2002年11月8日(金)「しんぶん赤旗」
帝京大学の寄付金をめぐる脱税事件で、所得税法違反容疑で逮捕された学校法人「帝京学園」(東京都板橋区)元会長の冲永嘉計容疑者(58)が、同大の入学試験が行われる前に、「預かり金」名目で一部の受験生の親から寄付金を受け取っていたことが七日、関係者の話で分かりました。
東京地検特捜部は、寄付金集めの詳しい経緯など、脱税工作の全容解明を進めています。
調べによると、冲永容疑者は入試前に、同大受験生の親に対し、合格した場合の寄付金の支払いを打診。これに応じた七人の親から総額五億数千万円の支払いを受けました。
寄付金を支払った七人の大半は、大学側から冲永容疑者を通じて、発表前に合格の通知を受け、同容疑者の指定する口座に寄付金と仲介料を併せて振り込んでいました。
しかし、一部の親は冲永容疑者との間で金額を決めた入試前の時点で入金していたといいます。名目は「預かり金」。同容疑者は受験生側に預かり証や領収証などは発行していませんでした。
帝京大学の寄付金をめぐる脱税事件で、冲永嘉計容疑者(58)が同大から正式な合格発表前に「口利き」した受験生の合格の連絡を受けていたことが東京地検特捜部の調べで明らかになっています。このような「口利き」の手口は、七〇年代後半に栃木県の医師を通じて帝京大への寄付の仲介をしていたという元入試ブローカーの証言と一致するものでした。
冲永容疑者は入試前にも、受験生の父母から「預かり金」を受けていました。元入試ブローカーの男性は、「冲永荘一(前)総長に『預かり金』が渡るのを見た」と本紙に証言しています(本紙七月二十三日付)。
この男性は、寄付金を出す父母らを夏ごろから集め、冲永前総長の部屋に連れていったといい、「親御さんが『お預けします』とお金を渡すと冲永さんが『じゃあお預かりします』とやりとりしていた」と話しています。
男性によると、「預かり金」は、受験生が合格するとそのまま寄付金になり、不合格の場合は、持ち越しとなってさらに一年「預かり」になったといいます。
元ブローカーの男性は、冲永容疑者と同様に、帝京大側から合格発表前に合否の連絡を受けていたとも証言します。「一時間でも前に合否を親に伝える。発表前に連絡することで入試にかかわっていると親にわからせることができる。これがないと、詐欺になってしまうのでお金を扱えない」
帝京大学側は冲永容疑者について「無関係の人物」などとしていますが、冲永前総長・帝京大学側が冲永容疑者らブローカーと、二人三脚で“寄付金ビジネス”を行っていた実態が浮き彫りになってきたといえます。