日本共産党

2002年8月23日(金)「しんぶん赤旗」

食品の重金属検出に威力

農民連が装置設置へ

行政動かす食品分析センター


 輸入冷凍野菜の農薬残留違反を告発して食品安全行政に大きな影響を与えている農民連(農民運動全国連合会)付属の食品分析センター(石黒昌孝所長)が、新たにカドミウムやヒ素などの重金属分析ができる機器を設置します。

検疫史上初の冷凍野菜検査

 「おもな民放テレビ局はみんな取材にきました。冷凍ホウレンソウの農薬残留を分析するところを映していました」。東京都板橋区にある農民連食品分析センター。所員の八田純人さんは、分析作業の手を休めながら、マスコミの対応に忙しかった日々を振り返ります。

 同食品分析センターが実施した冷凍野菜の農薬残留分析は、世論の注目を集めました。大手スーパーで販売されていた中国産冷凍ホウレンソウからは基準値の九倍もの神経毒性農薬が検出されました。ファミリーレストランやコンビニのホウレンソウ料理からも高濃度の残留があり、外食産業を経営する企業は「発売をやめ調査する」と約束。テレビや新聞、女性週刊誌がとりあげたこともあり、「毎日、子どもに冷凍ホウレンソウを食べさせているんです。どうしたらよいのですか」という母親の電話が農民連に続きました。

 厚生労働省は“生鮮野菜でないから分析しない”という態度を変え、日本の検疫史上初めて冷凍野菜の残留検査をすることに。行政が検査したなかには、基準値の百八十倍もの高濃度の発がん性農薬が検出されました。

 こうした経過をふまえ、残留農薬などで違反が続いた場合に特定の国・地域、製造業者からの輸入を禁止することができるよう食品衛生法が改正されました。

市民団体の力で設置へ

 同分析センターは、一九九六年五月の設立いらい、食品の残留農薬を中心に検査してきました。農民連の会員がみずからの作物の安全性を確保する検査、新日本婦人の会などの女性団体、消費者団体からの委託検査の要望にこたえてきました。

 このなかから学校給食用パンのポストハーベスト農薬、ベビーフードから違反農薬が見つかりメーカーに是正措置をとらせたこともあります。

 二〇〇〇年に塩素系が分析できるガスクロマトグラフ機器を導入し、全部で百十六の農薬を一度に残留分析できるようになっています。食品添加物、ビタミン類や硝酸態窒素などの食品成分分析、新米と古米を見分ける米の鮮度簡易判定も好評です。アレルギー不安がある遺伝子組み換え食品の分析機器も九九年十月に設置しています。

 これらを設置する資金は、農民連の会員だけでなく、新婦人、母親大会連絡会、全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)に参加する労組、食品安全に活動する消費者が募金にとりくんできました。

検査充実に募金呼びかけ

 今回の分析充実計画が実現すると、カドミウムやヒ素などの残留分析が可能。輸入の米や食品、水などに重金属残留を心配する消費者から要請が強かったといいます。

 重金属分析には、「原子吸光分析装置」といわれる機器が必要。さらに分析効率を良くする自動サンプラー器具や分析器械の増設、分析要員も含め、農民連は二千万円を目標とした募金を呼びかけます。

 分析センター開設から活動する藤田一衞さんは、「国や大企業に依存する食品分析所とは違い、私たちの分析センターは農民や消費者、労働者でつくったものです。どこにも気がねなく科学的に分析でき公表もできます。今度の重金属計画も応援してほしい」と期待します。

 


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