日本共産党

2002年8月18日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

郷土を世界遺産に

乱開発から守る 町並み保存 景観条例


 ふるさとの貴重な文化・自然遺産を世界遺産に登録して保存、あわせて世界遺産にふさわしい町づくりをしようと各地で登録運動が盛んです。二〇〇〇年十一月、文化財保護審議会から世界遺産暫定リストに追加された「紀伊山地の霊場と参詣道」と「平泉の文化遺産」のとりくみを紹介します。

紀伊山地の霊場と参詣道

 紀伊半島の中央部に位置する紀伊山地は標高千メートル級の山脈が縦横に走る山岳地帯。古くからの自然崇拝に加え、六世紀の仏教伝来から山岳修行の舞台となりました。同山地・北部には、平安時代の僧侶空海が開いた真言密教の霊場「高野山」、日本固有の山岳宗教である修験道の霊場「吉野・大峯」、南東部に神道の霊場「熊野三山」があり、世界的にも珍しい三種の霊場と参詣の沿道には歴史的な町並みが形成されました。

 「紀伊山地の霊場と参詣道」で主要をなすのは和歌山県ですが、奈良県、三重県の一部も対象地域に入っています。三県は、世界遺産登録推進三県協議会(会長・木村良樹和歌山県知事)をつくり、二〇〇四年六月の本登録をめざします。

引き継ぐのが私たちの責任

 千二百年の歴史を持つ高野山。井上哲士参院議員(当時候補者)と懇談した高野町の西田正弘町長は、世界遺産と町づくりについて「道と景観の問題になるが、すでに建っている建物もあるので、百年ほどの計画になる。後世に引き継ぐのが私たちの責任だ」と語りました。

 ことし二月、熊野古道の終着駅の一つ熊野本宮大社(和歌山県本宮町)の近く、備崎(そなえさき)丘陵で、平安時代末期(十二世紀)から鎌倉時代末期(十四世紀)の経塚(きょうつか、教典を後生に伝えるため埋めたもの)遺構が発掘されました。

 本宮町で歴史的な町並みの再現に取り組んでいる「音無の里づくり委員会」の嶝(さこ)公夫会長(65)は、「世界遺産も踏まえて、とりくんでいきたい」といいます。

 日本共産党和歌山県委員会は、世界遺産登録で、昨年二月から三月にかけ関係町村などとの懇談をすすめ、▽紀伊山地の自然と、同地域でのすべての時代にまたがる文化遺産を視野に入れる▽周辺の自然と一体のものとして保存措置をとる▽観光振興との両立―などを提案、より充実した保存と登録の実現をよびかけています。

2つのルート
遺跡や建造物

 奈良県内で世界遺産登録の対象となるのは、修験道の大峯奥駈道(おくがけどう)と熊野古道の小辺路(こへち)の二つのルートとそのルート上にある遺跡や建造物です。

 大峯奥駈道は、吉野川の柳の渡しを起点に、国宝・蔵王堂の金峯山寺(きんぷせんじ)、大峯山の山上ケ岳を経て和歌山県本宮町の熊野本宮大社に至るルート。小辺路は、和歌山県の高野山から熊野本宮大社に至るルート。

 吉野町では、登録されればバッファゾーン(緩衝地帯)になる史跡・吉野山の保全区域外の地域を保全するため、六月に歴史的景観保全条例を制定しました。

 同町の観光協会も今秋、奥駈道を広く知ってもらおうとウオークイベントを計画。商工会、森林組合、吉野山区、吉野山保勝会とともに「吉野山を世界遺産に」の看板を設置するなど、自治体をバックアップしています。

 この問題で日本共産党奈良県委員会は昨年二月に「吉野の文化、自然・景観の世界遺産登録事業推進めざし、広範な人々の共同を」との見解を発表。乱開発の危機から文化財や自然、景観を積極的に保全・継承していくうえで重要な意義をもつと強調し、金峯山寺の管長や吉野町長らと懇談するなど、積極的に登録の推進にあたっています。(和歌山県・川崎正純記者)(奈良県・山口昌亮記者)

平泉の文化遺産

遺跡発掘などとりくみ進む

 「五月雨の降り残してや光堂」と松尾芭蕉が詠んだ国宝・中尊寺金色堂(こんじきどう)や毛越寺(もうつうじ)庭園などで知られる平泉町は、岩手県の内陸南部に位置します。世界遺産暫定リスト登録を受け、同町は平泉町世界遺産推進協議会(会長・千葉和男町長)をつくり、本登録へ向けて、遺跡発掘など取り組みをすすめています。

 平安時代末期に藤原氏がこの地で四代にわたる百年間に独自に発展させた仏教寺院・浄土庭園などの華麗な文化。

 国宝・中尊寺金色堂は、初代・清衡によって、一一二四年に建てられたもので、中尊寺創建当初の唯一の遺構です。建物全体が金ぱくや螺鈿(らでん)により装飾されています。その他、毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡などの貴重な文化遺跡が数多く残っています。

 世界遺産登録に向けて平泉町は、「文化財護(まも)って光る平泉 世界の遺産めざす町」の案内板を駅前に設置しました。同町は、伝統ある遺産を生かした町づくりをと、新しくつくられる建物や看板などは和風のデザインにするようにし、景観条例の制定も検討しています。計画が進んでいた平泉バイパス事業も、発掘調査で遺跡の上を通ることがわかり、ルート変更になりました。

 世界遺産本登録へ町をあげてのとりくみがすすんでいますが、「生活が規制されるので複雑な気持ち」という声も出されています。日本共産党の小松代智町議は、「世界遺産の登録は、多くの町民が賛成しているが、史跡指定にされると転居しなければならない人もいて、登録へむけてのまちづくりは、町民の立場にたったものにするため、町民とよく話し合ってすすめなければならない」と話しています。(東北総局・佐藤利夫記者)


 世界遺産 世界遺産条約にもとづき、文化遺産、自然遺産を人類全体のため損傷、破壊から保護・保存する国際的な協力・援助する体制を確立することを目的としています。日本で登録されているのは、法隆寺(奈良)、姫路城(兵庫)、原爆ドーム(広島)など十一の文化・自然遺産があります。

 


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