2002年9月7日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党の後援会員にニュースを配ったことが公職選挙法で禁止する戸別訪問にあたると逮捕・起訴された広島県府中市の祝(ほうり)一行さん(62)。組合員宅を訪問して職場の問題を話し合ったことが戸別訪問とされた山口市の中村満吉さん(68)――。一九八六年の衆参同時選挙で、不当な弾圧とたたかって十六年、広島・祝事件と山口・中村事件の最高裁判決が九日、十日相次いで出されます。
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議会制民主主義の基礎となるべき選挙なのに、日本では公選法で自由な運動が制限され、警察は日本共産党の選挙・政治活動を弾圧してきました。六〇年代からの選挙弾圧事件は約百五十件。国民救援会を中心とした粘り強いたたかいで、地裁や高裁では「公選法の戸別訪問や文書配布の禁止は憲法に違反する」と、十件もの判決が出ています。
いまも裁判が続いているのは二件だけ。たたかいのなかで、九一年を最後に選挙弾圧事件の起訴は許していません。
祝事件では、後援会員宅にニュースを配る祝さんを十数人の警察官が尾行。同日夜と翌日には、後援会員宅を警察官が訪ね、十二人から配布文書を持ち去りました。裁判では、後援会申込書を示して後援会員であると主張しても、「会費を納めておらず、格別後援会員として活動した形跡がうかがわれない」(広島高裁判決)として認めず、戸別訪問と断定しました。
中村事件では、当時、山口中央郵便局に勤め、全逓労組支部の書記長、副支部長などをしてきた中村さんが、組合員宅を訪問するのは日常的な組合活動でした。警察は中村さんが訪問した家に聞き込みにはいり、子どもから調書を取ったり、嫌がる主婦を無理やり調べるなどの「執拗(しつよう)」な捜査を行いました。地裁・高裁判決では「黙示の投票依頼」と、選挙のことを話さなくても戸別訪問とされました。
祝さんと中村さんは、「公職選挙法は、表現の自由を保障した憲法二一条に違反するとともに、自由な選挙を保障した国際人権B規約に違反するので無効」と国連にも訴えに行きました。
国連では、九八年に日本政府に対する審査で、オーストラリアの委員が公選法を取り上げ「戸別訪問、パンフレット配布などを禁止することが規約と両立するものとして正当化することが可能なのか」と指摘。「祝さんという郵便局員の事件はいまも裁判が続いています。特定の人々を苦しめるために利用されている」と発言しました。規約人権委員会は「『公共の福祉』という、あいまいな制限規定で人権を制限することは許されない」と日本政府に勧告しています。
ところが、広島高裁は九九年四月、祝事件で、戸別訪問の禁止や文書配布の制限・禁止は、「公共の福祉」のための「合理的で必要やむを得ない限度を超えているとはいえず」違憲ではない――とし、国際人権B規約も無制限に選挙運動の自由についての政治的権利を保障したものではないとしました。罰金二万五千円(公民権停止なし)の不当な判決を言い渡しました。
中村事件でも広島高裁は九九年十一月、罰金一万五千円(公民権停止なし)の有罪判決を出しています。
祝さんも中村さんも勤めながら裁判をたたかってきました。中村さんはこの間、両親が亡くなり、病気の奥さんをみながら全国に訴えて歩きました。
祝さんは、最高裁に上告してから三年間、毎月最高裁への要請行動を続けています。支援の運動は全国に広がり、二〇〇〇年十一月に全国の会が結成され、三十八都道府県に「会」(準備会含む)が広がりました。高裁判決を撤回し、口頭弁論を開いて慎重な審理を求める署名は十万人を超えました。
祝、中村事件弁護団の服部融憲弁護士の話 公選法が、日本政府が七九年に批准した国際人権規約に違反するかどうかを問う最高裁での最初の事件です。戸別訪問や文書頒布を禁止しているのは、発達した資本主義国では日本だけです。広島高裁では、規約の国内的効力を認め、規約が法律に優先するとしながら、「選挙活動の自由は認めていない」と、規約を曲げて解釈しました。最高裁が規約に対してどういう判決を出すか、国内外で注目されています。