日本共産党

2002年10月27日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

市町村合併 首長の疑問、不安、批判


 市町村合併問題が地方政治の大きな焦点になっています。国は「合併特例法は時限立法であり、その期限は二〇〇五年三月末」と強調して、合併の押しつけを推進しています。しかし、住民側から「合併は住民自身が選択することが基本」として住民投票をめざす運動も相次いでいます。一方、首長の間でも「反対」「慎重」の立場を表明したり、広域合併協議会の不参加や離脱を表明したりする例も出ています。いくつかの首長の発言を紹介します。

合併特例債は万能薬でない 期限切れたらどうする

 北海道・真狩村 筒井末美村長「国も大きな借金を抱えている中で、果たして合併特例債というようなものが十年間も保障されるかどうか大変疑問です」(九月二十八日、党との懇談会)

 北海道・蘭越町 宮谷内留雄町長「私は、合併はあくまでふるさとづくり、町づくりの中の選択肢の一つであるべきであって、合併が先にあって地域の課題がすべて合併によって解決される特効薬でもなければ万能薬でもないと申し上げているわけです」(九月二十八日、党との懇談会)

 北海道・寿都町 片岡春雄町長「本来、合併の議論の前にまちづくりというものを議論して、合併が良いのか、広域(連合)が良いのか、単独であったほうが良いのか結論を出すべきなのかと思っております」(九月二十八日、党との懇談会)

 北海道・黒松内町 谷口徹町長「もともと自治体は財源がないんです。……だから交付税制度を設けて財政保障機能、財政調整機能を委ねてきたんです。ある日突然、お前のところは財源がないので合併しろというのは成り立たないんです」(九月二十八日、党との懇談会)

 北海道・奈井江町 北良治町長「採算のない自治体を切り捨ててよいとする中央の道理のない合併の考え方はだめです」(五月二十四日、党道議団との懇談)

 福島県矢祭町 根本良一町長「合併を前提としたような町づくりはしてきたこともなかったし、今後も、総合計画のもとに、財政規模に合った独立独歩、自立できる町づくりを継続して推進していく考えであります」(昨年十一月、「広報やまつり」)

 群馬県富士見村 関口隆正村長「目的のない合併の結果、特例債の期限である十年の支援が終わったとき、残るのは心のむなしさではないでしょうか。それよりは、地域を育て、愛していこうという、金に代えがたい郷土愛や地域愛を高めていくことの方が、財政支援以上に大事だと思います」(八月十三日付本紙)

合併先にありきは問題 地方を国の犠牲にするな

 新潟県加茂市 小池清彦市長「市町村にくる金がたいして減らされないのに、大幅に減らされると早合点して、縄と蛇を間違えてあわてて合併して、国からくる金を本当に大幅に減らされる愚を犯してはなりません」(一月号、「広報かも」)

 新潟県黒川村 伊藤孝二郎村長「国が楽になるために地方を犠牲にするという姿勢、全体のパイ(交付税)を減らすために合併を推進しようとしている発想が見え見えだ」(昨年二月二十日、地方紙の報道から)

 埼玉県戸田市 神保国男市長「合併の是非の判断は、基本姿勢として地方自治の主役である市民の皆さんの意思を最大限、尊重することを従来から申し上げてきました。今回の市民意識調査では、だれの目からも市民の皆さんの明確な意思表示(注)が得られたものと考え、合併協議に参加しないことを決意しました」(十月一日号、「広報戸田市」)注=合併について「必要とは思わない」約70%

 富山県上市町 伊東尚志町長「合併しない方向で考えている」(九月十七日、定例議会、地方紙の報道から)

 富山県・舟橋村 松田秀雄村長「合併すれば財政の状況が良くなるという考えは間違っている。貧乏な自治体がいくつ集まっても同じ。合併特債にこだわらず、村民の幸せを考えたい」(九月十九日、定例議会、地方紙の報道から)

 静岡県湖西市 山本昌寛市長「仮にそう(浜松市が特例法期限までの合併を既定路線としている)としても湖西市は独自の研究を進めていくべきだ。この政令指定都市研究会(浜松市が提唱し浜名湖周辺市町村で構成)参加の時に、特例法期限までにまず合併ありきということはいかがなものかと提示してある」(八月二十七日、市議会)

