日本共産党

2002年9月21日(土)「しんぶん赤旗」

もう一度、人を信じてみよう

半信半疑で共産党市議団を訪ねたら…

熊本


 リストラ、倒産の嵐のなか、職を奪われ、住む家さえも失うホームレス(野宿生活者)が地方都市でも急増しています。熊本市では、日本共産党市議団、熊本県民主医療機関連合会、熊本市生活と健康を守る会が連携して、ホームレスの人たちへの自立支援に取り組んでいます。

 (熊本県 西田純夫記者)


写真
ホームレスの人が住む公園のあずまや。ここには現在3人が生活しています=熊本市

ホームレス夫妻

自立の道へ

 「もう一度だけ人を信じてみよう、これが最後だ」。今年二月、松田清さん(55)、正子さん(54)夫妻=仮名=は半信半疑で、日本共産党の熊本市議団控室を訪ねました。「なんとかホームレスから抜け出したい」と相談にきたのです。

 二年ほど前、家賃滞納でアパートから追い出されました。清さんが勤めていた土建関係の会社が四カ月賃金未払いの末、倒産したためです。病弱な正子さんと橋の下や公園などを転々としてきました。

 二年以上にわたる路上生活。ジャンパーを差し入れてくれる人もいましたが、空き缶を投げつけられることもありました。冬の寒い雨の日に、毛布を包んでいたビニールシートを引き裂かれていたこともありました。「仕事がある」といわれて行ってみたら、だれもいないなど何度もだまされました。

 冬の寒い日、清さんが夜中に目覚めると、毛布の上には雪がつもり、あわてて正子さんを起こしたことも。「目がさめなければ、そのまま凍死していたかもしれない」と振り返ります。

 清さんは深刻な不況のなかで、安定した働き口は見つからず、空き缶拾いをしたものの縄張りがあり、トラブルを恐れやめました。日雇いの仕事についたりして、なんとか生き延びてきました。

 その松田さん夫妻が日本共産党市議団を訪ねることにしたのは、ホームレスの聞き取り調査をしていた民医連の人から、勧められたからでした。

 応対した益田牧子市議と生健会は、「家族でホームレスになるなど人道上も許せない」と、すぐに住宅を見つけたり、生活保護の手続きを支援するなど奔走してくれました。

 「訪問から半月後、民医連の人が生活保護の通知を、走って知らせに来てくれました。あの時は、うれしくて、言葉が出ず、涙があふれました」

 笑顔で語る清さんは、「早く仕事に復帰して、ホームレスの支援もできるようになりたい」と、生きる希望を膨らませています。


写真
ホームレスの人の相談にのる(左から)阪本深さんと益田牧子、重松孝文、上野美恵子の3市議=熊本市

民医連と生健会の支援1年

15人の「生活保護」実現

 民医連と生健会がホームレスの実態調査と自立支援にのりだして一年がたちます。県民医連の板井八重子会長は「地元新聞の投書で、ホームレスのきびしい状況を知ったのがきっかけだった」といいます。

 これまでに聞き取り調査ができたのは約五十人。うち相談にきたのは二十二人。九月までに十五人が生活保護を受けることができ、その後仕事に就くことのできた人など、多くが自立への道を歩み始めています。

 二月、生活保護をうけられるようになったA子さん(59)は、市に保護を申請したとき、一度は「住所が駅では認められない」と断られました。

 あきらめかけましたが、市議団と生健会に励まされ、ようやくアパートを見つけることができ、生活保護を受給。その後、期限付きですが病院の清掃のパートにつくことができました。いまは、朝五時半に起きて仕事に出かけています。

 「ホッとはしているが、まだまだ不安は大きい」とA子さん。「身体のあちこちがいたんでいるのに、市の保護課は『もっと長く仕事できるようにしなさい』としょっちゅういってくる」といいます。

 県生健会の阪本深事務局長はいいます。

 「人が信じられなくなった人、長いホームレス生活の中で焦りがこうじ、怒りっぽくなった人、病気した人。それぞれ問題を抱えています。ホームレスになった本当の原因までたどり着かないと解決はできません。行政の顔をこの現実に向けさせ、行政施策を変えさせないといけない」

 熊本市は昨年、ホームレスの数を二十九人としていましたが、民医連、生健会の申し入れもあり、ことしの市の目視調査では百二十人に。しかし、両団体は「ホームレスの数は二百人をくだらない」とみて、市に詳細な調査と、緊急避難できるシェルターや生活・就労支援のための自立支援センターの設置などを求めています。

 市は、この九月議会で重松孝文市議の質問にたいし、「国と協力して詳しい調査をおこない、必要な施策に取り組みたい」と答弁しています。

 日本共産党市議団と民医連、生健会の連携した自立支援のとりくみは、行政の対応に変化をつくりだしつつあります。

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp