日本共産党

2002年10月26日(土)「しんぶん赤旗」

衆院予算委

佐々木議員の経済問題質問

(要旨)


 二十四日の衆院予算委員会でおこなった日本共産党の佐々木憲昭議員の経済問題にかんする質問(要旨)は次の通りです。


佐々木議員「不良債権処理すればするほど景気は悪化」

小泉首相「予測以上出ている」

      悪循環もたらしていると認める

写真
パネルを手に、不良債権処理についてただす佐々木議員=24日、衆院予算委員会

 佐々木議員 小泉総理は、就任以来、「不良債権の早期最終処理」ということを掲げて進めてまいりましたが、その結果、失業、倒産が大変な事態になっております。ところが、総理の所信表明では景気対策はほとんど触れなかったわけで、不良債権の本格的加速が宣言される。結果的にはデフレ不安をあおることになっていると思うんです。

 この不良債権の処理がデフレを加速させる性格を持っていることは認識されているんでしょうか。

 小泉純一郎首相 不良債権処理を進めると、やはり債務等の問題で企業にも倒産が起きてくる場合も出てくるでしょう。そうしますと勤めた方々が失業される。この悪循環に陥ることがないような対応策もあわせて進めていく必要がある。

 しかし、不良債権処理問題はいま、経済再生、景気問題の足かせになっていますので、先送りするわけにはいかぬ、どうしても乗り越えなきゃならない一つの大きな壁だと思っております。

 佐々木 デフレ要因はあると。つまり、倒産、失業が増えることをお認めになった。昨年、小泉内閣は、大手銀行の十一・七兆円の不良債権を二年間で処理すると言ったわけです。一年間では約六兆円を処理する計算になるわけですが、処理したのはこの一年間でいくらでしたか。

 五味廣文金融庁監督局長 六・二兆円です。

 佐々木 不良債権を減らす計画を立て、一年間では計画通り実施した。不良債権の残高はどうなりましたか。

 監督局長 平成十四年(二〇〇二年)三月末における主要行の破たん懸念先以下債権の残高は十五・四兆円となっております。

 佐々木 昨年の三月で十一・七兆だったのが、ことしの三月には十五・四兆円。三・七兆円増えたことになるわけです。つまり、処理しても処理しても新しく発生するものが加わるために結果として増えていく関係になっている。これはお認めになりますね、当然。

 首相 予定どおり処理を進めても、また予測以上の新規が出ている。これが非常に、経済は生き物であるというゆえんの一つかもしれませんが、こういう問題に対してどう対応するか、これから大事な問題だと思っております。

 佐々木 それでいま、来年度だけでも、医療、社会保障の負担増で三兆円であります。経済財政諮問会議で有識者の議員がこう言っているんですね。医療費の負担、自己負担、保険料の引き上げなどがGDP(国内総生産)にマイナス効果を及ぼすと。デフレ効果なんですね。

 しかも、不良債権を処理すると、国民の負担は増える、失業者は増える、倒産が増える。こういうふうになっていきまして、これは、やってもやっても、どんどん不良債権が増え続ける。不良債権が増えたら、さらにそれを処理する。大量に処理すれば、ますます大量の失業、倒産が出る。こういう悪循環になって、不良債権は片づかないんじゃありませんか。

 首相 不良債権処理だけで経済が再生するとは思っておりません。いかに企業を再生させるか、また、再建可能な企業に対してどのような発展できる環境をつくるか、いろいろな対策が必要だと思っています。

国民の側から不良債権みる

 佐々木 いま大事なのは、不良債権を全部ゼロにするんだということで次から次へとやっていくと、奈落の底に沈むような状態になってしまう。そうならないように方向転換が必要だと思うわけです。

 不良債権というのは、銀行の帳簿から見て不良債権だという性格を持っていると思うんです。しかし、国民の側、日本経済全体、地域経済の側から見ますと、果たしてその企業というのは不必要な企業なのかというと、決してそうじゃない。これらの企業は一生懸命努力して地域経済の発展、雇用の確保、そのために全力を挙げていると思うわけです。

 総理は所信表明演説で、東大阪市、東京の大田区の中小企業に触れまして、「厳しい環境の中で、わが国の中小企業は果敢な挑戦を続けています」とおっしゃいました。その大田区では、ピーク時に九千以上ありました工場がいまでは六千に減っております。東京都の工業統計調査によりますと、小泉内閣になってこの一年間で大田区の町工場は10・5%マイナスであります。つまり、小泉内閣になって不良債権処理をどんどん先行した結果、それもありまして、一割中小企業がつぶれてしまった。

 大田区の産業振興協会の専務理事はこう言っているんです。「優れた技術を持っている企業に限って、決算状況がよくないところが多い。こうした資金需要がある企業には融資が行われない。先立つものがあれば回復できる中小企業がたくさんある。かつては経営者の資質を見抜いて資金を供与してくれたプロのバンカーが存在した。しかし、いまは切り捨てられている」

 ですから、技術を持っている中小企業も、赤字だということで不良債権扱いされて、みすみすつぶされていっているわけですよ。

 やはり、不良債権だからというので、どんどんつぶしていくというやり方は、根本的に改めることが大事だと思うんです。技術を持っている企業が生き延びる、やっていける、そういう状態をつくるのが政治の役割じゃないんでしょうか。

 首相 倒産する企業も私は一様ではないと思います。それぞれ事情を抱えて、倒産のしようも形も違ってくると思いますが、要は、やる気のある企業にどのように頑張ってもらうか、また金融機関も、やる気のある企業なり経営者なりを見抜いて、将来の発展性をどう考えるか、こういう点でいままで欠けていた面があるということに対しては否定はいたしません。

