日本共産党

2002年10月27日(日)「しんぶん赤旗」

解説

チェチェン紛争の平和解決に難題も


特殊部隊の突入、多数の一般市民の犠牲という強硬策で痛ましい終結を迎えたモスクワの劇場占拠事件。政府は「余儀なくされた作戦」(ワシリエフ内務次官)といいますが、市民にとっては悲劇的な結末となりました。

 一方で、三年以上にわたりチェチェンでの軍事作戦を継続するロシアのプーチン政権にとっては、「武力による紛争解決」への自信を誇示する機会となりそうです。

 ロシアからの独立を掲げてロシア軍とにらみ合ってきたチェチェン武装勢力は、数百人もの一般市民を巻き込んだ凶悪犯罪に公然と手を染めたことで、自らテロ組織であることを宣言する結果となりました。いかなる理由があろうとも、テロ行為は合理化できるものではなく、事件によって、武装勢力が掲げる要求の妥当性そのものが失われたことは否定できません。

 この間、一般住民を巻き込んだ戦闘や暴行の横行など、チェチェンでのロシアの強引な軍事作戦に対して国内や国際社会からの批判が高まっていました。武装勢力が占拠事件で「チェチェン戦争の終結」などを要求したのはそうした流れを当てにしたものでした。しかし、国際テロ組織アルカイダなどとの関係も取りざたされ、テロ組織化が進む武装勢力への共感が広がるとは考えられません。

 他方、武力によるチェチェン紛争の解決に固執するプーチン政権には重大な責任があります。プーチン政権は「反テロ」への欧米諸国の“理解”を後ろ盾に、さらに掃討作戦を強化したい考えですが、劇場占拠事件の強硬策による解決を選択したことで、チェチェン一般住民や独立派の市民、さらには事態を憂えるロシア国民の間にも不信がいっそう広がる可能性もあります。

 チェチェン紛争の解決の道はいっそう険しいものとなりそうです。 (モスクワで北條伸矢)

 


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