2002年9月13日(金)「しんぶん赤旗」
政党助成金の二〇〇一年の配分総額は、三百十三億九千三百万円でした。政党別では、自民党百四十五億円、民主党八十四億円、公明党二十九億円、自由党二十億円、社民党二十二億円、保守党四億円など。保守党は自由党との分裂後、満額を得たことで前年より倍加しました。制度が導入された一九九五年からの七年間で山分けされた国民の税金は、二千百七十四億三百万円にのぼります。
政党助成の総額は、赤ちゃんからお年寄りまで国民一人当たり二百五十円で計算されています。
自民党の場合、五千八百十四万人分の助成金を受け取っていることになりますが、昨年七月の参院選挙で自民党が得た比例代表得票は二千百十一万票。国民の思想信条に反し、実際の支持票より三千七百万人分も多い助成金を受け取るという、政党への“強制献金”ぶりがはっきりしています。
政党助成金を山分けしている政党は、余っても国民に返すどころか、「政党基金」の名で積み立てています。参院選挙のあった二〇〇一年に、各党とも選挙資金として取り崩し、〇一年末は五十四億円となりました。自民党は五十七億円取り崩し、十四億円の残高に、公明党は残高が十七億円減って十八億円となっています。
政党助成金は国民の税金にもかかわらず、何に使おうが勝手放題です。
自民党は、党大会のための会場費(日本武道館)や高級ホテルの宿泊代を支出。支部では、エアコン購入(山口県第一選挙区支部)、温度表示看板電球取り替え(愛知県支部連合会)など政治活動と無縁なものもありました。また支部のなかには、党広報用衣服代(七万五千円)などの支出もあります。
民主党は、二十一億円を宣伝事業費(前年比十億円増)に支出。テレビCM制作費・CM料、ラジオCM料などで各一億円以上を出しています。
公明党もメディア出演のため、選挙関係費として前年三倍の二十四億円を支出。宣伝事業費約二億円では、党イメージソング、ビラ、署名用紙などを作成しました。
自由党は宣伝事業費を四億円と四倍化。また「会議費」の名目で都内の高級ホテルや料亭を頻繁に利用しています。
また、自民党は本部で「公課(租税など)及び保険料」の名目で千代田都税事務所に千六百万円、東京都自動車税総合事務所に三十五万円を納めるなど、“税金で税金を払う”例も。政党助成金で自動車税を支払う例も自民党の四支部、民主、公明両党の各三支部でありました。
二〇〇一年の政治資金収支報告では、参院比例区の自民党候補の資金集めが突出しています。非拘束名簿式が導入されたもとで、いっそうの業界締め付けで資金を集めている実態が浮き彫りになりました。
元日本医師会会長を父にもつ武見敬三氏は全部で五億円を超える資金を集めましたが、日本医師会まるがかえ。日本医師連盟と十八の地方医師連盟・医師政治連盟からおよそ二億二千万円の献金を受け、製薬産業政治連盟や日本薬業政治連盟など製薬業界からも三百十五万円の献金を受けています。
“財界候補”と呼ばれ、伊藤忠商事出身で元経済同友会幹事の近藤剛氏は、後援会で「経済人の集い」など十数回も政治資金パーティーを開き約三億円を得ています。
藤井基之氏は元厚生省薬務局課長ですが、日本薬剤師連盟と四十七都道府県の地方薬剤師連盟からおよそ一億八千万円、製薬産業政治連盟と日本薬業政治連盟から千五百万円の献金を受けています。パーティー券の購入先には製薬業界団体のほか大正製薬、佐藤製薬、ゼリア新薬工業など大手製薬会社が名を連ねています。
元厚生省看護課長の清水嘉与子氏は、日本看護連盟から三億七百万円、看護連盟地方支部および自民党の看護連盟支部から約千六百万円の献金を受け、“収入”の九割近くを団体献金に依存しています。
二人を送りこんだ農水省関係では、元四国農政局長の段本幸男氏は、各地の土地改良政治連盟や自民党の土地改良支部などにパーティー券を購入してもらっています。また、元食品流通局長の福島啓史郎氏は、各地の農政連盟等農業関連団体から一千万円以上の献金を受けています。
衆院を六期務めたあと参院にまわった、元国土交通省政務次官の桜井新氏も地元新潟の建設業界(四十五社)から約九百万円の献金を集めています。
二〇〇一年の政治資金パーティーによる収入は、百三十六億五千八百万円で、過去最高額だった九九年の百三十三億九千二百万円を二億六千六百万円上回りました。前年と比べ五億一千四百万円(3・9%)の増加で、政治資金の収入全体に占める割合も8・7%となり、前年の8・4%を上回っています。
不況のもとでも一夜にして多額の資金を集めるパーティーが、政治家の有力な資金調達手段となっていることを浮き彫りにしました。
パーティー収入の上位五十団体では、自民党議員や派閥領袖(りょうしゅう)の開催分が収入額の76%を占めました。うち鈴木宗男被告が所属していた橋本派は九団体。以下、江藤・亀井派(八団体)、森派、山崎派(各七団体)と続いています。政治家個人に対する企業・団体献金が禁止されたもとで、パーティーによる資金集めは形を変えた企業・団体献金としてますます大規模に行われています。
政党としてパーティーを開いたのは、保守党と民主党でした。
パーティー収入のトップは、近藤剛参院議員。二〇〇一年七月に行われた参院選を反映し、近藤氏のほか、桜井新参院議員、落選した藤野公孝氏と自民党参院比例候補が収入上位二十団体に入っています。とくに近藤氏は、財界が支援した候補で、「経済人の集い」などと題したパーティーを十回開催しています。業界締め付けを強めるという非拘束式比例選挙の弊害があらわれた形です。
派閥のパーティー収入でトップの橋本派は、「平成研究会セミナー」で二億五千万円以上を集めました。日本薬剤師連盟、製薬産業政治連盟が百五十万円、日本歯科医師連盟が百万円など、大口のパーティー券購入もめだっています。しかし、かかった費用はわずか三千六百万円余り。差額はまるまる派閥資金となっています。事実上の総裁派閥である森派は、前年と比べパーティー収入を二千五百万円ほど増加させました。
二〇〇一年に政党・政治資金団体に二千万円を超える献金をした企業・団体の数は、前年と同数の二十三。献金総額は前年比約2・3%増の九億三千百六十七万円となりました。
不況のなか、大手企業や常連の業界団体の大口献金が企業・団体献金を支える形となっています。
大口献金を業種別にみると、「自動車」が三年連続トップの二億三千七百二十二万円。次いで、「電機・通信」の一億七千五百二十四万円、「鉄鋼・金属」の一億三千万円の順。献金総額の増加は、大半がこの上位三業種です。
このうち個別企業では、トヨタ自動車(六千四百四十万円)、新日本製鐵(四千万円)、日立製作所(三千九百六十四万円)、東芝(三千二百八十万円)、本田技研工業(三千百万円)など例年通りの顔触れ。業界団体では、日本鉄鋼連盟(九千万円)、日本自動車工業会(八千六百九十万円)、日本電機工業会(七千万円)など計十団体すべてが前年からの継続組です。二千万円を超える企業・団体で今回新たに登場したのは五洋建設、デンソーでした。
献金先では、自民党九億千三十三万円、民主党一千百七十万円、保守党八百六十三万円、自由党百万円となっています。
二〇〇〇年から政治家個人への企業・団体献金が禁止されましたが、政党そのものへの献金は野放しのままでした。このため、政治家が代表を務める政党支部で企業・団体献金を受け取り、そこから政治家個人の資金管理団体や政治団体に献金するケースが多く見られます。(表)
自民・亀井静香元運輸相の資金管理団体「亀井静香後援会」には自民党広島県第六選挙区支部から一億円、綿貫民輔衆院議長の「民峰会」には富山県第三選挙区支部から六千三百八十七万円、自民・青木幹雄参院幹事長の「青木幹雄後援会」には島根県参院選挙区第一支部から五千百二十万円が献金されていました。
自民・中川昭一衆院議員の「昭友会」は北海道第十一選挙区支部から八千八十六万円を受けただけでなく、「中川昭一札幌後援会」二千万円、「中川会」千八百三十五万円、「中川昭一十勝連合後援会」三百五十万円など複数の政治団体から一億円以上集めていました。
自民・景山俊太郎参院議員の場合、代表を務める島根県参院選挙区第二支部から、資金管理団体の「尚志会」と政治団体の「景山俊太郎後援会」にそれぞれ三千三百十五万円、千三百七十八万円を献金していました。
自民・岩永峯一衆院議員の「峯誠会」が受けた政治団体の献金は、滋賀県第三選挙区支部三千二百五十万円、派閥から六百五十万円のほかは十二の個人後援会からの三百六十九万円でした。
| 支部名(代表者) | 団体名 | 献金額 |
|---|---|---|
| (1)広島県第6選挙区支部(亀井静香) | 亀井静香後援会 | 10000 |
| (2)北海道第11選挙区支部(中川昭一) | 昭友会 | 8086 |
| (3)富山県第3選挙区支部(綿貫民輔) | 民峰会 | 6387 |
| (4)島根県参院選挙区第1支部(青木幹雄) | 青木幹雄後援会 | 5120 |
| (5)群馬県参院比例区第3支部(笹川博義) | 笹川未来政治 | |
| 経済研究会 | 5000 | |
| (6)島根県参院選挙区第2支部(景山俊太郎) | 尚志会 | 3315 |
| 景山俊太郎後援会 | 1378 | |
| (7)群馬県参院選挙区第3支部(山本一太) | 一伸会 | 3850 |
| (8)山形県参院選挙区第3支部(岸宏一) | 高志会 | 3700 |
| (9)広島県衆院比例区第1支部(谷川和穂) | 新政経懇話会 | 3350 |
| (10)滋賀県第3選挙区支部(岩永峯一) | 峯誠会 | 3250 |
| (11)福岡県第2選挙区支部(山崎拓) | 拓政会 | 3245 |
| (12)愛媛県参院選挙区第2支部(関谷勝嗣) | 近未来研究会 | |
| (山崎派) | 3000 | |
| (13)長野県第5選挙区支部(宮下創平) | 宮下創平後援会 | 1000 |
| 創風会 | 1981 | |
| (14)栃木県第3選挙区支部(渡辺喜美) | 温故知新の会 | 1600 |
| 渡辺美智雄 | ||
| 政治経済研究所 | 1300 | |
| (15)神奈川県参院選挙区第1支部(小林温) | 温政会 | 2900 |