 しかし、こういう大きな時代の流れに乗って、その変化を見越して、企業がどういう形で新たな改革に挑んでいくかという面も必要だと思いまして、その面、産業再編あるいは企業再生、両面から活力を発揮できるような支援体制をとるのも政府としては大事だと思っております。

可能性の芽を摘んでしまう

 佐々木 新規に企業がおこってくることは大変大事なことでありますが、実際には、いままで廃業と新規の企業とを比較しますと、廃業の方がこの数年間ずっと増えてきている。新規に立ちあがる企業というのは非常に減っているわけです。

 ここが重大で、やはり可能性のある企業を応援していく、その中小企業の経営者の能力、持っている技術を評価することに根本的に変えていかないと。赤字を抱えている企業、三年以上たつとこれは不良債権だということでどんどんどんどん切り捨てていったら、日本の中小企業の可能性を、芽を摘んでしまうということになるわけで、そこをやはりよく考えていただきたい。

 RCC(整理回収機構)に送って、RCCが再生機能があるといったって、実際に六万社を超える企業がRCCに昨年以降送られたけれども、再建の軌道に乗ったのは八十七社ですよ、六万の中の。ですから、企業をつぶすことを変えなきゃならぬと思うわけです。

 これから何兆円の不良債権を処理するのか。例えば今年度、いったいいくら処理する計画なのか。これを金融庁、答弁してください。

 監督局長 確たることを申し上げることは困難ですが、例えば、非常に機械的な試算をしてみると、平成十四年度中に十兆円前後の破たん懸念先以下債権についてオフバランス化につながる措置――これはもちろん企業再建も含んでいますが――が講じられるという計算結果になります。

離職者の保障 国の責任で

 佐々木 昨年は六・二兆円処理をした。今年は十兆円処理しなきゃならない。大変な規模なんです。しかも、新規発生がこの中には入っておりません。いまあるものだけ処理してもこれは十兆円だと。これは大変な失業、倒産を生み出すことにならざるを得ないんじゃないか。

 竹中大臣は、昨年、十二・七兆円の不良債権処理で三十九万人から六十万人の離職者がでるとおっしゃいました。では今後いったいどれだけの離職者が生まれるのか。

 竹中平蔵金融・経財担当相 いま政策の枠組みをつくっているわけでございますから、それそのものを正確に議論するのは大変難しいと思います。

 佐々木 まったく無責任で、計算さえしていない。つまり、これだけ去年よりも今年は大規模に処理するんだから、倒産、失業がいままで以上に増える。いままで以上に増えるのに、去年は出した数字も今年は出さない。大規模に失業、倒産を生み出す政策は明確だけれども、やってみないと結果はわからないと。総理、これは大変無責任だと思いますよ。

 いま、失業者はどんな状態になっているか。八月の統計を見ましても、約三百六十万人です。就職活動をあきらめた、もう就職がなかなか見つからないとあきらめた失業者を含めますと一千万人を超えると言われています。完全失業者の中で、雇用保険、失業給付を受給している人はわずか19・3%、つまり二割です。

 働く能力と意思があり、求職活動を一生懸命しているけれども、雇用保険が切れて収入がなくて生活に困っている、こういう失業者に対して生きていけるようにするというのが国の責任じゃないかと思うわけです。このような方々のために何らかの生活保障制度を創設すべきだと思いますけれど、総理、いかがでしょうか。

 坂口力厚生労働相 雇用保険制度は、労使の間でいろいろ議論をして決めていただいているわけですから、できる限り雇用保険に多くの人がかかわっていただけるようにしなければならないというふうに思っております。

 パートの問題等も、やはり検討していかなきゃならないと思っているわけです。しかし、自営業のみなさんは現在のところ入っていないわけでございますし、自営業等のみなさん方には離職者支援資金を現在出しているところで、そうしたものによって、できるだけカバーをしていきたい。

 佐々木 離職者支援資金というお話がありましたね。あくまでこれは貸付制度なんです。

 3%の利子つきで、もちろん一定の猶予期間はあるとしても五年で返済しなきゃならぬ。いま、失業して本当に将来の展望が描けなくなっている、そういう方に利子つきの融資で果たして生活が支えられるのか、あるいはそういう希望がかなえられるのか。実績を見ましても、なかなかこれは低いわけですね。

 やはり、いま大事なのは、このような離職者支援資金についてもう少し弾力的に改善していく。例えば、利子を無利子に引き下げるとか、返済期間を長期に引き延ばすとか、もっと利用しやすいように変えていくということが私は大事だと思います。いかがでしょうか。

 首相 今後、どのような具体策がいいかというのは、厚労大臣を中心に検討していただいております。

親失業の子の支援充実を

 佐々木 しっかり検討して、安心して生活できるような状況にもっていくということが国の役割だと私は思うわけです。

 それから親が失業する、そうすると子どもが学校に通えなくなる、学費が払えなくなる。本当に能力のある若者がいま学校に行けなくなって大変な状況だということで、訴えがたくさんあるわけです。これを救済するというのもやはり政治の責任だと思うわけです。例えば、失業者の子どもの学費、授業料の援助ですね。緊急援助、あるいは住宅ローンの払いなんかも大変なことで、こういう方々のために支援、充実していくという決意を総理に最後におうかがいしたい。

 首相 日本における、教育を重視していく姿勢にはこれからも変わりがありません。今後、すべての国民が、親御さんがたとえ資金的な教育支援ができない家庭におきましても、お子さん本人が教育を受ける意欲があるならば、必ず教育を受けられるという制度なり体制はきちんととっていきたいと思います。

 


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