2002年10月9日(水)「しんぶん赤旗」
スウェーデン王立科学アカデミーは小柴昌俊・東大名誉教授の受賞理由について、独自の考えにもとづくニュートリノ検出装置をつくりだすことにより、困難だったニュートリノの検出に成功、ニュートリノ天文学を創出したことをあげています。
このなかで同アカデミーは、ニュートリノの存在が早くから知られ、太陽やほかの星で核融合にともなって発生しているのに、物質とまったくといっていいほど相互作用しないため検出が困難なことを紹介。このことを、何兆個ものニュートリノが毎秒われわれの体を突き抜けているが、われわれはまったく気がついていないと表現しています。
受賞理由で、小柴名誉教授がこのような性質をもつニュートリノを検出するために、岐阜県神岡町の神岡鉱山の地下に大量の水をたたえた巨大な検出装置カミオカンデを設置し、太陽からのニュートリノを検出することに成功したことを評価。さらに一九八七年には超新星1987aの爆発にともなって発生した一兆の一万倍個のニュートリノのうち十一個を捕獲し、ニュートリノ天文学という新しい力強い研究分野を導くに至ったとたたえています。
物質を構成する基本的な素粒子の一種。電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3種類あります。電荷をもたず、他の素粒子との相互作用が非常に小さいため、地球も簡単につき抜けます。そのため、検出が非常に困難でした。質量はゼロと考えられていましたが、スーパーカミオカンデの実験で、質量がゼロでないことが確かめられました。
小柴東大名誉教授と東大学生時代に寮で同室だった日本共産党の上田耕一郎副委員長は、ノーベル賞受賞のニュースを訪問先のメキシコシティーで聞き、「大変よろこんでいます」として次のように語りました。
「3年ぐらい前に彼がスイスの物理学賞をもらったとき、お祝いの会をやったことがあります。彼は学者として優れているだけでなく、周りを集団的に組織していく力を持った魅力のある人なんです。前にカミオカンデの予算の増額について、詳細な説明をしにきて、党としても大いに協力したことがありました。友人としてこんなにうれしいことはありません」