 山梨県早川町 辻一幸町長「(山村で過疎化も進んでいるが)個性のあるまちづくりをしてきたから、よそへいった人たちも今では(同町出身であることに)胸を張ってくれています。そこまで積み上げてきた町が、合併して消えちまうようなことはしてはいかんということです」(九月六日、山梨自治体問題懇談会などが開いた「辻一幸町長の話を聞く会」)

地方自治の主役は住民 自治体の個性が大事

 三重県菰野(こもの)町 服部忠行町長「現在、国・県が進めている合併推進論は、合併すればあたかも各市町村が抱える諸問題が解決・再生できるという万能薬ばりの論調で全国一律に市町村合併というメニューを押し付ける住民本位の自治の原則から著しく離れたやりかたには断固反対するものであります」(七月二十六日、「広報菰野」)

 滋賀県竜王町 福島茂町長「みなさんの発言を聞き、町の行政施策の水準を(合併で)引き下げたくないという声が多かった。単独の町でやっていける基盤はある。単独の町として住民施策でがんばらせてほしい」(三月二十一日、合併問題を考える「まちづくりフォーラム」の閉会あいさつ)

 滋賀県朽木村 澤井功村長「合併してもJRの駅がくるわけでも、高校が近くなるわけでもない。雪も降る。合併しても財政は苦しく、合併前の約束は風化するだろう。むしろ単独のほうが行政サービスがしやすいということだ」(六月二十四日、村議会の合併協議会不参加決定で)

 和歌山県白浜町 立谷誠一町長「全国的にもまれな広域な新市が住民本位で効率的な市政を行うのは困難をきわめる。住民アンケートの結果、住民の大半は現在、法定協に参加することを良しとしない」(九月十七日、同町議会)

 和歌山県南部町 山崎繁雄町長「単なる数合わせや財政にばかりとらわれず、やるなら意義のある合併をすべきだ」(本紙の取材に)

 和歌山県南部川村 山田五良村長「交付税が減らされるなど苦しいところもあるが、それだけが合併じゃない。新しい町づくりをと思っている」(本紙の取材に)

 島根県東出雲町 石原真一町長「町の現状、そして将来を展望しても合併しなければ達成が困難な町政の課題はない」(十月十八日発表の「見解」)

 高知県本山町 今西芳彦町長「いまの合併は集落の崩壊につながる。自治体破壊そのもの。行政としては、合併をするという考えは持っていない」(八月二十二日、高知県の市町村合併を考える会との懇談で)

 岡山県新庄村 小倉博俊村長「是非は住民のみなさんと相談して決めることだが、新庄村としてがんばっていけるというのも選択肢。人間に個性があるように、自治体も個性、“らしさ”をもっていなくてはならない」(七月七日、本紙記者の取材に)

 鳥取県岩美町 榎本武利町長「岩美町域の地域づくりのためには、自立の方向で町民と力を合わせていきたい。自立の方向で議会も判断してほしい」(十月二十一日、同町議会市町村合併特別委員会)

 広島県神辺町 佐藤秀毅町長「(神辺町は)四万一千の大きな町として、将来の方向性を悔いを残さないものにしたい」(三月十八日、三月定例議会)

 山口県玖珂町 小林〓兒(しょうじ)町長「住民自治の本旨から民意に反する選択は将来に禍根を残すおそれがありますことから、今回の玖珂町議会の市町村問題調査研究特別委員会における表決とともに、アンケート調査の結果等を重く受けとめ法定合併協議会に向けての研究会に参画しないことといたしました」(十月二十五日、岩国地区市町村圏協議会で見解を表明)

 熊本県苓北町 田嶋章二町長「町は少なくとも平成四十年ぐらいまでは現在の住民サービスの水準を維持できる。これにたいし合併で生まれる新自治体は見通しがハッキリしない。それを町民に勧めることはできない」(六月十九日、定例議会、地方紙の報道から)

 


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