2002年10月7日(月)「しんぶん赤旗」
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米軍がアフガニスタンでの対テロ報復戦争を始めて七日で一年になります。日本政府は、この報復戦争に参戦するため、戦後初めて自衛隊の戦時派兵を強行しました。インド洋に派遣された海上自衛隊の艦船はどんな作戦を行っているのか。また、米国が現在、イラク攻撃の準備を進める中、政府・防衛庁は何を狙っているのか。
米軍艦船への給油を任務にした海上自衛隊の補給艦。その周りを護衛艦が物々しく取り囲んで航行。護衛艦搭載のヘリコプターは朝と夕に飛び立ち、周辺海域を航行する船舶を一隻ずつ監視する――。
戦場さながらに厳重な監視体制をとってインド洋を航行する海上自衛隊艦隊の生々しい姿が、マスコミで報道されています。
憲法違反の自衛隊派兵に対する国民の批判の前に、政府は昨年のテロ対策特別措置法の国会審議で、「戦闘地域にはいかない」と繰り返しました。しかし、実際の自衛隊の作戦は、その言明とは異なり、テロ攻撃を想定し、厳重な警戒態勢下で行われています。
防衛庁は、洋上での機銃掃射の訓練や、テロなどによる襲撃に対処するための艦内訓練を実施していることを認めています。また、アラビア海沿岸国に入港する際は、実弾装てんの小銃で、護衛艦の警戒にあたっているとも報じられています。
防衛庁は、実弾装てんによる警戒活動について「作戦・運用上にかかわる」とし、装てんの有無を明らかにしません。しかし、海自関係者は「インド洋派遣の部隊は装てんしていると思っていい」と言います。
海自艦船は、テロリストの関係が疑われ警戒が必要とされる船舶の情報を各国海軍から受けているだけでなく、レーダーでとらえた航空機や船舶の位置などの情報を米軍とのリンクシステムで交換しています。「米軍の武力行使と一体化しない」という政府の説明とは逆に、米軍の軍事作戦に完全に組みこまれ、一体化しているのです。
しかも、在バーレーン日本大使館には米軍艦船への給油作戦の「連絡調整のため」(防衛庁)、海自の自衛官を派遣。アフガン報復戦争に責任を負っている米中央軍司令部(米フロリダ州)にも、米軍が行っている作戦の「全般的な情報収集のため」(同)、海自一佐と空自三佐の二人の幹部を派遣しています。
アフガン報復戦争に対する自衛隊の支援は、現在の計画では十一月十九日まで。その後も支援を継続するかどうかについて、政府はまだ決定していません。しかし、米国がイラク攻撃の準備を進める中、支援の延長や強化・拡大を狙う動きが出ています。
支援期間の延長について、ラフラール米太平洋艦隊水上艦軍司令官は、「私は、何人かの日本の海自将官と今朝電話をし、彼らは、彼らが知っている限り、(インド洋での対米)支援を続けると話した」(米軍準機関紙「星条旗」九月二十八日付)ことを明らかにしています。
チャプリン在日米海軍司令官は都内の講演(九月二十六日)で、海自のイージス艦の派遣について「日本が派遣するなら、私たちは日本政府のすばらしい意思と受け取るだろう」と強調しました。
日本側も、九月十二日に開かれた自民党国防部会小委員会に出席した海上自衛隊幹部が「現場ではいろいろな飛行機が飛んでくる。優れたレーダー機能を持つイージス護衛艦の目があれば安心できる」と発言。浜田靖一委員長は「隊員の安全を考えれば(イージス艦を)出すべきだ」と主張しています(「自由民主」九月二十四日号)。
また米国政府が、イラク攻撃も視野に入れて、海自の給油実施海域をソマリア沖まで拡大し、船舶検査を実施する艦船にも給油支援対象を広げることや、P3C哨戒機の派遣などの対米支援強化を文書で、日本政府に打診したと報じられています。
中谷元・防衛庁長官(当時)は九月二十七日、「要請の形での意見や正式な文章はない」としながら、「テロの対応等について、日米間で緊密に協議している」と述べ、打診があったことを否定していません。
こうした支援に日本政府が乗り出せば、無法な米軍の戦争にいっそう深く組み込まれ、平和と憲法をじゅうりんする道をますます突き進むことになります。