日本共産党

2002年9月24日(火)「しんぶん赤旗」

「トンキン湾決議」の二の舞い?

対イラク戦争容認 米で議論起こる


 【ワシントン22日坂口明】ブッシュ米政権が至急採択を米議会に迫る対イラク戦争容認決議案をめぐり、ベトナム侵略戦争拡大を容認した一九六四年の「トンキン湾決議」の二の舞いを演じないかとの議論が米国で起こっています。

 トンキン湾決議とは、六四年八月に、ベトナム北部トンキン湾で米駆逐艦がベトナム側に発砲されたとの事件を理由に米議会が採択した、大統領にあらゆる軍事措置を認める決議です。下院は全員、上院は二議員以外の全員が賛成。ベトナム北部への本格的攻撃を開始する契機となりました。しかし同事件はでっち上げだと判明。上下両院は七〇年に同決議の廃棄を決議しました。米議会の重大な汚点です。

 ところが、ブッシュ政権がいま議会に採択を要請している対イラク先制攻撃容認決議案は、トンキン湾決議の繰り返しではないか、との懸念が一部民主党議員や研究者らから表明されています。

 今回の決議に関して大統領が議会に示した提案は、「関連する安保理決議を執行し、米国の国家安全保障利益を擁護し、地域で国際の平和と安全を回復するために、武力を含め、大統領が適切と決定するすべての手段を行使する権限を大統領に与える」としています。

他の地域も視野?

 問題点の一つとして指摘されているのは、「地域で国際の平和と安全を回復するため」武力行使の容認を求めている点です。イランなど、イラク以外への攻撃も視野に入れたものではないかとの懸念が出ています。

 同提案が「関連する安保理決議の執行」を武力行使の目的にしている点についても、新たな安保理決議の採択なしで、既に採択された安保理決議の執行の名目で対イラク戦争を正当化する試みだとの批判が出ています。

 同提案のこの論理は、米国の軍事行動を日本政府が容認、支持する際に、「既に採択された安保理決議の実効性確保の行動」だとして正当化に援用する恐れがあります。

戦争権限法を無視

 ブッシュ提案が七三年の戦争権限法を無視している点も注目されています。同法は、ベトナム侵略戦争の経験に照らし、軍事力行使の前に「議会に協議する」よう大統領に求めています。

 トンキン湾決議当時にネルソン上院議員のスタッフだったアルぺロビッツ・メリーランド大教授は、同決議の適用範囲の無限定さに懸念した同議員が修正案を出そうとしたが、フルブライト上院外交委員長が決議案の狙いは限定的だとする「立法記録」を出して修正案を撤回させたと回顧。「六四年と同様に、今も多くの議員は政府に反対すれば自分たちが政治的に攻撃されると恐れている」が、トンキン湾決議の教訓は「侵略的政権にやりたい放題を許さない断固たる文言」の決議にすることだと指摘しています(ワシントン・ポスト紙二十二日付寄稿)。

 


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