日本共産党

2002年11月7日(木)「しんぶん赤旗」

「予防原則」とは?


 〈問い〉 とくにここ数年、「予防原則」という言葉を目にすることが多くなったと思います。何をさしているのですか。(長野・一読者)

 〈答え〉 「予防原則」とは、おもに環境問題や保健・衛生に関し、因果関係に科学的不確実性が存在する場合も予防的な行動を積極的に採用する、政策的立場を表す概念です。一九七〇年代のドイツやスウェーデンなどで政策的試みが始まり、とくに九〇年代以降、国連の諸条約や欧州共同体(EU)の政策でも言及されるようになった、比較的新しい考え方です。

 代表例として引用が多い、一九九二年の国連環境開発会議で採択された「環境と開発に関するリオ宣言」の第一五原則は、「環境を保護するため、予防的方策は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な又は回復し難い被害のおそれが存在する場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として、用いられてはならない」としています。

 温暖化ガスの削減目標を決めた京都議定書も、予防原則の立場にたちます。気候変動のような複雑で大規模な現象は因果関係の立証がきわめて困難です。そのため、京都議定書の根拠となる「気候変動枠組み条約」は第三条で、科学的確実性の不十分さを予防措置延期の理由にしないと確認しています。京都議定書を離脱したブッシュ米政権が、「将来の温暖化は不確実」と主張したことは、アメリカも同意した予防原則の国際合意を投げ捨てるものです。

 EUでは、食品安全の分野でも予防原則の合意形成が進められ、BSE(牛海綿状脳症)の人への感染などが不確実な段階でも積極的に感染防止策を講じました。EUに感染の危険を指摘されても、感染牛が発見されるまで対策をとらなかった日本とは対照的です。日本共産党は今年四月、食品衛生法改正案を国会に提出し、予防原則による食品販売の一時停止命令などを提起しました。

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 〔2002・11・7(木)〕

 


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