日本共産党

2002年9月1日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

防災の日

学校 耐震化を急いで

子どもが毎日通う 地域の人の避難場所

 1日は防災の日、阪神・淡路大震災から7年余たちました。全国の学校施設は地域の防災拠点としての大切な役割があります。ところが、全国の校舎で「耐震性が有るのは46%」、半分以下です。教師、父母や自治体から「災害は待ってくれない、一刻も早く改修を」との声が強まっています。北海道、広島での実態と取り組みを紹介します。


診断率たった6.6%の北海道

 北海道の公立小中学校では、耐震診断の必要な一九八一年以前建設の五千百八十五棟のうち、耐震診断済みが三百四十一棟(実施率6・6%)で、全国平均30・8%からみて著しく低くなっています(文部科学省調査)。

 耐震診断済みのうち、「耐震性あり」とされたものは25・8%。これをもとにした「推定耐震化率」は57・9%(全国57・3%)となっていますが、あくまでも「推計」です。

 教職員からも耐震化を求める声が広がっています。南西沖地震で大きな被害を受けた奥尻島がある道南・桧山(ひやま)地方の桧山教職員組合は、この間管内で実施された自治体首長選挙のとき、すべての候補者に公開質問状を送付。全校を対象に耐震性・安全性について調査し、結果を明らかにした上で、必要な措置をとるよう求めています。

 日本共産党道議団(大橋晃団長)は道議会でこの問題を取り上げ、耐震化を促進するよう強く道に求めてきました。

 六月道議会文教委員会で大橋議員は「積雪寒冷、へき地校が多いなど北海道の状況を考えれば、全国のなかでも耐震化は急務」「国にも十分な財源措置を要求し、促進を強く市町村に働きかけるべきだ」と要望しました。

 道教委総務政策局長は「児童・生徒の安全や地域住民の避難場所という役割から、学校施設の耐震性能の向上は大変重要。市町村教委や市町村長に対し、耐震化や防災機能促進を働きかけ、国に事業費確保を要望する」とのべ、「国庫補助も活用し、より積極的な整備促進を市町村に働きかける」と答えました。

 党道議団は同苫小牧市議団とともに八月二十二日、苫小牧市内の耐震診断されていない小中学校二校を視察し、市や学校関係者と耐震診断の促進について懇談しました。

 訪れた築四十一年の啓北中学校は、地盤沈下の影響で校舎壁面の所々にひびが入っているという深刻な状況。市教委の担当部長は「市内の小中学校はかなり古くなってきている。耐震診断は極力やっていきたい」とのべました。

 「国に対して財源措置の拡充をともに要求していきましょう」との大橋道議の言葉にうなずいていました。

 国と道は一刻も早く耐震化対策をとることが求められています。 (北海道・橋田智寛記者)


芸予地震被災広島の実情は

 広島県の公立の小中学校・高校には四千二百五十三棟の校舎・体育館があり、耐震診断が必要な二千七百一棟のうち実際に診断が実施されたのは五百八十五棟(21・7%)です。また、改修が必要な四百八十二棟のうち三百四十四棟(71・4%)が未改修です。

 日本共産党の辻つねお県議は三月議会一般質問で「耐震診断は高校で7・3%、中学校で35%、小学校で44%、体育館は31%ときわめて遅れている。そのうち改修が必要なのは、高校で85%、小中は95%。子どもたちの通う学校の安全対策が放置され、おざなりだが、ただちに対策をとるべきだ」と県に迫りました。

 教育長は「二〇〇一(平成十三)年度からの第二次五カ年計画の事業が計画的に進むよう市町村を指導する」と答弁しました。

 震度5強の揺れに襲われ死者一人、住宅の全半壊三百余棟の被害を出した昨年三月二十四日の芸予地震。呉市内の小中学校では、五十五校のうち三十三校が被災。体育館の壁が崩落して生徒ら八人がけがをした清水ケ丘高校には、日本共産党の中林よし子衆院議員、林紀子参院議員ら国会調査団が入りました。

 港町小学校ではコンクリート壁の建て替えで七カ月余りも体育館が使用できませんでした。呉市教育委員会の担当職員は「耐震性能調査はすべて完了したので、精力的に改修したい」と話します。

 広島市では、一九九五年から五カ年計画で始まった耐震調査が「財政事情」を理由に中止され、小中学校・高校の校舎で調査が必要な三百二十九棟のうち二百一棟(61・1%)が未実施です。さらに、市の「災害に強いまちづくり」プランで優先度ランクが低く設定され、調査は二〇〇四年度以降となっています。

 広島市教職員組合(全教)では「改修も調査もしないで放置することは許されない」として、教職員・子どもの視点から校舎を点検する活動にとりくみ、改築計画の進展と早急な耐震調査の実施を要求しています。

 辻県議は「阪神大震災で問われた『災害に強い県土づくり』が生かされていない。県民の安全、健康、福祉を後回しにする県政を変え、県民とともに耐震校舎の実現をめざしたい」と話します。 (広島県・突田守生記者)


改修・補強へ国が抜本的措置を

藤木洋子衆院議員の話

 子どもたちの日常の生活の場であり、地域の避難所としての役割も果たす学校の耐震性を確保することは緊急を要する事業です。

 これまで政府は整備の必要な学校数すら把握しようとせず、党の追及で実施させた初の全国調査で明らかになった実態は、耐震基準が強化された一九八一年以前に建築された学校の七割が耐震診断さえ未実施であるなど、きわめて深刻なものです。

 それは事業主体である自治体が、一校あたりの耐震診断に数百万円、耐震改修に数億円かかる費用負担に躊躇(ちゅうちょ)している問題があります。

 このたび、文部科学省は「公立学校施設の耐震化について」各都道府県教育委員会に通知を出し、耐震診断を三年間で完了する計画策定と、耐震性に問題がある施設について速やかな補強・改修等の措置を求めました。また、財政措置についても、数十万円で可能な簡易診断の費用を来年度の交付税で措置するように総務省と協議を始めたことは、深刻な実態をふまえたものです。

 同時に、これまでの国の施策の延長線上では抜本的な改善は進みません。生命にかかわる緊急を要する事業として、国の責任で耐震改修・補強についての国庫補助率の引き上げなど実態に見合った抜本的な措置を講ずるべきです。今後さらに地域の運動と結んで、全力をあげたいと思います。

 


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