2002年10月2日(水)「しんぶん赤旗」
![]() 女子ソフトボールの対日本戦で声援を送る北朝鮮応援団=9月30日、釜山九徳野球場 |
一万人近くが参加している釜山アジア大会で、最高の人気を集めているのは北朝鮮から来た二百七十六人の応援団です。競技場の観衆たちは、初めて見る北朝鮮の人たちに興味津々。競技よりも応援団に視線が集中しているようです。
日本と北朝鮮の女子ソフトボール競技があった九月三十日の九徳野球場。北朝鮮を応援する三つの応援団が三塁側スタンドに陣取りました。北朝鮮から来た応援団、韓国の市民がつくる「アリラン応援団」と「釜山カモメ応援団」です。
北朝鮮応援団は、白い運動服と民族衣裳のチマ・チョゴリ姿と、青いユニフォームのブラスバンド。韓国でも知られる自国の歌を披露したり、木ベラをたたいて選手に声援を送ります。
韓国側は民謡「アリラン」など、国の南北分断以前からうたわれてきた歌で応援。ときおり北朝鮮の歌で応援すると、北朝鮮の応援団から拍手が起こります。
共通する掛け声は「統一祖国」の連呼。韓国と北朝鮮の国旗、白地に青い朝鮮半島の「統一旗」がスタンドに揺れます。
大会組織委員会は、四十四の参加国・地域の選手のために、同数の公式応援団をつくりました。このうち北朝鮮のためにつくられたのが「アリラン応援団」です。責任者の閔丙烈さん(41)は、「南北別々に大会に参加しているが、本当は一つの国。北の選手も私たちの選手だよ」と言います。
隣同士で応援しても、間には警備要員がびっしり配置され、自由に行き来することはできません。分断の厳しい現実が見えます。
“交流”できるのは、北朝鮮応援団が入退場する時。通路を歩く北の団員と韓国市民が、警備要員をはさんで「ようこそいらっしゃいました」、「また会いたいですね」と声を掛け合います。わずかな時間でも、分断の壁を乗り越えた瞬間です。(釜山で1日 面川誠 写真も)