日本共産党

2002年8月21日(水)「しんぶん赤旗」

これで解決 ヤミ金撃退3点セット+1

+1は「たたかう勇気」

違法だから払いません告発の証拠があります告発と業者逮捕報じる
通知書取引明細「赤旗」記事

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威力を発揮した「通知書」、明細書、「赤旗」記事の“3点セット”

 十日で五割、十割と法律違反の異常な高金利と、職場や親族にまで及ぶ暴力的な取り立てのヤミ金融。「怖くて家に帰れない」「会社をクビになった」などの被害が急増しています。そのなかで、「ヤミ金の存在自体が犯罪。再発防止のためにも、ヤミ金には絶対に利益を上げさせてはならない」と、立ち上がる被害者や民主商工会、弁護士、司法書士がいます。このたたかいで重要なことは何なのか。岩手県などの例から紹介します。(青野 圭記者)

岩手では

 「もしもし、おたくからお金を借りた山下と申します。いま民商で勉強していて、あなた方のやり方が貸金業規制法に違反することを知りました。あなた方の返済請求は不法原因給付(注)なので、今後一切支払いには応じません」

逃げたい

 受話器を持つ手が震え、脂汗がふきだします。相手は、山下和則さん(53)=岩手県宮古市=にとって、それほど怖かったヤミ金業者です。「逃げたい」。でも、目の前にいる木村明さん=宮古民主商工会事務局長=は、いくらうらめしそうに見ても、電話を代わってくれません。

 「お前ずいぶん態度がでかくなったな」。受話器からは、すご味を利かせたヤミ金業者の声が響きます。勇気を奮い起こして受話器を握り続けた結果、山下さんは、ヤミ金十八社のうち、十六社から元金を超えて払った額を取り戻しました。

 ヤミ金業者の反応は三通り。要求を記した文書をファクスしただけで返済に応じたのが二社。法律上の根拠も示し、告訴も辞さないき然とした態度に、急に対応を変えたのが十四社。「不法原因給付っていいたいんだろ。うちも経営が苦しくて、返すとなると、オレら下っ端が自腹を切らされるんだ。まけてけろ」

 どの業者も同じような態度の豹変(ひょうへん)に、「ヤミ金側にも対応マニュアルがあるのかもしれない」と木村さん。「今さら何をいってるんだ。お前じゃ話にならん」と電話を切ったのは二社だけでした。

督促やむ

 「あれだけガンガンいってた業者が。とても信じられない」と驚きと安どの山下さん。解決のポイントは、ヤミ金に立ち向かう勇気。それと、山下さん自身、「効果抜群だった」と舌を巻く“三点セット”でした。

 それは、(1)宮古民商・ウミネコ道場の会員になり、ヤミ金の貸付行為が違法・無効なことなどを学んでいると知らせる「通知書」(2)借入金と実際の入金額などを記した取引明細書(3)ヤミ金業者一斉告発と業者逮捕を報じた「しんぶん赤旗」記事。この“三点セット”をファクスすると、それまで激しかった督促電話がピタリとやみました。

 なぜ効果があるのか。木村事務局長は解説します。

 「『通知書』は、ヤミ金業者に“私はもう無知ではない。法律を武器に立ち上がった”という宣言で、民商や被害者の会といっしょだと知らせます。『取引明細』は告発する証拠があるということ。そして『赤旗』記事。これはあるとないとで効果が全然違うのです。本当に告発するんだという断固とした姿勢を示し、それを『赤旗』が報じるということがヤミ金にとって大変な脅威になるんです」

 ヤミ金にき然と対処できるようになるまでが大変でした。

人間回復

 山下さんがヤミ金二十三社の取り立てに追われ、宮古民商に駆け込んだのが昨年十月。木村事務局長の尽力でいったんは解決したものの、半年後再びヤミ金に手を出し、周囲をあきれさせました。

 「被害者が自分で立ち向かわなければ、真の解決はない」。議論の末、宮古民商・ウミネコ道場は、被害者本人にヤミ金との交渉に当たらせることにしました。「ヤミ金対策は人間回復のたたかい。だからこそ、被害者自身がヤミ金への怒りをもって立ち上がることが大事だし、それを助けるのが被害者の会です」と木村さんはいいます。

 こうしたたたかいは全国で広がっています。

 七月末、青森県八戸市の八戸民商・はまなす道場を訪ねた女性(27)は、一カ月半で七十七社ものヤミ金につけこまれていました。相談中も三分おきに女性の携帯に督促電話が。

 相手が女性だと、脅して無理やり借りさせるのがヤミ金の手口です。はまなす道場の番澤(ばんざわ)徹道場長(44)は、その場で、女性に「ヤミ金は犯罪。返済には応じない」などと書いたメモを渡してヤミ金に電話させました。相手の声が聞こえないように受話器を手で押さえて、まず本人の意思をはっきり伝えたのです。

 「か細い声の人なので心配しましたが、大きな声でメモを読み上げるのを聞いて安心しました」と語る番澤さん。

 「人間性や暮らしをメチャメチャにされたことへの怒りを本人がぶつけることができるかどうかが、今後、人として生きていけるかの境目」と話します。


 =不法原因給付とは、不法な原因による給付は返還請求できないとする民法七〇八条の規定。このほか、出資法の制限を超える高金利による貸し付けは公序良俗違反で無効(民法九〇条)、ヤミ金の不当利得は返還請求できる(民法七〇三条)などがあり、被害者がヤミ金業者に立ち向かう法的根拠となっています。


ヤミ金融110番集計結果(7月12日)
貸付利率年利換算(%)件数
1月で1割1201
10日で1割3654
1月で5割6001
10日で2割7304
10日で2.5割912.51
10日で3割10951
10日で3.5割1277.51
10日で4割14605
7日で3割15632
10日で5割182512
7日で4割20841
10日で6割21901
7日で5割26053
7日で6割31262
10日で10割36503
7日で11割52101
7日で10割57312
1日で20割730001
10日で3〜5割1095〜18251

1日で利息20割!

 全国ヤミ金融対策会議が七月、東京で実施した「ヤミ金融110番」に寄せられた相談で明らかになったヤミ金の超高金利ぶりの事例。本来、利息制限法の上限利率(十万円未満は20%、十万円以上百万円未満は十八%、百万円以上は15%)を超える利息は無効。出資法では年利29・2%を超えると三年以下の懲役または三百万円以下の罰金になります。


 


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