敗しても国民の税金を使って大手石油会社を支援する仕組みが温存されています。

 春名氏は「これでは国民の批判にこたえられない。廃止は看板倒れだ」と批判しました。

 石油公団だけではありません。東京湾アクアラインなど採算のメドもない事業に巨額の資金を投入してきた日本政策投資銀行、環境破壊と批判される岐阜県徳山ダムなどダム建設の十三事業(水資源公団)、一兆五千六百億円もの浪費となる関西空港の二期工事(関西国際空港株式会社)などはそのまま存続されます。

 春名氏は「こういう分野こそ廃止・縮小すべきだ。ここにメスを入れるのが本当の改革だ」と強調しました。

天下りは禁止

「民営化」では解決しない

国土交通省幹部の「道路公団」への天下りの一例
氏名退官時の役職退官後の天下り先離職年
前田光嘉建設事務次官日本道路公団副総裁1967
尾之内由紀夫建設事務次官日本道路公団副総裁1970
高橋国一郎建設事務次官日本道路公団副総裁1976
高橋弘篤建設事務次官日本道路公団副総裁1978
鈴木道雄建設事務次官日本道路公団副総裁1989
佐藤寛政道路局長日本道路公団理事1960
箕輪健二郎道路局長本四連絡橋公団理事1970
山根孟道路局長本四連絡橋公団理事1980
渡辺修自道路局長日本道路公団理事1982
萩原浩道路局長本四連絡橋公団理事1987
藤川寛之道路局長本四連絡橋公団副総裁1995

 もう一つは、高級官僚の「天下り」を禁止することです。

 高級官僚が各省庁から所管の特殊法人に天下りし、高額な給料・退職金を手にする。特殊法人のOBもその子会社などに天下りする。特殊法人からその会社に独占的に仕事が回り、そこから政治献金がでてくる――春名氏は、その典型例として道路公団をとりあげ、国交省(旧建設省など)幹部の天下りの実例を示し(別表)、「民営化でこの天下りの構造にメスが入るのか」とただしました。

 小泉首相は「道路公団についてはいま第三者委員会で審議している。民営化すれば天下りの余地はなくなる」などと答弁。

 そこで、春名氏は「民営化しても天下りがなくならない」として具体的事例を突き付けました。

 道路関係四公団民営化推進委員会で公表された例では、公団の業務の一つ、「調査・測量」業務を受注した七十六社(二〇〇一年度)でみると、OB一人を受け入れた企業の平均受注額が四・二億円、二人は五・六億円、三人は六・九億円、四人が九・九億円、五人が十二・五億円と、天下り数に比例してみごとにふえています。公団本体は借金で苦しいのに、ファミリー企業は潤っています。

 春名氏は「この七十六社がすべて民間企業だ。公団を民営化したら天下りがなくなるというものではない。民営化と天下りは別の問題だ」とのべると、委員会室に「そのとおり」の声が飛びました。

 すでに昨年四月から国の試験・研究機関など五十七の国立機関が独立行政法人に移行しています。マスコミの調査では、新法人の役員数が発足前の幹部相当職員数にくらべて、八割以上の約八十ポストが増えていること、その全役員の九割近くが旧組織からの横すべりや、省庁からの天下り組で占めています(「朝日」四月十四日付)。

 さらに重大なのは、政府が天下りを禁止するどころかいっそう緩和しようとしていることです。

 春名氏は、政府が検討している「公務員制度改革大綱」で、民間企業への天下りについて、現在の人事院という第三者機関が「事前チェック」する制度を廃止し、政治的利害関係の強い所管大臣の一存で天下りが認められるようにしていることを指摘しました。

 これにたいし日本共産党が提案している、公務員や特殊法人役職員の退職後五年間の関連企業への就職禁止、特殊法人役員に占める国の行政機関出身者の比率の制限、特殊法人を渡り歩く「渡り鳥」の禁止などに直ちに踏み出すことを求めました。

生活部門の充実

育英会の“貸金業”化やめよ

 「国民の暮らしや生活を支える部門について、いっそう公共性を重視して充実させることがほんとうの改革ではないか」。春名氏はこうのべて、日本育英会の廃止・見直し問題を取り上げました。政府は日本育英会を独立行政法人にし、そのさい奨学金制度の根本を改悪しようとしています。

 遠山敦子文科相が来年度予算で奨学金予算の増額を要求していると弁解したのにたいし、春名氏は「ふやしたのは有利子の貸し付けだ」と指摘。育英会廃止で、学生と新法人との間に「債務保証機関」を介在させ、奨学金を借りたい学生はその保証機関に年間二万四千円から三万六千円も保証料を払わなければならなくなります。さらに回収業務を民間の業者に委託して取りたてます。

 春名氏は「これは貸金業ではないか。奨学金を教育ローンにする。改革でなく改悪だ」とのべ、くらしを応援するところを拡充するのが本当の改革だと力を込めました。

 独立行政法人とは

 「中央省庁のスリム化」の理由で、国の部門を分離し、独立の法人格をもつものとして設置する公的機関。国費で運営される。所轄官庁が三年から五年ごと業績を評価、財務を公表する。政府は今国会に特殊法人等を主に独立行政法人にする法案を四十六本出している

 


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