2002年11月6日(水)「しんぶん赤旗」
五日に開かれた道路関係四公団民営化推進委員会(委員長・今井敬新日鉄会長)は、「改革」の焦点の一つ、本州四国連絡橋公団の巨額の債務返済に国の道路特定財源の投入、関係地方自治体の出資金の延長など国民に負担をおしつける方針で合意しました。
歴代自民党政府が過大な需要を見込んで三本の架橋を建設したために、本四公団は現在、三兆八千億円の債務をかかえています。このうち返済のできない欠損金がすでに一兆円余にのぼり、この穴埋めに税金を投入するもので、交通量がのびないならさらに負担が拡大します。
今井委員長は、二〇〇三年度予算案に本四公団への出資額が入るという理由から最優先でこの問題を審議。「(利子増大の)止血をしないと」「関係自治体が新たに負担するのは当然」などの意見がだされました。
意見集約で、▽料金の大幅引き下げ、債務の適切な処理を並行してすすめる▽国と地方の出資金の延長▽他の公団の道路料金も返済にあてるが、現状では利子すら返せないので「債務カット(切り離し)の財源は国の道路特定財源とする」ことで合意しました。
本四公団への国と地方の出資金は毎年度八百億円(国と地方が二対一、二〇一二年度まで)、ほかに国からの無利子融資が八百億円(二〇一〇年まで)。その関係地方自治体の出資期間をさらに「十五年程度」延長することを確認しました。
また、債務処理の一環として、本四公団が発行した債券などの対民間債務についても、返済繰り延べの検討を打ち出し、債券を引き受けた民間金融機関などにも負担を求めるとしています。
「国民負担の最小化」などを建て前にしていた道路関係四公団民営化推進委員会がわずか数回の論議で、国民負担による本四公団の債務返済を打ち出したことは、二重三重の問題をもっています。
まず、税金投入をしないためのまともな検討もせず、国の道路特定財源の投入に踏み出したことです。道路四公団を一体で処理をして、日本道路公団の黒字を使って本四公団の債務返済にあてるなどの選択肢もありました。これをとらず、ガソリン税など車の利用者が納める税金を一兆円以上投入します。阪神公団、首都公団も採算はきびしく、本四公団の処理が歯止めなき税金投入への入り口になりかねません。
本四公団を他の公団から切り離して税金投入することは、自民党道路族・国交省が狙っていたことです。日本道路公団の料金収入を本四公団の債務返済に回す必要がなければ、不採算の高速道路建設計画に注ぎ込めるからです。
また、中国・四国の各県、兵庫など地方自治体の出資金を十五年延長すれば、現行十二年間が二十七年間になり、二・二五倍、計七千二百億円にもなります。苦しい地方財政をさらに圧迫します。三架橋の料金の大幅引き下げといいますが、これによって収入は下がりますが交通量が大幅に増える保証はありません。小泉内閣の四公団民営化が国民の望む改革にほど遠いことが、本四公団の処理に示されました。(山沢猛記者)